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第1章(6)ー翔べ! 青春の1ページー

「ちょ、ちょっまっ」


カッコ2って言ってたよな? さっき開いてたページどこだ? えっとえっーと……


「78ページ」


必死にテキストをめくり続けていた俺に、右隣の女子生徒が小さく耳打ちしてくれた。言われた通りにそのページを開くと、既に解答が書き込まれてあった。


「Excuse me, but could youーー」




自分で言っていることの意味が分からなかったが、藤嶺翔は出来る奴らしい、読み上げた英文は正解だったらしく何とか事なきを得た。今はその授業を終え、ひとたびの休息を与えられるに至る。


「さっきはどうしたの? 珍しいね。そんなんじゃお兄ちゃんに喝入れられちゃうよ」


俺が机の中をゴソゴソしていたところ、先の右隣の女子生徒からその活発さを容易に推測させる口調で声をかけられた。


「お、おう。ありがとう助かったよ」


耳を出したショートヘアのその女子は、「ま、そういうこともあるよねっ」と人好きのする笑顔で言うと席を離れた。お兄ちゃんとやらは部活の先輩か何かだろうと思われるが、こっちの俺、藤嶺翔は何の部活に所属しているんだろう。いや、そんなことより、うん。


JKサイッッコオーーーーーーッウ!!


なんと会話の甘酸っぱいこと、なんと距離感のもどかしいこと! やはり中学とは違う、変に恥ずかしがったりギクシャクしたりせずオープンで社会的な空気の中に、まだどこか未熟さを隠しきれない、絶妙なやりとり。これが高校かーー!


「ふっ、藤嶺くん」


感動のあまり人知れず両手でガッツポーズをしていると、真後ろからこれまた女子生徒に声をかけられた。


「ん?」


振り向くと、ハーフアップというらしい、サイドヘアを後ろに流し、上部をゴムでまとめ上げた髪型の少女がもじもじとした様子でこちらを見ていた。か弱く可憐な、俺が守ってやらなきゃと思わせるような少女だ。


「あのっ、今日からテスト期間で放課後の部活、ないよね? だから良かったらえっとーー」


な、なんだ? もしや何かのお誘いか? クーッ、俺ってば憎いね! いや待て、これは“器の俺”に対してか? そう考えると腹立たしいが中身の俺はこのチャンスを存分に活かすぜ! しかしそこに、


「おい翔、次は教室移動だぜ行くぞ」


何ィ!?


「あっ」


肩を組まれたまま連れていかれる俺を哀しげに見つめる少女。俺の青春が……




ところでこの《翔》、ショウって読むんだな。カケルとの二択だったが、何も考えてなさそうに俺の肩に手を回すコイツのおかげで分かったよ。

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