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7章③

 翌日の授業中、亮太は信明の言葉を反芻はんすうしていた。

 亮太自身も以前から自信のなさは自覚していた。

 たとえば牧人。見た目も悪くないし、性格は明るく話も面白い。野球の実力はすごいとはいえないけれど、ストイックに取り組んでいる。魅力ある男だと思う。

 千香。不器用なところはあるけれど、素直で裏表のない性格。だから同性からも異性からも慕われている。ソフトボールのピッチャーとしての実力もかなりのもの。

 自分。進学校で勉強はわりとしているけれど、それでも成績はせいぜい中の上ってところ。趣味といえば野球を除けば高校からはじめた読書くらい。それも読書好きからすれば全然ってレベル。その他特筆すべき点なし。

 こんなんでは、誰かを好きになっても、相手から喜んでもらえないどころか、迷惑にしか思われないのではないか、そう考えてしまう。

 少なくても中学時代はこんなふうに思ったことはなかった。たぶん野球をやっていたからだ。野球部のエースで四番。学業もそれなりに優秀。もちろん称賛がほしくて野球をしていたわけではないけれど、自分が誇らしかったのはたしかだ。

 ところが高校に進学し、野球をやめて、よりどころがなくなってしまった。勉強面でも中学と違い、まわりみんな頭がよくて抜きん出ることができない。

 学外の人には東高の高木亮太という枕詞をつけることができるが、校内では野球部の、とか生徒会の、とか成績トップクラスの、とか名前の前に何もつけられない、ただの平平凡凡な一生徒だった。中学時代はこぼれ落ちそうなくらいあった自信も入学してすぐに空になった。

 二年になってから部活に入ろうかと考えたのも、どこからも、誰からも必要とされない状態から脱却したかったからだ。

 でも一方で、何もない自分というのは偽らざる姿だし、仕方ないかなとも思っていた。

 うたと出会うまでは。

 やっぱり好きな人にはいいところ見せたいし、カッコよくありたい。

 この前野球部の試合で野崎を見て思った。カッコ悪いな、と。

 どうせ来年の夏までやってもたいした結果を残せないし、早めに部活を引退して学業に専念しようという考えはわかる。自分だって同じような考えで野球部に入らなかったわけだから。

 だけど野崎を見ていたら、「どうせ頑張ったって二高には勝てないよ」という考えがピッチングにも出てしまっていて、見ているこちらまで嫌な気持ちになってしまった。途中で牧人が怒ったのも無理はない。

 それに引きかえ牧人は打席では粘れるだけ粘ってヒットを打ち、守っては必死のリードで、下手の下手なりの戦いを見せてやるという気概がカッコよく映った。

 自分はうたやまわりにどう映っているだろう?

 合理的な考え、面白味のない人間性、何もやっていない生活。

 ああ、間違いなく野崎以下だ。

 いやそうじゃない、もっとやれる人間だというところを見せたい。

 うたやまわりのみんなや、何より自分自身に。

 それにはやっぱり野球だと思う。

 でも、そうすると図書館へ行けなくなって、うたともめったに会えなくなる。

 勉強面も心配だ。

 そんなことを亮太は考え続けた。

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