理由
二人でぜいぜいと息を吐く、爺さんに至っては完全に地面に伏している。
「無理、ホント無理。こ、この歳であんなに魔力使うとか、ないわ……ぜぇぜぇ、こひゅ……」
「はぁはぁ……爺さん、ふざけんなよ。危うく大惨事になるとこだった、ろ……まじで」
「…….ち、ちょっと威力を押さえ気味にしておく、後で。ゼェ……はぁー」
「そうしておけ……はぁー」
爺さんの方に杖を投げて、話は終わったとばかりに疲れた体に鞭を打って立ち上がり、畑の方に行こうとする。
そこに後ろから声をかけられる。
「じゃぁ、明日は頼んだぞ……これを持って」
「は?!」
速攻で爺さんの方まで走って締め上げる。
「俺には無理だって言ってんだろ!」
「く、苦しいわ!手を離せ、こら」
持ってる杖で所々殴られるが気にはしてはいられない、このままだと命に関わる。
万力の様な腕に勝てないと悟ったのか短く詠唱をし始める。
「風魔法エアハンマー!」
突如、横から鈍器の様なもので殴られる吹っ飛ばされる。
「ええい、老人を大切にせんかっ!」
「いってぇ……先のない年寄り先がある若者を大切にしろよ」
フラフラしながらも立ち上がる、その様子を見て驚きの顔をする。
「最早、エアハンマーでは気絶すらしなくなったな」
「お陰様でね」
そう、俺には魔法、魔術は効きにくい体質になっている。
それもこれも爺さんの研究に付き合い爆発に巻き込まれたり極端に濃度が濃くなった場所で生活をしていたせいだ。
初級程度では受けても一切、傷はつかない。
便利に見える反面、回復魔法も効かないという余りにも大きいデメリットもある為、素直に喜べるものではない。
「てか、何で俺なんだよ!?他の奴でもいいだろ」
「いや、話せば長くなるんだが……近くに村があるだろ?」
「ああ」
確かにある、そこでパンを買ったり、できた野菜を売ったりしているのだ。
みんな気のいい人ばっかで急に現れた自分を怪しまずに快く受け入れてくれた。
「そこの村長がな、聞くんだよ。儂に」
こほんと咳をする。
「儂にな、お弟子さんは取らないのですかって?」
「は?」
「ここで、いないって言っても良かったんだが……いないって言うと、大抵村から弟子入りしようとする奴がいるんだよ」
「で?」
「面倒くさくなると思って、儂はお前しか弟子は取る気がないって言った」
ため息の様なものが口から漏れた、それをきっかけにか更に話を続ける。
「お前は天才だとあれは儂の全てを教えた、と。そうしたら村長が魔物討伐によければ同行してくれないかって言ってきたから」
手首の関節を鳴らし、軽く準備する。
「いいよって言っちゃった」
「死ねぇ!!」
掛け声と共に全力で爺さんのボディにめがけて拳を振るった。
しかし、そこは腐っても魔術師、手にある杖でがっちりと受け止める。
「危ないぞ」
「髭、全部むしり取ってやろうか」