異世界送り
こっちの非難する目から目を逸らしながら、目の前の人物はしゃべる。
「いやね、元々死ぬのは違う人だったんだけど…….君が明日のテストの為に徹夜で勉強してたろ?」
「数学の単位がやばいから……」
「それよそれ、同じように徹夜でやってる人がいてさ本来はそっちだったんだけど君と間違えちゃったんだよ」
「間違えちゃったんだよって…….ええ…….」
そもそも目の前のこの人は何者なんだ?
「あの、貴方は一体何者何ですか?」
疑問が口から出る。
「この世界の神様だね、うん。ああ、いいよ敬うなくても、そういうの苦手だからね、うん」
どうやら神様らしい、敬わなくてもいいと言うが間違えて人を殺すような神様を敬う気はさらさらない。
てか、神様がミスするなよ、と口に出かかるが、何とか我慢する。
「で、本題なんだけど……君には僕が管轄してない世界に行ってもらうことにしたんだ」
「は?いや、どういうことですか?」
「魂のバランスってのがあってね、本来死ぬはずじゃないものが死んだら崩れてしまうんだよ。枠がないからね、だからと言って生き返せれば、そこではい終わりっていかないだろ?」
「どうして?」
「急に死人が生き返ったら大問題になるじゃないか、それに君の肉体はもうないみたいだし」
聞きたくなかった事実が本当にさらっと話された気がする。
てか、俺の肉体がないって…….もう火葬されたのかよ。
「だからね、他の世界に行って貰おうかなって」
「かなって……じゃないでしょ!酷くないっすか!余りにも!俺が何をしたんですか!ただ、ただ苦手な数学を勉強しただけしゃないですか!!」
相手が神様なのを忘れて怒鳴る。
そんな俺を見て申し訳なさそうな口調で謝罪の言葉を口にする。
「ごめんよ、他の世界も悪くないと思うからさ許してよ、ね」
神様と名乗る人物がぺこぺこしますのを見て何かもう、色々と吹っ切れる。
「分かりましたよ、で……俺はどこに行かされるんです?」
「管理されてないグートネルって世界だね、うん」
「管理されてないって?」
「僕らみたいに神様が存在しないってことかな、だから、まぁ、今回みたいなことはないね、うん」
神様がいない、その方が安心できるような気がしてくるそんな気分になるのは目の前の神様のせいだろ。
「分かりましたよ、そこでいいです」
「本当?!いや、助かるよ。本当だったら何かの力とかあげるべきなんだろうけど……」
「ちなみに、今から俺が行くのってどういう世界なんです?」
「剣と魔法の世界かな」
「魔法はともかく剣なんて触ったことすらないんですけど」
「だよね」
「ちょっと待て!!」
「ごめんね、本当ならチート系あげるべきなんだろうけど他の子にも渡してるから、もうストックなくてね、ホント、ごめん!」
「俺以外にもってことは……これが初めてじゃないのかよ!」
いきなり神様が凄まじい早口で呪文のようなものを唱え始める、ちくしょう、こいつ問答無用で俺を異世界に送る気だ。
「あ、でも安心して。会話は通じるようにしてあるから」
当たり前だ、と言いかけるタイミングで瞼が重くなる、最後にみた瞬間は神様が土下座をしている姿だった。