表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/55

5章①

 翌週の日曜日、約束の時間ちょうどに亮太が千香の家に迎えにきた。

「うす」

「お、おはよう」

「お、千香のスカート姿なんてひさしぶりに見た」

 千香は紺のドット柄のワンピースにライトグレーのカーディガンという格好だった。

 昨日の夜、千香はどの服を着ていこうか小一時間迷った。もともとボーイッシュな格好が好きなためスカートはほとんど持っていなかったが、この前いとこのお姉さんからこのワンピースとカーディガンをもらった。

「サイズが合わないからこれ千香ちゃんにあげるよ。千香ちゃんこういう服もかわいいと思うよ」

 自転車で行くのでスカートは迷ったが、亮太に私服姿を見せるのはひさしぶりだったので、思い切って今日着ることにしたのだが、昨日からずっと反応が気になっていた。

「似合ってる、かな?」

「うん、いいと思う」

 ああやばい、うれしい。これ着てきてよかった。

 でも一方で、無自覚に自分を喜ばせる亮太を憎らしくも思った。

 文化祭のあと千香は悩んだ。

 亮太はうたに惹かれている。文化祭で確信してしまった。

 亮太のことが本当に好きならば、自分の想いより好きな人の恋を応援するべきじゃないか、そう思った。

 しかも文化祭では、はっきりではないにせよ、牧人から想いを告げられた。

 前から牧人が好意を持ってくれていたのは千香も感じていたが、東高で素敵な女子を見つけたかもしれないし、しばらく会ってもいなかったから、急にあんなことをいうとは思わなかった。

 中学のときから牧人は人気があった。顔立ちは整っているし愛嬌もある。明るくて面白い。女子からの人気なら亮太よりも牧人のほうが上だろう。千香から見ても牧人は素敵な男子だと思う。

 でも――。

 やっぱり「でも」という言葉が出てしまう。亮太に八歳のときに会い、それから九年。それだけ想ってきた人を簡単に諦めることはできない。考えとか理屈とかじゃなく、亮太を好きというのは規定事実であり、これまでの人生の軌跡だった。

 それに、亮太とうたがうまくいくともかぎらない。

 結局、想いは振り切れなかった。

「ねえ、棚橋さんとその後会った?」

「うん? いや、会ってない」

「へえ、そうなんだ」

「あ、でも明後日図書館で会う予定」

「ふーん、あっそう……」

 野球場までは自転車で30分ほどだった。

「球場行くの中学ぶりだな」

「わたしもあそこはひさしぶり。そういえば牧人くんってレギュラーなの?」

「失礼だな。牧人よりうまいキャッチャーなんてウチの学校にはいないよ」

「いや、そうかなとは思ったけど……。東高、力はどうなの?」

「結構強いよ。ただシード校には勝てない」

「選手層が薄いから?」

「それもあるとは思うけど、抜きん出た選手がいないというのもあるかな。特にピッチャー」

「今日って二高が相手なんでしょ?」

「そう」

「強いんでしょ?」

「強い」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ