3章⑤
白女の校舎はさほど広くない。亮太の通う東高の三分の二くらいの大きさだった。
「白女って一学年何クラスなの?」
「五クラスです。特別教室や体育館は中等部と兼用みたいです」
「へえ、中等部があるんだ」
文化系の部活の展示は校舎奥の特別教室棟でやっていた。本校舎から渡り廊下に入ると写真部の撮った写真が壁に貼られている。
「ちょっと見てもいいですか?」
うたが亮太に声をかける。
「もちろん。写真好きなんだ?」
「あまり撮ったりはしないんですが、見るのは好きです」
写真は大小さまざまでカラーもあればモノクロもある。テーマも湖や草原や高山植物もあれば、子どもやお年寄りの写真もある。
亮太は夜の街を撮った写真に惹かれた。色味を抑えたネオンの色と黒く伸びる人影が街の寂莫感を表している。
「いい写真ですね」
うたが歩み寄ってきてそういった。
「どこの街かな」
「この山からの夜景は函館なので、街も函館だと思います」
「ああ、なるほど。たしかにこの夜景は函館かも。見たことある。棚橋さん函館に行ったことあるの?」
「はい。むかしおじいちゃんおばあちゃんと」
「五稜郭とかがあるんだっけ?」
「はい、行きました。あと修道院にも行ったんですが、そこがすごくよかったです」
「修道院? って日本にもあるんだ」
「そこだけ近世ヨーロッパみたいでした」
「へえ、そういうの好きそうだよね」
「はい、大好きです」
うたは微笑んだ。
美術室では美術部の展示をやっていた。
入口に女子生徒が一人いて亮太が会釈すると、「どうぞ見ていってください」と彼女はいった。美術室の中には誰もおらず静まりかえっていた。
入口からよく見える位置に『ご入学おめでとう!』と書いた大きな花柄のダイナミックな看板があった。たぶん入学式に使ったものだろう。その奥のブースには水彩画や油絵、CGイラストなどが二十数点飾ってあった。
いくつかの絵を眺めたあと、うたは無数の花とともに水面に浮かぶ少女の水彩画を見つけ、その絵の前で立ち止まった。
亮太は絵を見るうたのうなじを見た。
かわいいなと思っていると、うたが突然振り返った。
驚いた亮太をうたが「どうしたんですか?」と覗きこむような表情で見る。
そのとき亮太は衝撃ともいえるような胸の鼓動を感じた。
そして自覚した。
おれ、この子が好きだ――。




