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7章⑤

 亮太はすっかり気落ちしてしまった。

 すぐうたに「ごめん」とメッセージを送ったほうがいいとは思ったが、尾行を非難されるのが怖かったし、あの男が何者かを聞く勇気もなかった。

 肩を落としながら歩いていたら、いつの間にか稲苗神社にたどり着いていた。社務所をのぞくと、信明がスポーツ新聞を読んでいる。

 信明が亮太に気づいた。

 社務所の小窓が開く。

「どうしたの? 浮かない顔して」

「あ、いや……」

「うん? まあ入んなよ」

 亮太は玄関で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて、社務所に入った。

「そこに座んなよ」

 いわれた通り社務所の大きなテーブルの前に座った。

「まあ、これでも飲んで」

 テーブルに緑茶が置かれる。いい香りがした。

「熱っ」

 亮太は少し落ち着いた。

「で、なんかあったのかい?」

「今日スーパーに行ったら、その、前いった気になる子がいたんで……」

 亮太は今日あったことを、順を追って話していった。

 信明はお茶を飲みながらうなずいていたが、うたが中古車屋に入ったというところで急に食いついた。

「それってどこの中古車屋? ひょっとしてバス通りのコンビニの先かな?」

「そう、そこ。知ってるの?」

「いやまあ、ちょっとね。うちの神社も氏子さんとか町内会とか付き合いがいろいろあるから。ちなみにその女の子なんて名前なの?」

「棚橋うたさん」

「ふーん」信明は湯呑み茶碗を両手で持って、口を隠すようにゆっくりと飲んだ。信明の両手は震えていたが、亮太はそれには気づかなかった。

「それでどうなったの?」

「中の様子を知りたくて見ていたら男の人が出てきて怒られた。で、そのあと棚橋さんも出てきて事情を話したんだけど、気まずくなっちゃって」

「男はどのくらいの歳?」

「よくわからないけど、のぶさんくらいかな。でも、なんというか父親って感じじゃないんだよね。冷たいというかキツイというか。棚橋さん事務所に何しに行ったのかな? 頼まれたものを買ってきたとかかな。とても住むようなところには見えなかったけど」

「その辺は彼女に聞けばわかることなんじゃない? ああなるほど、亮太くんその男に怒られ、彼女に尾行したのがバレて落ち込んでるんだ?」

「う、うん……」

「とりあえず家に帰ってごはんを食べて風呂に入って、今日はごめんって電話なりメッセージするなりすべきだね」

「あ、うん。わかった」

「たまにはうまくいかないことだってあるよ。まああれだ、恋に障害はつきものってやつだよ」

 亮太は信明のいいつけを守り、家に帰ると夕食をとり、風呂に入ってから「今日はごめん」とうたにメッセージを送った。

 寝るまで絶えず携帯電話の画面を注視していたが、結局その日うたからの返信はなかった。

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