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8章②
翌日の日中、信明は再び中古車屋にきた。
「裕哉」
信明は外で車の点検をしている男に声をかけた。
「うん? おまえ、樫木か……。 なんの用だ?」
「なんでうたちゃんが裕哉のところにいるんだ? 長野にいたんじゃないのか?」
「おっさんが去年死んだ。おばさんもすでに死んでいて他に身寄りがないから、俺のところにきた」
「そうだったのか。うたちゃんだけここに住まわせているのか?」
「おまえには関係がない」
「こんなところで女の子にひとり暮らしさせるなんて」
「俺には妻と中学生の息子がいるんだ。うたと一度同居したが、考えても見ろ。急に見ず知らずのやつがやってきて、うまくいくはずないだろ。特に息子とはダメだ。合わない。うたも居づらかったみたいだから、ここに住まわせた」
「そうなのか」
「だがどちらにせよ、おまえには関係のない話だ。用はそれだけか」
「ああ」
「帰れ」
信明に返す言葉はなかった。




