11章④
夕方、信明が今日の分の祈祷を終えて拝殿の外に出ると、社務所の前に亮太と千香とうた、それに牧人がいた。
「のぶさん、あけましておめでとうございます」
「お、牧人くん、あけましておめでとう」
「お招きありがとうございます。でも、なんでオレもバイトで呼んでくれないんですか? ちょー働きたかったですよ」
「間近で千香ちゃんの巫女姿が見たかっただけじゃないの?」
「ちょっ……図星です」
「ごめんね。男手は間に合ってるんだよ。祈祷には呼んであげたんだから許してよ」
「でも、二人とももう巫女姿じゃないんだけど……」
「元旦に初詣きてたでしょ?」
「あ、バレてた?」
「うたちゃんに聞いた」
亮太が歩み寄ってきた。
「ねえ、のぶさん、なんかすごいことしてくれるの?」
「特別なことはしないよ。普通の除災招福の祈祷だよ。ただ君たちのためにやってあげたいなと思って」
「そっか。でも、好きなこと祈ってもいいんでしょ?」
「もちろん。ただし真摯に祈るんだよ」
「わかった」
拝殿に上ったあと四人は並び、信明にいわれた通りに腰を折って頭を下げた。
信明は彼らの前で、大麻と呼ばれる白い紙の束がついた木の棒を振り、祓詞を読み上げる。神様を迎えるため身を清める修祓と呼ばれる神事だ。
そのあと祭壇前で信明は和紙に墨で書いた祝詞を取り出す。
彼らのために、先ほど書いたものだ。
まあこれからいろいろあるだろうけど、とにかく彼ら、彼女らが無事に健康に、できればよき人生を送れるように。
そんな心をこめて信明は祝詞を読み上げていった。




