調査
昨日の時点で1000PVを越えていました。
驚きと喜びと共に感謝いたします。
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ありがとうございます。
次は5000PV を目指して頑張りますので、今後とも宜しくお願いします。
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バーブレス 深夜
あらかたの客は既に帰り、店内には
八十八天魔で吸血鬼のチュロス。
同じく八十八天魔で双子のサキュバスである、ミウ、シア。
パティシエであり元戦士のヒーロ。
アルバイトで回復術士のアーユ。
そしてバーブレスのマスターであり、現魔王であるバーブしか居ない。
ヒーロは白のタキシードを着たまま床に大の字になって倒れている。
別に酔い潰れているのではなく、サキュバス姉妹にキスされて抱き締められた事により失神しているのだ。
アーユなら簡単に回復させることが出来るが、これで今日倒れるのが五回目なので、放っておかれている。
そのアーユはテーブル席や、カウンターから空いた食器やグラスを運び、今は奥で洗い物をしている。
たぶんきりがないので床掃除をするときまでヒーロは寝かせておくつもりだろう。
カウンター席にはチュロスを中心に、
左には腰まで伸ばした燃えるようなルビー色の髪に、黒曜石を思わせる不思議な魅力の黒の瞳のミウ。
小悪魔みたいな妖艶な笑みを浮かべて座っている。
右には肩まで伸ばしたヘマタイトを思わせる光沢のある黒髪に、カーネリアンのような落ち着いた雰囲気の赤の瞳のシア。
天使のような清楚な微笑みを浮かべて座っている。
二人は髪も、目も、話し方も、性格も違うので全く違う印象は受けるのだが、やはり双子であると思ってしまう。
何か二つで1つといった感じがするのだ。
この三人は開店からずっとこの席のまま飲み続けているのだが、全然酔ってる感じがしない。
チュロスは吸血鬼なので、夜が深まれば深まるほど身体能力も魔力も飛躍的に上昇するのでアルコールくらいではビクともしないのだろう。
強いて言うなら、サキュバス姉妹の頬がほんのりピンクに染まっているくらいか。
この二人は接触した相手に吸精を自動発動するので、ヒーロから吸収した体力がアルコール分解の助けになっていると思われる。
「魔王様、どうしたの~今ならスライムでも殺せそうなくらい無防備ですよ~」
「それはあり得ないです。魔王様はこの世界で最強の存在ですから。」
おっと、考え事をしていてボンヤリしていたか。
しかし二人の意見が割れるのは珍しいな。
あるいはやはり少しは酔ってるのかもしれない。
バーブはそんな事を考えながら口を開く。
「失礼しました。お二人の事を考えていたら、ボンヤリしてしまいまして。」
口に出した直後にしまったと思ったが既に手遅れだ。
三人に付き合って飲みすぎた。自分が一番酔ってるのかもしれない。
間に合うか?最大回復魔法を遅延発動する。
「もう~魔王様たら~チュ!!」
「お上手です。チュ」
限界近くまで体力を奪われた。
危ない。回復魔法を使ってなければヒーロの二の舞だ。
これ以上体力を奪われてはたまらないので話を変える。
「ところでチュロスさん、先程から静かですけど何か気になる事でもあるのですか?」
しばらく前から首を傾げては何やら考え事をしているチュロスに話しかける。
「気になる事と言うか、何か重要な事を忘れてるような気がするんス。うっかり忘れたッス。
う~ん、なんだったかなあ?」
チュロスのうっかりはいつもの事だが、それについては心当たりがある。僕も今思い出したのだが。
控えめに一言。
「次元振動の事では?」
「!!??
そうッスそうッス!!魔王様、早く言ってくださいッス!!」
今朝…いや、既に日が変わってるから、厳密には昨日の朝ッスけど。
三大陸に次元振動が感知されたんッス。」
自分で促しておいて何だが、僕は次元振動と言う言葉を今日初めて聞いた。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥だ。
素直に尋ねる。
「今さらで申し訳ないのですが次元振動って何ですか?」
「私も知らない~チュロス様説明して~。」
どうやら、ミウさんも知らないようだ。少しホッとした。
「二人とも何で知らないんスか?次元振動ってのは…」
「この世界に、異世界からの人や物質が具現化した時に観測される事象ですね」
シアが間髪入れずに説明した。チュロスは口をパクパクさせている。
「そ、その通りッス。15年前に…」
「15年前に魔王様がこの世界に召還された時に観測されたのが最後ですね。」
シアが更に被せた。チュロスは今回もパクパクさせている。
「そうッス。その時はボークステ…」
「ボークステイト大陸の三分の1が覆われる程の反応があったと聞いています。で、チュロス様。今回はどういった反応があったのですか?」
シアさん、もう勘弁してあげて欲しい。チュロスさんが可哀想になってきた。
ミウさんが僕の方を見ながら「この子がこの状態になったら誰も口出し出来ない」と言う目をして首を左右に振っている。
うん。成り行きに任せよう。
「えーとでスね…」
そこまで言って、チュロスはシアの様子をチラッと上目遣いで伺う。無理もないが警戒している。
「今回はでスね。ノースシード大…」
「ゴホンッ!!」
ビクッ!!??
遮るようにシアが咳払いをしてチュロスが固まる。
わざとかこの子…見かけによらずドSなのか?
「の、ノースシード大陸、ボークステイト大陸、シュウジョウ大陸の、魔界を除く三大大陸で観測されたッス。」
「それはつまり、三人の勇者が召還されたと言うことでしょうか?」
シアがチュロスに食い入るように質問する。
僕とミウは完全に他人のフリをしている。頑張れ!!
「い、いや、それは分からないでス。ただ…」
「ただ、なんなのですか?」
気の毒過ぎて見るに耐えない。帰りたくなってきた。
「た、ただ魔王様の時とは違い、反応は小さく数が膨大なのでス。」
「膨大とは?もう少し詳しく説明してもらわないと犬でも理解出来ませんよ。」
すいませんチュロスさん、僕らは空気なのでこちらを見ないでください。力になれなくてすいません。
「か、各大陸に200以上づつの反応があったッス。極めて微弱ッス。これは勇者と言うより普通の人間程の反応だと考えられまス。物だとしても伝説級には程遠い、一般装備だと思いまス。魔王様の時みたいにボークステイト王家が召還したにしては三大大陸に反応があるのもおかしいし、シュウジョウ共和国とノースシード皇国が連携して召還の儀式をするにはボークステイト王家の協力がないと不可能なのでこれも不可思議ッス!!以上ッス」
「なるほど」
シアさーん!!
割り込ませないように一息で言い切ったチュロスさんの努力に対して「なるほど」だけですか…
間違いなくドS だと確信しました。
「それに対しての魔王様の見解を聞かせてください。」
矛先がこちらに向いた!!
良く分からないが正直な感想なのだが、それをそのまま言うと地雷を踏む危険な香りがプンプンするので湾曲して答える。
「そうですね。僕の意見としては情報が少ないので調査の必要があるとは思います。」
「さすがは魔王様です。
その調査は私たち姉妹にまかせてもらえませんか?ミウ姉様も気になりますよね?」
ミウは首をブンブン縦に振っている。
「満場一致ですね。出来れば土地勘のある方に案内してもらった方が調査はしやすいとは思うのですが…
あっ。アーユさん、ちょうど良かった。貴方はノースシード出身でしたね?
一緒に調査に行きませんか?」
満場一致の使い方が違う…
洗い物を終えたアーユが奥から出てきたところにシアが声をかけた。
当然ながら話が見えてないのかアーユはキョトンとした顔をしたあとに「行きません」とだけ短く答えた。
オーイ!!頼むから話を纏めてくれ!!
「何故です?」
シアは短く尋ねた。
嵐の前の静けさを予感して、僕ら三人は各々それぞれ遠くを見ている。
「ライヤ兄さんが結婚しろと煩いので故郷には帰りたくないんです。だって…」
視界の隅でシアが優しく微笑んだように見えた。
「そう。それなら仕方がないです。
では、調査を兼ねて女三人でシュウジョウに温泉旅などどうでしょうか?」
「それなら行きたいです。私、良い宿知ってるんです。
あっ、でもここのバイトが…」
シアがこちらを見ながらニッコリ微笑んでいる。
怖い。
選択の余地はないので微笑み返しながら答える。
「アーユさんはいつも頑張ってくれてますので有給を出します。楽しんできてください。
でも三人とも、調査と言ってもくれぐれも無理ははしないでくださいね。」
その言葉を聞いた瞬間に三人できゃあきゃあ言っている。
久しぶりの旅行ね~。
一応建前は調査ですよ。
何を着ていこうかなあ?
どうする?船旅にする?
それはいいですね。
客船チャーターしちゃう~?
でもそれを国庫から出して貰うのはさすがに…アリかな♪
アリです。調査ですから。
調査だよね~
なんだ、じゃあ宿も一番いいのにしますね。
もちろんよ~。もちろんです。
………。えらいことになってしまった……
お手柔らかにお願いします。
四大大陸の名前の由来について書きます。
ノースシードは北海道を一文字づつ英語にしてます。
北 ノース。海 シー。道 ロード。
全部くっつけてロを外すとノースシードです。
ボークステイトも同じく本州の英語読みをもじりました。
本 book 。州 ステイツ。
合わせてもじってボークステイトです。
シュウジョウは九州の中国語読みです。
九 ジュウ。州 ジョウ。
濁点外しただけのほぼそのままでシュウジョウです。
コクシーンは、ほぼ四国のアナグラムです。
しこく→コクシ→コクシーン
はい。並べ替えて「ーン」をつけただけです。
地図にすると日本とは形が違いますが、特徴はそのままです。
ノースシードは大森林があり広大な面積があります。エルフやドワーフ、妖精族などが住んでいて、妖精族の皇都があります。
ボークステイトには人間族の首都にあたる王都があります。貿易も盛んです。
シュウジョウは6つの国が集まり共和国があります。活火山があり温泉もあります。
コクシーンの八十八天魔は四国の八十八箇所巡りからきてます。僕は香川県在住です。そう、うどん県です。
こんな感じで各地方や県の特色や特長を活かせたらいいなと考えています。