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3/10編集しました。
「すぅ…すぅ…、っぐぇ!いてぇ……」
浅い眠りの中、頬に受ける衝撃にゆっくりと意識が覚醒していく。
「……、っは!寝過ごした!?」
いつもなら頭の中に鳴るアラームで目を覚ますはずが、アラームは鳴っておらず、
目覚ましより先に起きたという事より、寝過ごしてしまったのではという不安が先行した。
「あれ?ミリス?……あぁ、そうか……」
身体を起こし目覚まし時計を見ると、いつもある場所にそれはなく、周りを見渡したあとに
自分の隣を見ると、先ほど俺の頬に当たったと思われる小さな足があった。
そこで昨日風呂から上がった後に、作業の続きをしようと書斎に戻ると何故かミリス達がおり、
あっという間に捕まった俺は、あらよあらよとわけもわからないまま寝室に連れて行かれ、
気づいたらミリス達と一緒に寝る事になっていた。
「寝相わりぃーな……」
枕と逆方向に向いてしまっているミリスを戻してやり、布団をかけてやる。
ベッドには他にリコがウェルチェを抱くように寝ている。
「アムとフェルは朝食の準備か」
机に置かれた時計を見ると丁度7時になったところだ。
「だいぶふっくらしてきたな」
初めてミリス達を引き取った時は、皆ガリガリだったのだが、
ここ一ヶ月程で平均的な子供くらいの太さになってきたので少し安心だ。
(夜鳴きもしなくなった。家の手伝いもするし、勉強も頑張ってる。そろそろ何かご褒美でもやろうかな)
ミリスのサラサラとした髪を撫で、くすぐったそうにする顔を見て、自然と頬が緩む。
「おはよう、アリス」
「おはようございます、ご主人様」
ミリス達を起こさないように部屋から出てリビングに向かうと、テーブルで作業をしていたアリスがおり、俺に気づくと立ち上がって、頭を下げる。
「昨日は勝手なことをして申し訳ありません」
昨日のあれはやっぱりアリスの仕業だったのか。
「いや、俺の事を思ってのことだろ?別に構わないよ。むしろ迷惑をかけたな」
「いえ、そのようなお言葉を頂いては、恐縮いたします」
アリスは深々と頭を下げる。
「それにしても見事に俺の弱点を突いてきたな」
「あぁでもしなければお休みになられないと思いましたので」
まぁ確かにあぁでもされなければぶっ倒れるまで働き続けた可能性は高いな。
そういった意味ではアリスの行動はファインプレーと言えるか。
(そうだな……、前とは違って、今は心配して止めてくれる人がいるんだな……)
俺はアリスの頭に手を伸ばすと、何度も優しく撫でる。
「ご、ご主人様?」
行き成りの事で顔を赤くしながら慌てるアリス。
もう出会って一ヶ月以上立つのに未だに顔を赤くするのがとても可愛い。
「アリス」
「……ご主人様」
アリスを抱き寄せ、目を見つめながらゆっくりと顔を近づける。
「ふぁー、良く寝たー。あ、アリスちゃん、ツキヒト君、おは、ょ……」
丁度いいタイミングで、欠伸をしながらミラがリビングに入ってきた。
「……ごめん!」
抱き合っている俺達を見て、ミラはすぐさま踵を返し、部屋へと戻っていく。
『……』
呆然とミラが戻っていくのを見送り、しばらくしてまたお互い見つめ合い、顔を近づけると。
「ごしゅじんさまがいないー!」
「どこかいっちゃったの!?」
「アリス様に怒られるー!」
2階からミリス達の声が聞こえ、階段を下りる足音が聞こえてくる。
「あ!ごしゅじんさまいたー!」
「アリス様もだ!」
『おはようございます!ご主人様!アリス様!』
リビングに来るなり、俺とアリスを確認したミリス達は大きな声で挨拶をする。
「おはよう、ミリス、リコ、ウェルチェ」
「おはようございます、ミリス、リコ、ウェルチェ。昨晩はよくやってくれました」
向かい合うように席に座った俺達が3人に挨拶をする。
「わたしはごしゅじんさまと一緒に寝れてうれしかったー」
「わたしもー」
「いつも一緒に寝れるフェルちゃんが羨ましい!」
嬉しい事を言ってくれるな。
だけど、いつもフェルが透け透けのネグリジェを着て一緒に寝ている、なんて知ったらどうなるだろう。
……、自分も着るとかいいだしそうだから黙っていよう。
「それじゃあ、今日も一緒に寝るか?」
「寝るー!」
「いいんですか!?」
「寝ます!」
3人と一緒に寝る約束をすると、ミラを呼びに行ってもらう。
「よろしいのですか?」
「あぁ、最近あまり構ってやれなかったしな」
「そうですか。それでご主人様、本日はゆっくりされたらいかがですか?
エメラ達とは今日は学校を休みにして、皆で作業を進める事にしましたので、
そちらの方は心配なさらないで大丈夫です」
「……ゆっくりか、そうだな。久しぶりにゆっくりするか」
疲れのせいで明らかに効率も下がっているしな。
「それがよろしいと思います。作業の事は私達に任せて下さい」
「あぁ、頼む」
会話が止まると、廊下から『ねぇ、本当に大丈夫なの?もう抱き合ってない?』と、ミラの声が聞こえてくる。
「お、おはよう、アリスちゃん、ツキヒト君。その、さっきはごめんね?」
「おはよう、ミラ。別に気にしてないよ」
「おはようございます、ミラさん。私も気にしていません」
「そ、そう?それなら良かった……」
胸をほっと撫で下ろすミラ。
「それじゃあ朝食に行くか」
ミリスを肩車し、リコとウェルチェと手を繋ぎ、女子の家へと向かう。
「あ、おはようございます、ツキヒト様」
『おはようございます、ご主人様』
「おはよう、大将。ゆっくり寝れたか?」
リビングに行くと、既に皆が席に着いていた。
「おはよう皆、おかげさまでぐっすりだよ」
「そいつあ良かった!」
他の皆も挨拶を済ませると席に着く。
テーブルには、白米、味噌汁、焼魚、卵焼き、胡瓜の浅漬け、ほうれん草のお浸しと、見事な和食が用意されていた。
「ご主人様は和食を一番美味しそうに食べるので」
「あぁ、確かに和食は好きだからな。ありがとう」
「い、いえ!お口に合えばよろしいのですが」
「エメラ達が作ったなら美味しいに決まってるよ」
俺は味噌汁にまず手をつけると、鰹節の良い香りと味噌の風味が起き抜けの身体にさらに食欲を増させる。
「うん、美味しい。和食はあまり教えてないのに随分と上達したな」
「あ、ありがとうございます」
エメラは恥ずかしそうに、フェルとアムは嬉しそうにしている。
ちなみに全員箸を使っている。
俺が使っているのを見て、皆興味を持ったので、和食の時は箸を使うようになった。
大人組みはすぐに使えるようになったが、子供組みはまだ難しいようだ。
ミリスとソルにいたっては握り箸だ。
まぁ、おいおい教えていけばいいか。
「それで、今日は皆が作業をしてくれるって?」
「はい、私達の仕事の中から子供達にも出来る物は子供達にやってもらうつもりです。
エメラとアムには、昨日ご主人様が仰っておられた、魔道具屋にて必要な物を調べに行かせます」
「そうか、エメラ。内装を紙に描いて渡すから、それを参考に選ぶといい。後は使う皿とかも
見て来い」
「わかりました」
(俺はどうしようかな……)
朝食が終わり、エメラとアムは魔道具屋に向かい、他の者たちは作業しに行く。
俺は一人プールサイドに腰掛、脚で水をばしゃばしゃと跳ねる。
「プールにでも入るか?一人で?……ないな」
急に出来た休日に何をしていいか頭を悩ませる。
「何か手間のかかる料理でも作るか?いや、効率を重視するせいで魔法無しで料理なんて作ってられない」
料理は手際よくしないと食材が痛んできたり、味が落ちたりするので、基本的に料理の仕事をしている人は皆効率重視になってしまうところがある。
特に仕事の場合は、スピードが求められるので尚更だ。
「あー、久しぶりにクエストに行くか。いつもガラドにばかり行かせちゃ悪いし」
学校の費用に加え、店を開くのに溜めた3000万リアはあっという間に無くなってしまい、ガラドにクエストをこなしてお金を稼いで貰っていたのだ。
店は借家ではなく、立地条件の良い物を買ったので、2500万リアも掛かってしまった。
業務用の魔道具も100万単位が多いので、初期投資が大変な事になったのだが、別に営業利益自体は赤字でも構わない。
金が無いならクエストで稼いで補填すればいい。
店に関してはあくまで、奴隷達に働くということと、奴隷を解放された後に、出来る事が多い方があればいいと思ってのことだし。
だからできるだけ手広くはやるつもりだ。
ちなみに税金なのだが、毎年3月に年商の内から5%を商人ギルドを通して支払う事になっている。
「さて、んじゃ冒険者ギルドに行くか」
やる事も決まったので、俺は立ち上がり、魔法で足を乾かし、靴下と靴を履くと冒険者ギルドに向かう。
「さて、何かいいクエストあるかな」
冒険者ギルドに着くとクエストボードに向かい、よさそうなクエストを探すが、いつもよりクエストが少ない事に気づく。
「あれ、ツキヒトじゃねーか」
「え?」
後ろから名前を呼ばれ、振り向くとBランク昇級試験の担当官だったアレッドとルーツがいた。
「アレッドさん、ルーツさん。お久しぶりです」
「あぁ、久しぶり」
「久しぶりだな」
「お二人もクエストですか?」
「あぁ、南の森のかなり浅いところにマンティコアがでたらしくてな。それの討伐に行くんだよ」
「へぇー」
「ツキヒトもクエストに行くのか?」
「えぇ、それで何かいいクエストが無いのかと探していて」
クエストを探していると聞くと、ルーツが顎に手を当て、何か考える様にする。
「今はマンティコアのせいで近場のクエストは危険だからほとんどないと思うぜ」
「えぇ……、本当ですか?」
「ふむ、……よければ私達と一緒に来るか?」
「っえ?」
「っお!確かにそれはいいな。ツキヒトがいたらマンティコアも楽勝だな」
「うむ、それに、成長した俺の魔法もツキヒトに見てもらいたいしな」
「そうと決まれば他の奴らにも言ってくるぜ!」
「えっ!?」
勝手に俺も加わる事になり、仲間にその事を伝えに行くアレッドの背中を呆然と見ることしかできない。
少しして、アレッドがPTメンバーを連れて来る。
「こいつがお前らの言っていた期待の新人のツキヒトか?」
「見た目は普通だね」
「だけど、アレッドはともかくあのルーツが絶賛するんだから強さは間違いなさそうね」
「おい、ミー!俺はともかくってどういうことだよ!」
黒い鎧を付け、大きな剣と盾を携えた30代くらいの男と白い帽子に白い法衣に杖と、いかにもヒーラーという格好をした20代半ばの女性、背に弓と弓筒を携えた20前半くらいの女性がいた。
「お前がツキヒトか?」
「あ、はい」
「俺はAランクパーティー『グラヴェル』のリーダーをしているグランドだ。見ての通り剣士だ」
「私はヒーラーのユリーカよ」
「私はアーチャーのミールよ。気軽にミーって呼んでね」
「えっと、俺はツキヒトです。基本的に魔法を使いますが、最近は体術と剣術も練習中です」
「ほぉ、魔法のみならず体術と剣術も取得しようとは、さすがツキヒトだな」
初見の3人のステータスをざっと確認すると、ガラドには負けるがなかなかの強さであることが分かった。
ミーは弓術スキルと鷹の目を持っているので是非ともコピーしておきたい。
「それで、ツキヒトも俺達に付いて来るのか?」
「え、えぇ。はい」
「そうか、正直今回のクエストは事前情報によるとかなりの数のマンティコアがいるらしいからな、
一人でも多くの戦力がほしいところだったんだ」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ!南の森は海まで続いているんだけど、マンティコアはその丁度森の真ん中を縄張りにして、
繁殖期以外はそこから滅多に移動しないはずのなのに、繁殖期はまだまだ先なのになぜか大量のマンティコアが現れたんだよ!」
「そ、そうなんですか。おかしいですね」
ミーが興奮したように詰め寄ってくる。
近いですよ……。
「そうなんだ、今までこんな事なかったのだが、ゴブリンの集落の件といい、何か起こり始めたのかもしれないな」
……。
「もう、アレッドったら、また変なこと言って!ツキヒト君が黙っちゃったじゃない!」
「あ、いえ。大丈夫です」
「ツキヒト、クエストのメンバーにお前を加える手続きをしたいのだが、いいか?」
「あ、はい」
受付に行き、一時的に『グラヴェル』に加わると、南の森に向かいながら打ち合わせをすることになった。
「あの、マンティコアってどんな魔物なんですか?」
「なんだ、知らないのか?」
「マンティコアってのはねー、身体がラーガオンで羽が生えてて尻尾が蠍なんだよ」
「へぇー」
ラーガオンとは恐らくライオンの事だろう。
ミーの説明に自分の記憶しているマンティコア像が同じものだと理解する。
「マンティコアは、尻尾の毒が強烈で、喰らったらすぐに上級の解毒剤を飲むか、上級の解毒魔法を掛けないと死ぬ。
しかも、空を飛びやがるから非常に厄介なんだよ。
魔法で落とすのも難しいから、基本は攻撃しに降りてきたところを狙うしかないな。
狙う際も、まずは尻尾の関節を狙って尻尾も切り落してから、羽を攻撃して、後は攻撃を盾役が防ぎつつ前衛、魔法使いが攻撃だな」
「ふむふむ」
「上級の解毒魔法は私が使えるから安心してね」
「あ、俺も使えます」
うちの中では、俺、アリス、エメラ、ミラ、の順で強力な回復魔法が使えるのだが、
ガラドはどうも回復魔法はあまり得意ではないようだ。
知識ではちゃんと理解している事は確かめたので分かっているのだが、
色々と試した結果、どうやらこの世界の住人は持って生まれた才能によって、
できる事が決まっているようだ。
例えば攻撃魔法が得意ではないアリスの水魔法と、水魔法が得意なミラでは、同じステータスだとしても威力はミラが上になるのだ。
だから、どれだけ努力しても元々才能が無いものでは、スキルまで昇格する事ができない。
そういった意味で言えば、教えればなんでもできてしまうエメラは女神に力を貰った俺とは違い、間違いなく天才だ。
「ねぇねぇ、ルーツに無詠唱を教えたって本当?」
「え、えぇ」
「そういえば私はツキヒトにお礼を言わないといけないわね」
「え?」
「あなたがルーツに教えた無詠唱の練習方法のおかげで、私も無詠唱で魔法が使えるようになってきたのよ」
「そうなんですか、それは良かったです」
「えぇ、だからありがとうね」
「いえ、お力になれたなら何よりです」
そうか、ルーツはユリーカにも無詠唱の練習方法を教えたのか。
「そのことだがツキヒト、勝手な事をしてすまなかった」
「え、あ、頭を上げてください。別に隠している事でもありませんし、これで皆さんの生存率が上がるならそれにこした事はありません」
頭を下げて謝るルーツに慌てる俺。
「本当にツキヒトは謙虚ね。普通、無詠唱が使える魔法使いってもっと偉そうにしてるのに」
「本当だねー、顔は普通だけど、強くて謙虚だし、これで彼女さんがいなければアタックしてたのになー」
あれ?これは褒められてるのか?
「あはは!ツキヒトにはすげーかわいい彼女が二人もいるんだ、ミーなんか絶対に勝てねーって!」
「ちょっとアレッド!それどういうことよ!」
腹を抱えて笑うアレッドに怒ったミーが向かっていくが、アレッドは逃げ出し、しばらく二人で追いかけっこをする。
「全く、あいつらには緊張感はないのか」
「あ、あはは……」
呆れるグランドに、勝手に二人の彼女がいることにされた俺はとりあえず乾いた笑みを返すしかない。




