3章①
文化祭当日、亮太が駅に着くと待ち合わせの改札前に牧人はすでにいた。
「早いな。まだ約束の30分前だけど」
「おっす。亮太だってはえーじゃん」
「う、なんとなくな」
牧人はシャレた革靴にチェック柄のダークグレーのスリムパンツ、上は紺のジャケットという格好だった。本人いわくチャーミングポイントの坊主頭はニット帽で隠している。
「服、気合入っているな」
「兄貴に借りてきた。そりゃ女子校デビューだからな」
「チャームポイント隠しているけどいいのか」
「チャームポイントはむやみに見せるものではない」
「そういえば昨日の試合どうだった?」
「勝ったぜ。8対6で」
「乱打戦だったのか」
「ウチ、ピッチャー弱いからな。しかも野崎のやつ、この大会でやめるんだわ」
「野崎ってエースだろ。なんで?」
「受験勉強に専念するって。どうせ三年までやってもすぐ負けるんだから時間の無駄だって」
「ひどい言い様だな」
「まあな。でも、亮太だって似たような考えだろ?」
「まあたしかに、野崎のいいたいことはわかるけど」
「いや、いいたいことはオレにだってわかる。でも、勝つだけが目的じゃないだろ。野球が好きだっていうのはもちろんあるけど、オレは高校時代にこれだけは打ち込んだと胸を張っていえることがほしいからやってる。亮太にはそういうものあるか?」
「いや……ない」
「ピッチャーいないんだ。いまからでも間に合うぜ」
「一年は?」
「一応いるけど、オレが投げたほうがマシなレベル」
「そっか。いや、ないから」
「次の試合は来週の日曜で、相手は二高だから応援来てくれよ」
「二高今年も強いのか?」
「ピッチャーがいいな。球はえーんだよ。140キロ出るからな」
「そっか。行きたいんだけど、ひとりだからな」
「千香ちゃん誘えばいいじゃん」
「千香か。そういえばソフトこの前負けたっていってたから、練習なかったら行くっていうかもな」
「オレからもあとで千香ちゃんにいってみる」
ターミナル駅で降りて、乗り換えの電車を待っているときに亮太はいおうと思っていたことを切り出した。
「実はこの前、図書館で偶然白女の女の子と話す機会があってさ、彼女千香と同じクラスらしいんだよね」
「図書館? ちょっ亮太、ナンパしたの? やるー」
「い、いやそういうんじゃなくて、その、落し物を拾ってあげたらちょっと話すことになってさ……」
「その子が気になると」
「いや……だからそういうんじゃなくて」
「そういうイベント事に消極的な亮太が、白女の文化祭に行くなんていうから急にどうしたんだろうとは思ったんだよね。はーん、さては彼女に会いたいから行く気になったわけか。おまえは千香ちゃんというものがありながらつくづく罪づくりなやつだな」
「千香は関係ないじゃん」
「あちゃー。その彼女と模擬店とか回りたいと思ってるわけ?」
「うんまあ……そういう展開になったらうれしいけど」
それを聞いて牧人は沈黙し、しばらくしてから静かにいった。
「そっか。ならオレは千香ちゃんと回ればいいんだな……」




