フィリア
見切り発車
初投稿
よろしくお願いします。
日曜日の夜、俺、秋山月人はバイトが終わり、帰路についていた。
その途中、いつもは素通りする寂れた社に目が止まり、なんとなく御参りでもしようと思った。
「っげ、500円玉しかないじゃん……」
10秒ほど考えた結果、偶にはいいかと500円玉を賽銭箱に放り入れる。
パンッパンッと二度手を叩いてから目を瞑り
『剣と魔法のある異世界に行きたいです。そしてハーレムを作って、美少女達といちゃいちゃのえろえろな人生を送りたいです。それと……』
最近特に忙しかったせいか、完全に現実逃避の願いをしてしまう。
お願いが終わり、目を開けると何故か目の前にあった社がなくなり、広い草原に立っていた。
「……はぁ?」
急な出来事に驚き、俺は慌てて周りを見渡す。
しかし、見渡す限り草原、アスファルトなんか一切見かけず街灯もない。
ポケットに入れていたスマートフォンを取り出し、現在位置を確かめようとするも、
「あれ!?電波がない!?ネットもつながらない!」
色々試すも、電話もネットも繋がらず、危機感を募らせる。
そこでふと思い当たりがあることに気づく。
「まさか……異世界召喚?さっきの願い事が本当に叶った?」
漫画やライトノベル等で散々読んだ異世界召喚が、本当に起こったのではないか思い、俺は急にテンションがあがりだす。
「まじかまじか!まじで異世界召喚か!いやまて、盛大なドッキリの可能性は……ないな。
ただの一般人の俺をこんな大掛かりなドッキリにかける理由がない。それにさっきまで社にいたのに
目を開けた瞬間草原ど真ん中なんてどう考えても無理だ」
確実な証拠がない為、完全に異世界召喚とは思ってはいないものの。現状、どう考えもそれ以外思い浮かばない。
というか、そうじゃないと嫌だ!という気持ちでいっぱいだ。
「ふ……ふふふ……。やったあああああああ!異世界だあああああああ!
ついに夢が叶ったぞおおおお!ドッキリだったら盛大に笑えばいい!答えが分かるまでは盛大に
この世界を楽しんでやるぞおおおおおおお!」
真夜中の草原のど真ん中。
俺は幸せと興奮の絶頂を迎えていた。
「異世界って厳しすぎだろ……」
あれから俺は、ひたすら真夜中の草原を歩いていた。
「星が綺麗だな……」
自分の現在位置が分からない上、どこを見渡しても草原のため、どこを目指したらいいのか分からず、なんとなく月に向かってひたすら歩く。
「疲れた……もう2時間は歩いるぞ……。というか、異世界なら魔物とか盗賊とかでるのかな。
やべー……今襲われたら確実に死ぬぞ俺。」
スマートフォンで時刻を確認し、さらに魔物や盗賊の可能性を思い出し、急に危機感を募らせる。
仕事帰りにコンビニで買ったジュースとチョコを食べながら、人がいるところがないかと必死に歩くが、あれから1時間ほど歩いても見つからず、体力の限界を迎え、諦めて野宿をすることにした。
「まだそんなに寒くないのが救いだな……。はぁ……異世界ハードすぎ……」
ショルダーバックを枕代わりにし、横になる。
すると長時間歩いたせいか、簡単に俺は夢の中に落ちていく。
暖かい空気を感じ、ふと目を開けると目の前にすっごい美少女がいた。
「……えっ?」
「気がつきました?」
美少女が俺に声をかける。
「……。」
俺は立ち上がり、無言で美少女をじっくりと頭の先から足の先まで観察する。
髪は膝に届きそうな長さのふわっとしたストレートに、黄金に輝く金髪、髪型は黒いリボンで結んだツーサイドアップ、瞳は碧。
そして幼さが残る顔立ち、見た感じ、年は14歳くらいだろうか?
肌は透き通るような白さに、背はおそらく145くらい。服は白いワンピースに白いサンダルを履いている。
全体的に線は細く感じるが、存在感が強すぎる胸。
俺の手じゃ間違いなく収まりきらないだろう。
童貞の俺には刺激が強すぎる。
「あの~、聞こえてますか~?」
美少女が俺の顔を覗き込む様に見つめる。
「はっ!だ……大丈夫!聞こえてる!」
「そうですか。えっと、私はこの世界、エオリアを作った神、フィリアです。この度、秋山月人さんの願いを叶え、この世界に召喚しました」
フィリアと名乗る少女が腰に手を当て、胸を張る。
「あっ、やっぱり女神だったんだ……」
異世界召喚物のにいくつかあるパターンの中の女神による召喚。
目の前の少女を見た瞬間、俺はその可能性を感じていた。
「あれ?驚かないんですか?」
フィリアは俺が自分を女神だということに気づいていた事に驚いている。
「いやー、目の前にすっごい美少女がいて、さらに回りは真っ白の空間。そうなると
女神の可能性しか思い浮かばなくて」
「びっ美少女なんてそんな!?」
顔を赤くしながら、慌てふためくフィリア。
彼女が動くたびに胸が動くので思わず目がいってしまう。
っていうか、ポッチがあるんだがもしかしてノーブラか!?
「あ、あの、そんなに見られると、恥ずかしいです……」
俺の視線に気づき、フィリアが両腕で胸を隠す。
「あー、ごめん……。でも、なんで俺が異世界に召喚されたんだ?っていうか、俺は自分の世界にある社で御参りしたはずなのに、なんで異世界の女神のフィリアが俺の願いを叶えるんだ?」
ふと、当然の疑問が浮かぶ。
俺の世界の社は、俺の世界の神が祀ってあるはずだ。
何の神が祀ってあるかは全然知らなかったが、いくらなんでも異世界の神を祀ってはいないだろう。
「えーっと、それはですね……」
フィリアが両手の人差し指をつんつんと合わせながら言いづらそうに横を向く。
「実はですね……。私は今、信仰不足でかなり危険な状態なんです……。それで、この世界では
中々信仰を得ることができないので、思い切って他の世界から信仰して貰おうと、月人さんの世界に
私の社を作ったんです……」
……、自分の作った世界から信仰されない女神って……。
ていうか、自分の世界から信仰されないから別の世界で信仰して貰おうとか普通思うか?
俺がバカな子を見るような目で見ていると
「ちょっとそんな目で見ないで下さい!私だってこんなことしたくなかったんです!
でも、これ以上はさすがに危険なので藁をも縋る気持ちでやったんです!」
半泣きになりながら弁明する女神。
なんつーか、女神の威厳ゼロだな……。
ただの超絶美少女なだけだ……全然ありだな。
「えーっと、俺が信仰したから願いを叶えて、この世界に召喚してくれたってこと?
でも俺、願い事はしたけど信仰はしたつもりまったくないんだけど……あと、
俺の世界で信仰ってされてたの?」
「はい。月人さんは私を信仰してないことは分かってます。月人さんをこの世界に召喚したのには
実は理由があるんです。あと、月人さんの世界では全然信仰されてませんでした……」
やっぱりか、信仰されてたらあんな寂れてるわけないもんな。
つか、だれもフィリアが祀っているなんて知らないんじゃないか?
「理由?」
「はい。月人さんは、剣と魔法異世界に行きたい。ハーレムを作っていちゃいちゃ……その、
ぇ…ぇろ……」
おや?女神様が顔を赤くして下を向いたぞ?
まぁ、えろえろの部分が恥ずかしくて言えないんだろう。
仕方ない、紳士の俺は、困っている美少女を
「え?女神様、聞こえないのでもっと大きな声でお願いします」
助けることより辱めることにした。
だって美少女の恥ずかしがってる姿って最高じゃん。
「い……いちゃいちゃのえろえろしたい!です!」
フィリアが顔を真っ赤にして怒鳴るように言う。
ふむ。最高だな。
「ごめん、もう一回言ってくれ」
「嫌ですよ!私女神なんですよ!この世界を作った創造主なんですよ!なんでこんな辱め
を受けないといけないんですか!ふぁぁぁぁん!」
やばい、ガチ泣きだ。
美少女の恥ずかしがっている姿をみて少々調子に乗りすぎてしまった。
「あー!悪かった!俺が全面的に悪かった!ごめんなさい!許してください!」
必死に頭を下げる俺。
フィリアが泣き止むまで、10分程かかった。
「うぅ……なんで私がこんな目に……」
まだぐずぐず言っているフィリア。
っていうか、神の癖になんでこの程度で恥ずかしがるんだ?
神なんてエロいことしまくりで、その上、人間に産めよ増やせよとか言うんじゃなかったんだろう?
「んー、フィリアって創造主なんだよな?なんでこんなにエロに耐性ないんだ?」
「そんなの恥ずかしいからに決まってるじゃないですか!えっちいのはいけないと思います!」
おう、神が子作り批判してるぞ。
そんなんじゃ人口増えないだろ。
「それだと人類絶滅してしまうと思うんだが」
「恋人や夫婦で自分のお部屋でならいいんです!でも、それ以外でえっちなのは駄目なんです!」
ふむ、えろえろのところで恥ずかしがっている時点でなんとなく気づいていたが、
十中八九処女だろうな。
ビクッと肩を震わせ、顔を赤くし俯くフィリア。
どうやら声に出てしまったらしい。
「まぁ、話を戻そう。フィリアは俺の願いを叶えてこの世界に召喚してくれた。
しかし、それには理由があった。」
俯いていたフィリアがこちらのほうを涙目の上目遣いで見つめる。
おいばかやめろ、その表情は童貞には危険すぎる。
心臓がバクバクと音を立てているが平静な振りをして続ける。
「話の内容から、理由とは俺にフィリアの信仰の復活に協力してくれってところか?」
フィリアがばっと顔をあげる。
「そ、そうです!すごいです!よくわかりましたね!」
結んだ髪をタレ耳のようにぱたぱたと動かし興奮しながら言ってくる。
「別にこの程度、誰でもわかるだろ。でも信仰復活ってどうするんだ?俺、この世界のこと全然わからないんだけど。
剣と魔法の世界ってなら、おそらく俺の世界だと中世時代くらいか?あと定番だとでかい教会があってそこで神を祀ってるんだろうけど、そこは創造主のフィリアじゃないのか?」
立て続けに思った疑問を口にしていく。
「はい、月人さんの言う通り、この世界は月人さんの世界でいう中世時代くらいですね。魔法や魔物がいるので、似ているという感じですが、そちらの漫画などで書かれている異世界物と同じです。
というかそれを参考にしました」
おい、この女神、今、俺の世界の漫画などを参考にしたとか言わなかったか?
「えっと、この世界は、俺の世界の漫画とかを参考に作ったと?」
「はい!」
はい!じゃねーよ、何参考にしてんだ。美少女じゃなければ一発くらい殴ってるぞ。
「まぁ、この世界の成り立ちはわかった。それで、なんで創造主のフィリアが信仰されてないんだ?」
「最初はちゃんと信仰されていました。下界にも時々降りて奇跡を起こし、信仰を集めていました。
ですが、2万年前に魔王が現れ、その時に私を信仰してくれていた人達が大勢亡くなり、そのせいで信仰不足になり、力が減少してきた私は、慌てて各種族の中から優秀な物、一人に力を授け、魔王討伐をお願いしました。そして、長い戦いの末、見事魔王討伐を果たしたのですが、
人口が元の数に戻るまでの間に、私の信仰が魔王を倒した勇者達に移ってしまい、そのまま私のことは忘れ去られ、今では全く信仰されなくなってしまったんです」
暗い顔をしながら俯くフィリア。
ふむ。世界を救った勇者なら後々神格化してもおかしくはないのかな?
というか、各種族ってことは色々種族がいるのか。
ていうかなんで魔王なんているだろう?
「なぁ、この世界ってフィリアが作ったんだろ?なんで魔王なんているんだ?あと、どんな種族がいるのか詳しく。」
「種族ですが、人・エルフ・ホビット・ドワーフ・竜人・獣人・魔族・魔物です。魔王は私が作ったわけではなく、魔人の中で突然変異で生まれた、強い力を持った物が魔族を束ねる魔王となったんです。あと、なぜ魔物と魔族を作ったかといいますと、
共通の敵がいれば、他の種族が手を結び、仲良くなると思いまして」
……。まぁ、なんとなく予想はしていたが、やはりか。
「つまり魔物と魔人は、各種族が争わないようにするためのスケープゴートだと」
「はい」
俺の言葉に頷くフィリア。
「魔物はまだいいとして、そんな役割を魔族にさせてフィリアはいいのか?」
「はい、最初から魔族はその為だけに作りましたし」
俺の質問に、不思議そうに答えるフィリア。
「……」
あぁそうか、こんな見た目でぽんこつ女神だけど、神である以上俺たちとは根本的に考え方が違うのか……。
フィリアが何を思ってこの世界を作ったのか知らないが、フィリアにとってこの世界は創作物でしかないのかも知れない。
……、俺はこの時、初めてフィリアを神だと認識したのかもしれない。
「んー、まぁ話は大体わかった。とりあえず確認なんだけど、俺は信仰復活を手伝うってことでいいのか?」
「はい」
「でも、魔物とか魔族がいるんだろ?はっきし言って俺、猫にも負ける自信あるんだけど、スキルとかなんか特殊技能的な物がもらえんの?
あと、魔王が復活するから、魔王と戦えとか言わないよね?」
「はい、といっても、今の私ではたいした力を授けることができないので、月人さんの今持っている才能と埋もれている才能を開花させて、スキルにします。
あと、旅の補助になるスキルも授けます。魔王に関してですが、
魔王と呼ばれるような強さを持った魔族は、現在いませんし、大丈夫です」
うーん。魔王はいないが魔族は今だにいるってことか。
まぁ、6種族もいるんだし、俺が特別何かしなくても大丈夫かな?
「ふむ、まぁそれより!俺の才能を開花させ、スキルを下さい!お願いします!」
俺は一気にテンション全開で頭を下げる。
「えっ、あ……はい」
いきなりのことでビクッと驚くフィリア。
でも仕方ないんじゃん。埋もれた才能の開花とか、スキルとか超期待しちゃうじゃん。
「えっと、それでは月人さんの今ある才能と埋もれている才能、そして、旅の補助になるスキルを授けますね」
フィリアが俺に右手を向けると、右手から俺の間に光が生じる。
「ふぅ、できました」
額から汗を垂らしながらフィリアが右手を下げる。
「んー?特に何も変わってないんだけど?」
軽く体を動かすが、別段身体のキレが良くなったようになったりなど変化を感じない。
「まずは自分の情報を知りたいと念じて下さい」
フィリアに言われ、目を瞑りながら自分の情報が知りたいと念じてみる。
すると、頭の中にゲームのステータス画面のようなものが浮かび上がる。
ステータス
【 名 前 】 秋山 月人 (アキヤマ・ツキヒト)
【 年 齢 】 20
【 職 業 】 使徒
【 レベル 】 1
【 体 力 】 130
【 魔 力 】 100
【 攻撃力 】 120
【 防御力 】 80
【 俊敏性 】 104
【 魔 攻 】 78
【 魔 防 】 48
【 スキル 】 近接格闘lv3 剣術lv1 料理lv5 詐欺lv1 未来視lv1 運lv1+ カリスマlv1 コピーlv1 鑑定lv10 アイテムボックス 言語理解
「おぉ……」
思わず感嘆の声がもれる。
「今、月人さんの頭には、月人さんの情報が見えていると思いますが、どの様に見えるかは人それぞれとなっています」
ふむ、ゲームとかを想像してたから俺には、こんな風に見えるのか。
「それでは体力等は分かると思いますので、スキルのほうを説明しますね。
スキルレベルは最大10です。lv5あれば、所謂プロなどと言われるレベルですね。
lv7も行けば達人、lv10だと神々の強さなどといわれています。まぁ、神は私しかいませんが。
あと、レベルが上がるにつれ、ステータス等に補正があるものもあります。
武術系だと攻撃力等で、あっ、月人さんは料理のレベルが5なんですね、料理人だったんですか?」
突っ込まれると思っていたがやはり突っ込まれたか。
ていうか、俺のステータスを知らないで召喚したのかよ……。
「ん、まぁ一応調理師免許持ってるけど、子供の頃から料理が好きで、慣れてるからバイトも飲食店で働いてたけど、正直プロと言われるレベルでは無いと思うけどなー」
周りの先輩とかは、俺よりずっと上手かったし。
「それは、月人さんの世界の料理のレベルがこちらより高かったんじゃないでしょうか?
こちらの世界基準のレベルになっているので、月人さんはこちらの世界では十分プロレベルってことですね。
いつか月人さんの作った料理食べさせてくださいね!」
図らずしてプロになってしまった。
「料理のようなスキルでは、料理の成功率や完成度・味といったの物に補正があります。
つまりlv1の人が作ったのとlv5が作ったものでは、全く同じ食材・工程を経ても出来上がりが違います」
なるほど、理不尽な気もするが今更突っ込むこともないか。
「料理は分かった、未来視やカリスマは予想つくけど、詐欺ってなんだ?」
未来視はレベルが上がるにつれて見える時間が伸びるとかそんなんだろう。
カリスマはそんままだな。
「嘘をついた際に、相手が騙される確率がアップします」
「なるほど、っていうかなんでこんなスキルついてんだよ」
ひどく遺憾だ。
「う~ん、詐欺師の才能でもあったんじゃないんでしょうか?」
「……」
「でも、何気に詐欺はレアスキルですよ。良かったですね!」
良かったですね!じゃねーよ。
「カリスマは人を惹きつけたりするスキルですね。lv10になれば、あらゆる種族が喜んで命を捧げる位になりますね」
「こえーよ!つーか、洗脳としか思えねーよ!」
自分の一言で、相手が喜んで命を捧げるとかうかつに物言えねーじゃねーか。
「あはは、カリスマと洗脳は全然違いますよー。カリスマは、その人の魅力に惹かれて従うものなんですから、操る洗脳なんかと一緒にしちゃ駄目ですよー」
何が楽しいのか、フィリアはケラケラと笑う。
「……はぁ、もういいや。んで、次は?」
うん、やっぱり人と神とじゃ考え方って違うんだな。
「次はコピーですね。これは、見たスキルをコピーのレベル分だけ習得するスキルです。
コピーするには、必要な動作をある程度みないといけません」
おう、チートスキルきたな。
「んじゃ、見てればどんなスキルでも覚えれるってことか?」
「いえ、種族の持つ固有スキル等はできません」
あぁ、そういうのあったな。
「んー、まぁ分かった。んじゃ次は?」
「えーっと、鑑定lv10は、あらゆる物を詳細に鑑定できます。アイテムボックスは、空間魔法で、生物以外なら何でも入れれますね。
言語理解は、こちらの世界の言語を理解できます。あ、読み書きもちゃんとできますよ」
「まぁ、そこらへんは予想はついてたけど、鑑定lv10ってどのくらいの人が持っているんだ?」
「lv10は、誰もいません。というか、今までにlv10まで至った人は誰一人いませんね。最高で確か勇者達がlv7でしたね」
どうやら俺は、勇者を超えてしまったみたいだ
「lv1で名前と年齢、lv2で職業、lv3でアイテムの性質、lv4でレベル、lv5でスキルといった感じですね。
今の世界での鑑定の最高レベルは3なので、下界の人達はレベルやスキルといった概念がありません」
「なんで3止まりなんだ?使ってたらそのうちレベルが上がるもんじゃないのか?」
「元々鑑定のスキルを持っている人が少ないんですよ。鑑定のスキルは、宝石などの質を見るものと違って、その物自体の情報を見るものですから、こればかりはどんなに頑張っても、元々スキルとして持っている人しか無理なんです。
それと、lv4以上の条件は、多くの戦闘をすることが条件なのですが、鑑定はレアスキルなので、持っている人は大体商人等になって、戦闘とは無縁になってしまうんですよ」
ふむ、確かに物の情報なんて見えれば、騙される事もなくなるだろうし、そうなれば商売などでは強い力を発揮するしな。
そうなれば戦闘なんてする必要もなく、そもそもレベルが上がる条件なんて知らないだろう。
「あと、コピー・鑑定・アイテムボックス・言語理解・カリスマは、私が授けた物です」
うん、知ってる。俺にカリスマなんてあるわけないしな……。
「えーと、どうも有難う御座います」
とりあえず感謝の言葉を言っておこう。
「いえいえ、月人さんには頑張って貰わないといけないので当然です!」
あぁ、そういえば信仰復活の為だったな、すでに忘れてかけてたわ。
「んじゃ一番気になるのは最後に回して、運についている+ってなんだ?
予想では、条件下で+の数だけレベルが上がる的なことだと思うんだが?」
「はい、正解です。月人さんは、えーっと、ギャンブルが条件みたいですね。
あ、でもギャンブルなら何でもいいって分けじゃないですよ。相手との賭けがちゃんと成立
してないと駄目ですね。例えば、自分の中だけで賭けをしても意味がないです」
ふむ。ギャンブルって言えばスロットとか、よく小額で当たったりしたけど
それが理由だったのかな?
元々うちの家族ってギャンブル運強いし、そいうい家系なのかな
「スロットが何か分かりませんが、月人さんの持つ運は、埋もれていたのではなく元々あった才能ですから、そうだと思います。」
「ふーん、まぁいいや。そ・れ・よ・り!未来視!これってもしかして超レアスキルなんじゃないの!?」
未来視、未来が見える能力でずっと憧れていた能力!だって未来が見えるとすげーし、なんかカッコイイし!
「はい、未来視はものすごく珍しいスキルですね。一億人に一人位の割合でしょうか」
「一億人!俺は一億人の中から選ばれたのか!」
やばい、一億人。この世界の人口は知らないが、俺の世界だと大体全人口70億位だったっけな。
70億の中でたったの70人!……あれ?思ったより多い気がする。
「なんか、思ったより凄く無い気がしてきた」
「そんなことないですよ!1億人に1人ですよ!?」
「いや、でも俺の世界だと70億くらい人いるから、70人はいる計算だぞ」
「えっ!月人さんの世界ってそんなに人がいるんですか!?……それなのに
なんで誰も私を信仰してくれないんですか……」
がっくしと、肩を落とすフィリア。
そりゃ、名前も偉業も知らない神なんてだれも信仰せんだろ。
つか、なんで俺の世界の人口知らないだよ。
「話を戻しますけど、未来視は埋もれているだけなら、100人に1人程度なんです。たまに既視感を見る人がそうですね。
それをスキルとして発現するのは1億人に1人なんです。それでもlv1なら0.5秒先を見るのが限界ですね。なので、自分が未来視を持っていると思っている人はほぼいないです」
「まぁ、0.5秒くらいじゃ未来が見えるとは思わないか。よく戦闘とかで0.5秒先が見えるから有利!とか漫画でやってるけど、それくらいなら、経験とかの予測とかでなんとかなりそうだしなー」
「lv1だとそうですが、レベルが上がれば、最終的にあらゆる可能性を見ることができたりするので凄いんですよ」
あらゆる可能性を見るか、いつも思うんだけどそんなの見たら普通に頭パンクしそうだな。
「えっと、そこは慣れといいますか……」
あっ、目を逸らしたぞこいつ。
「あ!忘れてた!!」
「きゃっ!!」
俺がいきなり大声を出したせいでフィリアが驚く。
「魔法だよ、魔法!魔法使えるんだよな!?」
そう、魔法。俺が望んだのは剣と魔法の異世界。
正直、剣なんかよりよっぽど重要だ。
「あ、はい。ちゃんと使えますよ」
「やったー!んで、どうやって使うんだ?詠唱とかいるのか?
まぁ、あったとしても何とかして無詠唱で使ってやるけどな!」
「魔法の使い方は身体に流れる魔力を使うか、大気に溢れる魔力を使うことで
発動できます。魔法は自分のイメージを魔力で具現化するので、基本は詠唱を必要としませんが、
イメージを形にしやすくする為に詠唱を使う人が大多数ですね」
よし、やはりテンプレだったな。
それじゃあ早速魔法を使ってみようと俺は右手の人差し指を立て、
そこに蝋燭の火をイメージする。
「……。」
どうやらまだイメージ不足のようだ
「……、……」
まだ火が出ない
「ぐぬぬぬ……、ぐぅ……!」
くっそ、全然でやがらなねー!
「あの~」
「はっ!そうか、まずは魔力の流れを感じないといけないのか!」
そうと決れば、両手を下げできるだけリラックスした状態にして、身体に流れる魔力を感じようとする。
「あの~月人さん?」
「むむむ、なんだか暖かいのが流れているのが感じる、これが魔力だな!よし、それじゃあもう一度!」
また右手の人差し指を立て、蝋燭の火をイメージする。
「ぐぬぬぬぬ!出ろ、火よ!」
魔力の流れが指に集まるのを感じるが、一向に火が出る気配がない。
「くっそ!なんでだよ!」
「あの~月人さん!」
フィリアの声にやっと気づく俺。
「月人さん、ここでは私以外魔法が使えないので、いくら頑張っても魔法は使えませんよ?」
「……。」
先に言え!っと言いたかったが、どう考えてもお門違いだと思い、喉まで出かかった言葉を飲み込む。
「えっと、魔力の流れを感じること自体はちゃんと出来ていたので、戻ればちゃんと魔法が使えると思います」
「……そうか。まぁ、魔法は戻ってからのお楽しみにしとくか。って、フィリア、お前なんか透けてるぞ!」
フィリアを見ると半透明になっており、向こうが透けて見えている。
「どうやらもう限界みたいですね」
フィリアが悲しそうに言う。
「限界?もしかして俺に力を授けたりとかしたからか?」
「はい。これから私は、信仰がある程度戻るまで月人さんを助けることができません。
非情に心苦しいのですが、しばらくの間、月人さんだけで頑張って貰います」
「そうか。まぁ、信仰が戻ればまたこうやって会ったりできるんだろ?」
「はい。それどころか下界に下りることだってできます!とりあえず月人さんは、
戻ったら右に向かって真っ直ぐ進んでください。しばらく歩くと街道があるので、
そこを左に向かって歩くと小さな村がありますので、そこに向かってください」
「分かった」
フィリアの顔がどんどん暗くなっていく。
「私の勝手な都合で、こんなことをして貰うことになり、本当に申し訳ありません。
本来なら、神である私が、自分でなんとかしないといけない事なのに……ですが……」
俯いたフィリアから、涙がこぼれ落ちる
「ほんとう…ごめん、ひっく……ごめんなさい……うぅ……」
「……。」
泣きながら謝罪するフィリア
「まー、その、なんだ。まだこっちの世界を全然しらないけど、フィリアは俺の願いを
叶えて異世界に連れてきてくれたんだろ?だったら、俺の願いを叶えてくれた神様の願いくらい
ちゃんと叶えてやるさ」
少し躊躇したが、右手をフィリアの頭に乗せ頭を撫でる。
「月人さん……ありがとうございます……」
顔を上げ涙を溢しながら俺を見つめる。
「まぁ、俺にどれくらいのことができるか分からないけど、できる限りのことはしてやるから、
待っていてくれ」
「……はいっ」
未だに涙は止まらないが、笑顔を向けるフィリア。
「おっと、もう限界みたいだな」
急に視界が暗くなっていく
「それじゃあ、行ってくる」
「はい、頑張ってください。ですが、あまり無茶はしないで下さいね……。」
「あいよ。んじゃ、ここから見守っていてくれ」
そう言うと同時に、俺の視界が完全に真っ暗になった。
特に小説等書いたことはありません。
続くなら勉強しながらやっていきます。