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罪斬り  作者: 雨音 雫
失ったモノ
6/7

信頼の理由

「俺を簡単に信じるのは、どうかと思うぜ、ルミナ」

そう、罪兎さんは言った。


「……それは、どういう意味?」

「こういうこと―――――」

罪兎さんが言葉を紡ぐ途中、僕の視界は反転した。それと同時に背中に鈍痛がはしる。どうやら、罪兎さんに投げ飛ばされたようだ。


「っ痛……!!!」

痛みに顔をしかめていると、両腕を後ろ手に拘束され、首筋にはひんやりとした何かが当たる。恐る恐る見てみると、それは紛うことなき刃物だった。

「俺は、“犯罪者”だ。いつ、お前たちを手にかけるか分からないだろ?」

僕の位置から、罪兎さんの表情は見えない。感情を押し殺した声で、そう彼は言った。


「罪兎さんが“犯罪者”なら、今の時点で僕は死んでなきゃおかしいでしょ」

「……何だって?」

僕の言葉が意外だったのか、罪兎さんは聞き返してくる。

「普通の犯罪者なら、油断した僕をすぐさまズバッと殺っちゃってるっての。それを躊躇してるような罪兎さんは、僕を殺せないよ。勿論、あそこの2人もね」

「……躊躇なんかしていない!!」

罪兎さんは僕を蹴り飛ばして、仰向けになった僕の上にまたがり、思い切りナイフを振り下ろす。しかし―――




「ほらね、殺せないでしょ?」

そのナイフは、床に刺さっていた。

最初から、罪兎さんは僕たちを殺す気なんて無いのだから。

「……何で、言いきれるんだ」

ポツリと罪兎さんは言葉を零す。その答えが安易すぎて、呆れ顔で僕は言った。



「決まってるでしょ。僕が罪兎さんを選んだから」

「……は?」

罪兎さんは目を見開いている。その肩は微かに震えているように見えた。

「僕が、罪兎さんを信頼出来ると思って、護衛として選んだの。だから、あなたは僕を殺せない」

「……馬鹿だろ、お前…」

消え入るような声で言葉を零す。すると、僕の肩にポツリと何かが落ちた。

罪兎さんを見上げると、彼は顔を片手で覆って泣いていた。







「――――僕が罪兎さんを選んだから」

そう、ルミナは言った。思いがけない言葉だった。

「僕が、罪兎さんを信頼出来ると思って、護衛として選んだの。だから、あなたは僕を殺せない」

こいつは、身勝手だ。勝手に信用して、勝手に選んでおいて、俺のことを解っているかのように話す。


そんなところが、あいつにそっくりだった。


「……馬鹿だろ、お前…」

そう、言葉にしながらも、信頼されている事が嬉しくて――……。

ルミナの信頼が、痛くて―……。

自然と、涙が溢れた。


「罪兎さん、泣き虫~」

そんなからかう言葉も、今の俺には心地よい、安らげる言葉だった。

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