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「お誕生日おめでとう!!!」


 私は3人の友人に囲まれながら29回目の誕生日を迎えた。


 火を消し終えたろうそくを抜くと、ワンホールのケーキは穴だらけだった。


「あーあ、やっぱり汚いわ…。」

「こういうのは大事なの!!!」


 馬鹿正直に歳と同じ数のろうそくを差すなんて10歳の時で既にしてなかった気がする。

 それなのに29歳だから29本差すなんて可笑しい。みんなが笑っている。

 合わせて笑ったが、私には29個の穴がとても皮肉に思えていた。


 自分はなんて性格が悪いんだろう。せっかくお祝いしてくれているのに。

「かなこ〜あんまり無理しないでね?」

「…うん、ありがと。」

 

 無理しないでと言われてすぐに無理している自分。

(上手く笑えてないよね。)

 でもきっと笑わないほうが辛い。



 私は2年前に夫を亡くしていた。それからずっと引きずって落ち込んでいる。

 皆んな忙しくて時々しか会えないけれど、それぞれの誕生日には必ず集まる。

  こんな私に付き合ってくれる3人にとても感謝している。


  大学の友達は一生の友達と言うが本当にその通りだと思う。 3人にはいつか恩返ししたい。


「もう後1年したら三十路だよ、アラサーだよ?!」

「私なんて先月妹に結婚先越されました。」

「仕事出来ればいいかな。」

「仕事と結婚ってやつですか。」

 30が目の前に差し迫っている。どうしても結婚のワードが飛び交う。

 最初は戸惑い話に入りづらい。けれどその後私が酒の勢いに任せ愚痴を言い始め主役となり、3人がなだめ役に回る。


 最愛の人を失っている人に結婚というワードをこんなに出すの失礼かもしれない。

 けれど私にとっては構わず言ってくれたほうが楽に感じる。もうガンガン言ってくれ。

 私達4人の決まりがある。だからこれで良い。


 そんなこんなでこれでもかというくらいお酒を飲んで酔いながら誰もいない狭く寂しい家に帰った。


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