第1章(7)ー相棒orもうひとりの俺ー
時は変わって放課後。なんのこっちゃ分からん授業は苦痛でしかなかったが持ち前の適応力で乗り切った。しかしどうせなら今この時間に世界移動すれば良かったんじゃね?何も一時間目から出なきゃいけないことはなかろう。
俺は帰宅する素振りを見せながらクラスの連中を撒き、それとなく校内探索に踏み出た。とりあえず祐希さんに会うことが目標だ。昼休みに鏡で確認してきたが、俺の姿は元のそれとは全く異なっていた。“藤嶺翔”はこれぞスポーツマンと形容すべき精悍かつ爽やかな顔立ちであり、力強い瞳からは知性を感じさせるような、……と並べ立てても面白くない。要するにだな、イケメンってことだよこんちくしょう。
「おーい、藤嶺」
後方から俺を呼ぶ声が。しまった、慣れるまでは極力“こいつ”の知り合いには会いたくないんだよな……。突如として重みを増した足を持ち上げるように振り向くと、
「あれ、なんだ祐希さんじゃないすか。俺も探してたとこっすよ。って、あれ?」
「どうかしたか?」
悪意のない、ケロっとした様子で祐希さんが言う。しかしあなたはこっちでも変わらずイケメンすね。当たり前か、同一人物なんだし。
「藤嶺って、なんで俺のこと知ってんすか」
「あん? 何ワケわからんこと言ってんだ?」