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3章③

「そういえば、ソフトボール部って文化祭で何かやってんの?」

 教室を出たところで亮太は千香に聞いた。

「ソフトボールのストライクアウトやってるよ」

「へえ、面白そう。棚橋さん終わるまで暇だし、牧人どうだ?」

「いいねえ」

「えっ、行くの? なんか嫌だな。いまの時間一年生だし」

「じゃあ千香はどこか行きたいところある?」

「うーん、あとで友だちがやる軽音楽部のライブへは行くつもりだけど、いまは特にないかな」

「ライブはまだなんだろ? ならストライクアウトでいいじゃん。どこ?」

「室内練習場」

 結局千香を押し切る形で室内練習場に向かった。

 室内練習場は体育館の横にあった。人工芝が張られた練習場は普段アーチェリー部などが使っているらしい。真ん中がネットで仕切られていて、入って右側はアーチェリー部のオモチャの弓を使った的当てコーナーで、左側がソフトボール部のストライクアウトだった。

「こんちはーす」

 千香を見てソフトボール部の部員らしき三人が挨拶をした。いるのは三人だけで客の姿はなかった。

「なあ、千香。ちょっとこれで練習してもいいか」

 亮太は脇に置いてあるグローブを指差した。

「いい?」

 千香が後輩を見ると、「どうぞー」といってくれたので、亮太と牧人は彼女たちのグローブを借りてキャッチボールを始めた。

「ほかのお客さんきたらやめてね」

 千香にOKと合図したあと、亮太は腕を一回転させ下からソフトボールを投げた。ボンっと牧人のキャッチャーミットが音を立てる。

「ソフトでもいい球投げるなー。さすが元野球部のエース」

 牧人も亮太同様下から投げ返してくる。きれいな回転の鋭い球だった。

「むかしは千香とソフトでキャッチボールしてたからな。でも牧人もうまいじゃん」

「そりゃ現役野球部ですから」

「そういや、いまピッチャーの練習もやってるんだっけ?」

「たまに。三番手ピッチャーだが、野崎やめたら二番手になる」

 亮太と牧人は中学時代野球部のチームメイトだった。中学三年の時は亮太がエースで四番、牧人がキャッチャーで六番を打っていた。

 高校入学後、牧人は何度も亮太を野球部に誘ったが、亮太は首を縦に振らなかった。

「じゃ、そろそろやろうか。牧人、どっちからいく?」

「お先にどうぞ」

「おっし、じゃあお先に」

「一回200円です」

 ストライクアウトはボールを投げて九枚のパネルを当て抜くゲームだ。ソフトボールのマウンドの距離から五球投げて、三枚以上パネルを抜くとC賞、ビンゴ一列でB賞、ビンゴ二列でA賞がもらえる。

 亮太は200円を渡し、首を左右に振って指をこきこき鳴らしてから、伸び上がるような本格的フォームでボールを投げたが、球は枠の上を大きく外れた。ソフトボールをうまく投げるには、腕を回すタイミングと足を踏み出すタイミングが合うこと、それとボールを手から離すリリースポイントが定まっていることなどがカギとなる。だが、一投目は力が入ってボールを離すタイミングが遅れた。

 二投目、リリースポイントを修正すると、真ん中のパネルをきれいに射抜いた。

「お、いいね」と牧人の声が聞こえる。

 続いて三投目は右下のパネルを抜いた。

 左上を抜けばビンゴなのでそこを狙うが、四投目はフレームに当たり失敗。

 ラスト五投目。狙ったとおり球は左上のパネルを抜いた。

 カランカランとソフトボール部員がハンドベルを鳴らす。

「亮太やるー」と千香が手を叩く。

「おめでとうございます。B賞です。B賞はこちらの三つから一つを選んでください」

 テーブルに置かれた封筒を一つ開けると、『ジャンボトロピカルジュース(二人前)無料券』というチケットが入っていた。

「ゲット」と亮太は牧人を見て、ジュースの券を見せた。

「じゃあ次やるか」と続いて牧人が歩み出る。

 一投目からキレのいい球がいき、右横のパネルを抜く。本職はキャッチャーだが、痩身なのもあって、しなやかで無駄のないフォームで投げる。

「うし」

 二投目左下にいくがフレームに当たり失敗。

 三投目は左横のパネルをきれいに抜く。リーチ。真ん中を抜けばビンゴだ。

「あと一枚」と亮太が声をかける。

 四投目は真ん中を狙うが、微妙にそれて真ん中上のパネルを抜く。

 五投目も真ん中を狙うが、左上のパネルに当たり抜く。

 カランカラン――。

「おめでとうございます。C賞です」

「あちゃー四枚当たったのに亮太より下の賞かよ」

 牧人も封筒を一つ選び開けると、『積み木ゲーム一回無料券』というのが入っていた。

「積み木ゲームってあのプルプルするやつだろ」

 牧人が身をくねくねさせながら亮太に聞いた。

「木の棒を抜いて上に積むやつ。たしかにプルプルするな」

「ああいうの、あんまり得意じゃないんだよな」

「千香と行ってくれば? おれは棚橋さんと校内回ってくるから」

「ああ……」

「じゃ、そろそろ行こうかな」

 亮太は牧人にそういうと、ソフトボール部の後輩と一緒にいる千香にも手を振って室内練習場を出ていった。

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