疎外感を感じたけど割りと充実してました。
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よろしくお願いします。
王から、開戦日時を聞いた日からの日々は、怒涛のように過ぎて行った。
土地の開拓に続き、こちらの領地に来てくれると言った、ルーツ達の為に、王都からも応援を呼び、開拓した土地に次々に家を立て行く。
それと同時に、将来的な事を考えて、幾つもの家を先に作っておき、いつ人が増えても大丈夫なようにと、準備をしておいた。
商売関係の事もあるので、そちらも、領内にある商人ギルドと、住宅街と商店街の位置関係等や、これから将来的に行う産業と流通の説明等を行った。
領地の開拓と同時に、領内に一つの街だけにするのか、それとも、別の街を作るかも、今の所の議題の一つだ。
ちなみに、こちらの領地に移るのを機に、グランドとユリーカが、同棲を始める事になった。
戦争等の面倒事が終わったら、式を上げるとのことで、その時は、うちの屋敷を使って、盛大に行ってあげよう。
コピー機は無事に魔道具として、作成出来たのだが、問題の白い紙が少ない為、製紙工場も、作ろうとしているのだが、中々に大変で、必要な物が多すぎるので、結局は、記憶を元に、鑑定スキルを使って、構造等を把握し、そのまま複製、そして魔道具として使えるようにするために、エンチャントという形で完成させるに至った。
鑑定スキルは、この世界に無い物でも、機能する為、非常に助かった。
そうして、製紙工場を完成させ、とりあえず、紙の問題と、この時期の雇用に関しての問題は減った為、
少しは気が楽になった。
領民には、暇な時期以外にもちゃんと職を与えて、どんどん稼いで、お金を使ってほしい。
この紙自体も、世界的に、売り出す予定なので、そうなると、伐採だけではなく、植林自体もしていかなくてはいけないのだが、森には魔物が出るので、どうやっていくかも、現在の議題の一つだ。
そんな多忙で、未だに禄に休みを取れず、ソニー達にも申し訳無いなと、思っている中、王宮からすぐに来るようにと報が来たので、「このくっそ忙しい時になんだよあいつ!」っと、キレつつ行ったのだが、
内容は、呼ばれて当然のことだった。
「来週に獣人族との戦争の開戦日だが、貴様はアイーフ荒原には行った事があるのか?」
「………、無い」
(やっべー、超忘れてた!そういえばそんなのあったわ……)
俺の反応から、色々と察した王が、俺に呆れている。
「脳天気なやつだ。デモンストレーションと演習目的とはいえ、戦争には違いないのだが、それを忘れているとはな」
これに関しては、ぐぅの音も出ないほど、言っている事が正しいので、俺は黙っている事しかでない。
「これから、戦争に参加する者達が、飛空艇にて、アイーフ荒原に移動する。お前もそれに乗れ」
まだまだやることが、一杯なのに、戦争とか超面倒くさいが、まぁ仕方ないと、俺は諦めて行く事を決心する。
「お前はどうするんだ?」
前の話しでは、他の大陸の代表達も注目しているらしいが、こいつはどうするんだろう?
「わざわざ行くまでも無い」
切って捨てる様に言われたので、俺はそこで話を終わらすことにした。
「はいはい。とりあえず、うちの連中にだけ、連絡してから向かうから」
一週間も俺がいなくなれば、作業効率が、だだ下がりだからな……。
「アリス達はどうするつもりだ?」
「居残りかなぁ~、やる事も多いし、フラウラだけは連れて行かないと行けないけど」
俺が頑張ったお陰で、だいぶ時間を短縮出来たが、結局は、まだまだやる事が多く、学校も既に開校しているので、街の子供達に勉強を教えたり、その間に、うちの子達を、家畜の世話等の手伝いにいかせたり、家を建てたり、紙を作ったり、その為に木を伐採したり、魔物を退治したり、何より、お金の計算が一番面倒だ。
色々と短期間で初めたせいで、色々な計算が必要となり、毎日が数字とにらめっこする日々で、ミラはほとんど毎日、頭から煙を出しているような状況だ。
そのせいで、夜の方も出来ない日が多かったりする。
「その方が良いだろう。今回の件が終われば、次は式を上げねばいかんからな」
「あぁ……、本当に、なんてタイミングで仕掛けてきたんだろうな……」
「全部貴様のせいだろうに」
「いや、アルフレッドとお前のせいだろう」
俺がウィザードになったのは、アルフレッドのせいだし、婚約や結婚なんて言い出したのは王だし。
俺は何も悪くないだろう。
「………、いや、アルフレッドを唆した魔族が悪い」
逃げやがったなこいつ……。
「はいはい、それじゃ一回戻るからな」
「せいぜい、緊張して、派手なミスをしないことだな」
「うるせー」
王との話が終わると、俺はゲートで、書斎に戻る。
「ただいまー」
「「「おかえりなさいませ、ご主人様」」」
「おかえり~」
「おかえりなさいませ、アキヤマ様」
「………おかえり」
それぞれの挨拶を受けた後、皆に開戦場に今から向かう事を伝えると、当然のように、アリスが行くと言い始める。
「ということで、今日から1週間程出かけてくるから」
「それではすぐに支度致しますね」
「私も行くー!」
「そういえば、もうそんな時期でしたね」
幾らなんでも、戦争に行くというのに、この軽さはなんだ……、俺も人の事言えないけど。
「駄目。王、自らお前ら二人は連れて行くなって言われた」
「そ、そんな……」
「えー!なんでー!」
アリスは、お留守番と言われて、ショックのあまり、膝から崩れ落ちる。
「なんでって、一応戦争だし、結婚式前にお前達に何かあったら大変だろ?」
俺の言葉に、二人はピクリと動く。
あ、この反応、たぶん忘れてたな。
「そそそそ、そうだね!結婚前に怪我でもしたら大変だもんね!」
「そうですね。どうせ、戦争など、ご主人様の圧勝なのですから、私達はご主人様がいない間に、少しでもご主人様が帰った際に、ゆっくりできるように、頑張りましょう」
「でも、それだと、誰がアキヤマ様のお世話をするんですか?」
このソニーの何気ない一言は、即座に、屋敷中に伝わり、第一回目となる、屋敷中のメイド達を巻き込んでの『ご主人様 独り占めお世話係争奪戦』が、初めて開催されることになるとは、俺もソニーも、想像できなかっただろう。
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「それでは参りましょう!ご主人様!」
「……あぁ、行こうか、ディーナ」
最初は、俺一人で構わないと言ったのだが、もうメイド達には、俺の声は届いておらず、ミラが面白がって取り仕切り、誰が俺のお世話係となるかを決める、大会が繰り広げられたらしい。
らしいというのは、飛空艇の出発時刻が分からないので、先に聞きに言き、まだ出発まで時間があると分かったので、その間に、今回の軍の指揮を取る人達と軽い自己紹介を済ませ、そろそろ出発の時刻となったので、屋敷に戻ったら、まさに死屍累々といった感じで倒れてるメイドや、膝を手をついてる者達が大勢いた。
つーか、なんで子供達まで混ざってんだよ。
「これ、どうやって決めたの?」
俺が審査委員席に座っている、アリスに聞いてみると。
「お茶の入れ方から、一通りの家事に加え、ベッドメイキング等の、メイドとしての仕事等をそれぞれ10点満点で評価しました」
「あ、そう……。というか、エメラは審査員なんだな?」
アリスの横に座るエメラに、声をかけると、非常に疲れた顔をしながら答える。
「は、はい……、私が出たら絶対に優勝するや、領内の仕事に支障をきたすということで、審査員になりました……」
「そ、そうか……」
エメラの疲労具合から見ると、相当凄い争いだったのだろうな……。
「ご主人様!私が優勝しました!なので、これから誠心誠意込めて、ご奉仕させて頂きます!」
「あ、あぁ、よろしく頼む……」
既に、支度を終え、そして、優勝者のディーナが、興奮気味に声をかけてきた。
それにしても、最近来たばかりのディーナが優勝するとは……他のメイドは質が悪い訳でないはずなんだが……。
「ご主人様のお役に立てるように、家に帰ってから一生懸命、メイドとしての嗜みを学んでいましたので!」
さいですか……。
ちなみに、他にも優勝候補である、古残のメイド達は、屋敷の運営や、道具屋に学校等で離れるわけがいかないので、必然的に、新しいメイド達となっていたた為、ディーナが優勝できたということだ。
別にディーナのメイドとしてのレベルが低い訳ではないが、一応古残メイド達の為に言っておく。
「ん?」
「………」
急に右手を握られたと思ったら、フラウラだった。
「準備はいいのか?」
「………」
俺が尋ねると、コクンと頷くので、そろそろ出発する事にしよう。
「それじゃあ、俺が居ない間の事は頼むな、アリス、エメラ、ソニー」
「おまかせ下さい」
「分かりました」
「早く帰ってきてくださいね」
三人の返事を聞き、ゲートを開く。
「じゃ、行ってきます」
「「「行ってらっしゃいませ、ご主人様」」」
倒れていたメイド達も全員立ち上がり、頭を下げ、見送られるなら、俺達3人には王都へ向かった。
俺達が乗る飛空艇は、一番大型の物であり、今回の軍の指揮者もこの飛空艇に乗っている。
飛空艇は全部で10隻。
搭乗員は全員合わせて、5万人を超える。
「それでは、こちらがアキヤマ公爵の部屋となっております!」
「あぁ、案内ありがとう」
「それでは失礼します!」
俺に割り当てられた部屋に案内しくてれた兵は、終始緊張しており、なんだか悪いことをしてる気分になってしまう。
部屋に入ろうと扉に手をかけようとすると、その前に、ディーナが扉を開けてくれる。
礼を言おうと思ったが、メイドとして当然だし、一々礼を言っていたら切りが無いので、偶にでいいだろう。
「それにしても、無駄に広いな」
「そうですか?ご主人様には少々狭い部屋だと思いますが?」
部屋の大きさは、昔、王都へ行くのに乗った飛空艇の部屋と同じ広さなのだが、あの部屋はVIP用の部屋であり、今回のは、戦争行きの為の飛空艇なので、部屋はもう少し狭いと思っていたのだが、ディーナからしたら、不満があるらしい。寝室と風呂にキッチンまで付いていて、何が不満なのだろう?
「………」
「ん?はいはい」
いつまでも扉の入り口にいる俺に、フラウラがこちらを見ながら手を引くので、そのまま部屋の中へと入っていき、とりあえず、部屋を一通り見て回ってから、ソファーにフラウラと並んで座る。
ディーナは紅茶を入れ、俺達の前に置いた後、ベッドメイキングに向かった。
俺から見たら、完璧に見えていたのだが、ディーナ的には、駄目だったらしい。
なんかもう、俺とメイド達の基準が違い過ぎる。
とりあえず、明日には、戦争の打ち合わせがあるが、本日は何も無いので、とりあえずゆっくりしておこう。ちなみに、フェルも連れてこようと思ったが、さすがに獣人との戦争で獣人であるフェルを連れて行くのはどうかと思い、結局は止めることにした。
個人的に、アリスとミラを両隣に抱えるのも好きだが、フェルとフラウラを両隣に抱えているのが、もっとも癒やされる。
「あれ?そういえば、ベッド一つしか無かったよな?ていうか、ディーナ用の部屋も無かったってことは……、まじか……」
どうしよう、ただでさえ、最近忙しくてあまりできてないのに、さらにフラウラが横にいる中、一週間も生殺しとか、やばい。
というか、ディーナはどうするつもりなんだろう?
「ディーナ」
「はい、何か御用ですか?ご主人様」
言うがすぐに、ディーナが現れる。
うちのメイドって、特に足音を立てること無く迅速に現れるから、ちょいちょいびっくりするんだよな。
「ベッドが一つしか無いんだけど、ディーナ用の部屋を用意してもらうか?」
「……え?」
俺の言葉に、ディーナが驚愕し、目と口を見開いている。
「……、一緒に寝るか?」
「はい!是非とも!」
今度は満面の笑顔で答えるディーナに、これなら無理をしてでも、エメラか俺とフラウラだけで来るべきだったと思ってしまった……。
いや、別にディーナに不満があるわけじゃないよ?
前のツンツンが無くなって、普通に見た目が割とタイプな上に、俺に尽くしてくれる子になったんだから、最高なんだけど、この調子だと、一体何人妻か側室が増えるか分かったもんじゃないな……。
というか、これって不倫になるじゃないのか?
「アリス様達からは、ご主人様がお求めになられたなら良いと、おっしゃっていました!」
「あ、そう……」
そんなこんなで、もう我慢が難しい状態まで来ていたので、3人で夜遅くまで、ベッドの上で楽しむ事になった。
まぁ、ディーナは、初めてだったので、2回目で疲れて寝てしまった。
フラウラは、結構こういうことが好きみたいなので、自ら何度もねだってくるので、魔法が必須だ。
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昨夜はお楽しみでした。
「やっちまったなぁ……」
ベッドの横で幸せそうに寝ているディーナを見て、俺は頭を抱える。
人間の三大欲求の中の性欲の恐ろしさを存分に味わってしまった気分だ……。
ディーナ自体は、側室じゃなくても構わないと、言っていたが、流石にそれは俺自身が納得しないので、
妻か側室にはしないといけないよな……。
「はぁ……」
「どうか、した?」
俺の左側に寝ていたフラウラが、いつの間にか目を覚ましており、裸体を起こす。
処女雪を連想させ、触れることすら躊躇ってしまいそうな彼女は、不思議そうに首を傾げる。
「いや、欲求って怖いなって思って……、いや、自分の自尊心の弱さが怖い……」
「……っん」
自分の自尊心の弱さに嘆いていると、突如、フラウラが頬にキスをする。
「なっ!」
突然の事で、俺は驚き、顔を赤くしてます。
「大丈夫……私が、側にいる……」
「………ありがとう」
「んっ」
少し得意気に言う、フラウラを、呆然と見つめたまま、感謝の言葉を述べると、満足したのか、フラウラが、二度目の夢の中へと向かう。
「……、護る相手に、しかも、年下の女の子に慰められた……」
これはこれで、自尊心に少々のダメージがあったが、それよりも暖かな物が、胸の中を満たしていく。
「……さて、飯食って、仕事すっか」
俺は、軽く伸びをすると、着替えを済ませてから、フラウラとディーナを起こし、今朝のディーナは、朝食を作るのが難しそうだったので、代わりに俺が作り、朝食が終わると、俺は作戦会議室に向かう。
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「それでは第一回、アイーフ作戦会議を初めます。今回の作戦は、皆さんのご存知の通り、そちらの、ウィザードである、アキヤマ公爵の実力を、大陸中に知らしめるのが目的となります。その後、我々、アメリア王国騎士団とロマリア帝国獣王団との演習となります。演習とは言え、今回は、各種族の目もあるので、負けれる事があれば、アメリア王国は、ロマリア帝国より弱いと思われるでしょう。ですので、我々は、アメリア王国の名誉の為に、決して負ける訳にはいきません。なので、演習を見事勝利する為に、皆さんの知恵を存分に振り絞って頂きたいと思います」
30代後半程のアメリア王国騎士団副団長が、円卓の席で立ち上がり、今回の作戦会議の趣旨を説明する。
円卓には、俺と大貴族の騎士団の団長達10名に加え、先程のアメリア王国騎士団副団長と団長が席に着いている。
アメリア王国騎士団団長は、40歳程だが、服の上からでも分かる、分厚い胸板に、女性のクビレ程ある太い腕に、貫禄のある髭を生やしている。特に、左目を横断する古傷は、彼の騎士としての貫禄を十分過ぎるほど引き立てているようだ。
他の騎士団団長達も、胸に幾つもの勲章を付けていて、如何にも武勲を重ねています。偉いです。と、主張しているようだ。
あ、竜紋勲章つてくるの忘れてたわ。
俺は真面目に話し合いをしている、団長達を見ながら、口を挟む空きが一切無く、疎外感を感じている。
やはり、「こんな若造が、ウィザードなんて認めるか!」的なやつなのだろうか?
「やはり、前回同様に、前面に軽歩兵を出し、左右に騎兵、後面には重歩兵、更に後ろに、弓兵と魔法兵となるでしょうな。特に今回は川も山も無い、平地での戦になる。選べる陣形も限られるでしょう」
副団長の言葉に、俺は疑問を感じたので、控えめに手を上げ、アピールしてみる。
「あの~……」
俺が手と声を出した瞬間、円卓に座る者達の視線が一斉に集まるので、ちょっとビビってしまった。
「なんでしょうか、アキヤマ様?」
「陣形と数って既に決まっているんじゃ無かったんですか?」
そう、王と話した時は、陣形と相手の数に加え、その内訳までもが書かれた資料が、あったはずだ。
俺の問に、皆、軽く顔をしかめ、その意味を副団長が答えてくれた。
「アキヤマ様、その資料の陣形は、アキヤマ様がロマリア帝国と戦う際の陣形でして、我々、アメリア王国騎士団との陣形は乗っていないのです」
「あ、そうだったんですか。それはすみません……」
くそ、恥をかいてしまった。
こんな話し聞いてないぞ、王め!
その後、俺の事はスルーで、どんどん話が進んでいく。
つーか、これ、俺いる意味無くね?
そんなこんなで、魔法の無い世界ならともかく、魔法のある世界の戦争の仕方等、俺には分からないため、(あそこ、ああしたほうがいいんじゃないのかな~?)とか思っても、言い出せずに、結局はそのまま一言も発せずに、開始から3時間後に、本日の作戦会議は終了した。
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「あれって、俺いる意味ないよな?」
「そんな事ありません!ご主人様に意見を求めないあの方々がおかしいのです!」
部屋に戻る早々、つい、ディーナに聞いてしまったが、アリスみたいな事を言い出されたので、これは何言っても意味駄目だと感じ、話はそこで打ち切り、昼食を取った後、特に騎士団の方からのお呼び出しも無いので、久しぶりに開いた時間で、魔法の研究を始める事にした。
「ディーナ、お盆と水を入れたコップを持ってきてくれ」
「分かりました」
ディーナが持ってきた、お盆とお盆に乗った水の入ったコップを受け取り、そのままテーブルに置く。
そして、そのままコップに入った水をお盆に零していく。
ディーナは、慌てて台拭きを取りに行こうとしたが、必要無いと引き止める。
「さて、やるか」
座標と物質を指定し、魔法を使う。
すると、お盆に溢れた水は、逆再生のように、傾いたコップに吸い込まれ、そのままコップは、垂直に立つ。
ディーナは、今の現象に目を見開いて驚いているが、それに構わず、もう一度水をお盆に零す。
次に、指定を水だけにし、魔法を起動させると、水だけがコップから溢れた時の動きをし、傾いていないコップの中に、水は一滴も入る事が無い。
そして、魔法を止めると、水はそのままお盆に落ち、バシャリと跳ねる。
今度は、ディーナが布巾を取りに行き、水の跳ねたテーブルを拭いていく。
「ありがとう」
「いえ、メイドとして当然のことですので」
ふむ、今のは時魔法なのだが、時間を戻す物体と、その範囲を指定して行ったのだが、コップの中に水を戻そうとしたら、やはり、コップまでも指定しないといけない。
次は、物質をコップ、範囲をコップの全体にし、魔法を起動すると、どこからか現れた水が、コップを満たしていく。
これは、先程の水が入ったコップの状態に戻った訳なのだが、この水はどこからきたのだろうか?先程入っていた水は、お盆の上と布巾に染み込まれてしまっている。
これから考えるに、やはり、魔力が補填していると考えるべきだろう。
だとすると、これは時魔法と言うより、復元魔法といえるのかもしれない。
前々から疑問だったのだ、アルフレッドと戦った時だって、流れ出た血が、俺の体に一滴でも戻る事は無かった。では、俺の流れ出た血は、どこからでたのか?と。
やはり、この魔法は謎が多い、時魔法で範囲と物質を指定し、時間を進めると、お湯を沸かすなら、即座にお湯を沸かす事ができる。リンゴで試した事もあるが、当然のように、熟し、腐った。
だが、魔物等で試した事もあるのだが、老化を進んで老衰する等という事も無かった。
怪我を治す事が出来ても、怪我や病気を進行させる事は出来ない。
この基準は一体何なのだろうか?
とりあえず次の魔法を試してみる。
指定は物質はコップとお盆、範囲は無し。
魔法を起動し、コップを掴んで持ち上げると、コップが引っ付いたかのように、お盆も持ち上がる。
そのまま、コップを全力で握るが、1トンもの物を持ち上げる事ができる俺の力であっても、コップは決して割れることはない。
コップとお盆をテーブルに置き、今度は範囲指定し、そして、その範囲内にコップを放り投げると、範囲内に入ると同時に魔法を起動すると、コップとコップから溢れる水は、空中で静止する。
「ふむ、やっぱり馬鹿みたいに魔力を喰うな……」
範囲を50平方cmでしたのだが、俺の保有魔力の10分の1を持っていかれた、しかも、止めてる間だけでも、どんどんと魔力が減っていく。
とりあえず、魔法を解除すると、当然のように、コップと床に落ち、コップは砕け、水は絨毯に染み込んでいく。
慌てて、処理をしようと動く、ディーナを手で静止、物体指定をして、魔法を起動し、先程の一連の流れを逆再生するようにお盆の上に戻るのを見て、俺は満足する。
「うん、超面倒くさい魔法だって事が分かった!」
魔法の天才のエメラですら覚えれなかった、時魔法。
何故俺が使えて、どういう原理で起動しているのかもさっぱり分からない、そもそも、理解していないのに発動できるのは何故だろう?
魔法だから、と言えばそれで終わりなのだろうが、なまじ、科学的な知識があるせいで、ついつい追求しようとしてしまう。
ちなみに、鑑定スキルを使っても、時魔法、時を操る。としか出てこないので、森羅万象とかいう誇大広告について、今度フィリアにクレームでもつけようかな。
そうして、俺は久しぶりに、他の魔法の研究も進め、魔道具の作成に、その間や夜に、フラウラとディーナとイチャイチャしたりと、充実した日々を過ごしていく。
そうして、予定通り、一週間後に、開戦予定地のアイーフ荒原に到着した。




