11章②
稲苗神社は周辺では古く大きな神社であり、以前から初詣はにぎわっていたが、信明がテレビに出てからは人気宮司のいるパワースポットとして取り上げるマスコミも多く、若い女性の参拝客が増えた。信明自身が独身なのに、縁結びのご利益があるとも思えなかったが、それをいうのは野暮なので黙っていた。
大晦日には境内で焚き上げをし、古いお守りやお札を焼く。横にあるテーブルでは千香とうたが巫女の装束で御札返納の受付をしていた。二日前からバイトの人たちがきていたが、作法などを教えるのは母にまかせていたので、うたの巫女姿をよく見たのはこのときがはじめてだった。
「二人ともよく似合ってるなあ」
「そっかな」と千香が少し照れる。
「さすが僕が巫女(見込)んだだけはある」
「うわーそのダジャレつまんない」
「いやいや五円(ご縁)があるとか、十円は遠縁で縁起が悪いとか、神社なんて元からダジャレばかりだよ。でもね、神様からすれば語呂合わせなんてどうでもいいことなんだ。漢ならつべこべいわず賽銭を十万円くらい入れてみろよと思っているよ」
「それ神様じゃなくてのぶさんが思っているんでしょ」
「あはっ、その通り。千香ちゃんなかなか神通力あるなあ」
うたがクスッと笑っている。
信明たちが談笑をしているを見て、そうじを終えた亮太が近づいてきた。
「楽しそう。何話してたの?」
「うん? いや千香ちゃんがやきいも食いたーいって駄々をこねるんだ」
「そんなこといってないし」
「たしかにやきいもは食べたい」
「私もおいも好きです」
「ねえ、のぶさんいも焼こうよ」
「やりたいのは山々だけど、さしもの僕でもお焚き上げでやるわけにはいかないな。まあそのうち落ち葉を集めて機会あったらね。ねえ亮太くん、火見るの替わってくれる? 僕は大祓の準備するから」
「うん、わかった」
「よろしく」
信明が着替えて、祭祀の準備をしに再び表へ出ると、火を囲んで三人が楽しそうに話をしていた。
うたが楽しそうでよかったと思うと同時に、少しうらやましくもあった。




