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次の日、ベルの音で起きた。
起きるとカーテン越しに差し込んでくるいつもの太陽の光はなかった。部屋は暗く朝なのか夜なのかもわからない。
またベルの音がした。
(今が夜ならパートをサボったことになるがそれはさておき)重い頭を支えながらインターホンを覗き込みに行った。
寝起きで焦点が合っていない目を擦らせると、ダンボールを乗せた荷台と私服の人が何人かいるのが映っていた。
(…宅配便)
普段ならビビリな私は絶対居留守を行使するが、寝ぼけている私は怪しすぎる集団とこの状況をあっさり受け入れ、急いで玄関に向かいドアを開けた。
「はいー、ありがとうございます。あ、判子を置いてきました。取ってきます。」
そうして部屋に戻ろうとすると荷台を引いている人の隣の男が「あ、ちょっと…!」と右手を伸ばしてきた
「はい?」
「相沢加奈子様ですね。」
「あ、はい。」
するとその男がショルダーバッグを探り両手で名刺を私に差し出してきた。
「こういう者です。」
受け取って名刺を見てみた。まだ視界がボヤけていて、小さい文字は読みにくかったが何とか【長谷川 直人】は認識できた。
見覚えのない名前に困惑し、【長谷川 直人】の上の文字を読み取ろうと目を細めた。
(A…A…大学)
「あ。」
夫の出身大学だった。
続けてBB科CC学部と記載されていた。