プロローグ3
長いプロローグになってしまい申し訳ありません。
今回で終わりです。
次回からは異世界でのお話になります。
多くの人々が出てくるのでしょう。
それぞれ現在を普通に生きていますが、過去があり、それがあるから今の価値観を持っていて、またその人々が未来で出会ったら、共感したり、反発したり、助け合ったり、あるいは殺しあうのかもしれません。
人は一人では生きていけません。
願わくばこの主人公にも、助け合える友が出来ますように。
邪神アリスが大袈裟な身振りをしながら自意識過剰な笑みを浮かべて目線だけで見渡しながら話を続ける。
めんどくさ。
「分かってもらえたなら続きを話そうかな。
僕は考えたよ。
何故こいつらはチート能力などと言う自然の摂理に反した力を与えられたのだろうか?
何故それも辺境惑星の日本人という一民族ばかりに片寄るのかと。
正直に言うと情けない事に答えは出なかったよ。
だから僕は思考だけで結論を得るのを止めて実践する事にしたんだ。
つまり、まあ勇者として召還させて実験、分解、研究を繰返ししたワケだけどね。
一万人程やったかな。中には総理大臣ってのもいたね。
あんなのが国のトップだって言うんだから噴飯ものだよ。助けてくれたら日本の半分をやる、だって。
今時の魔王でもそんなこと言わないよ。
それに何がムカついたかって、この実験に地球の神が文句をつけて来ちゃってさ。自分はチート卑怯者勇者の管理も出来ないのに、言うことは一人前で。
頭にきたからクビにしたよ。ああ、この場合のクビってのは、首だけにしたって事だから。
ごめんごめん。話が逸れたね。
それで、その実験をもとに、言語、文学、文化、芸術、風習、民族的嗜好、食物、歴史、螺旋情報、更には、肉体エネルギー、精神エネルギー、竜脈、因果 、輪廻、魂波紋、魂波動、まで全てを調べたよ。
ホントやれやれ時間と労力の無駄使いとはこの事だよ。
で、何とか結論は出たんだけど、あまりに酷い結論に僕は頭を抱えたよ。こいつらはアホなんじゃないかと。
キサマら日本人なら知ってると思うけども未来から来た猫型ロボットがダメ人間を更にダメ人間にする話を知ってるよね?
あの中にもしもボックスって便利道具があるんだけど、知ってるかな?
もしもこうなったらいいのにと願うとその通りの世界になる、ご都合主義の極まったクソッタレ道具なんだけど、結論を言うとキサマらはそれなんだよ。
こうなったらいいのにって思いが強すぎて、時空間を超越するときに都合のいいように魂が変質するんだよ。
普通はこんな事はあり得ない。たかが人間の思いが宇宙の法則をねじ曲げるんだからね。
今も何故そんなことが可能なのかは分からない。
分からないけど原因が分かれば対処は簡単だ。変質した魂の情報を元の情報で上書きすればいいだけだからね。
この辺りは神霊工学の話だから説明しないけど、今のキサマらは普通の人間だよ。
やったね。無理矢理付けられた力を外してあげたよ。クスクスクス。」
思いの力が世界を変える。フッ、そんなことが出来るならとっくに透視能力に目覚めてるっつーの。
それが出来ないから今も目を血走らせて必死でなめ回すように観察してるんだろうが。
サッカーボールみたいに蹴っ飛ばすぞコノヤロウ。
「特に質問や反論はないかな?じゃあ本題を進めるよ。
キサマらが送り込まれる異世界は馴染みのあるファンタジー世界だよ。
剣と魔法とドラゴン、それに魔王がいて、人間はもちろん。各種の亜人、獣人、妖精、精霊、聖獣、魔物、魔獣、魔族、魔神などなど、万全のファンタジー世界だよ。
それに大サービスで僕が邪神として見守ってあげるから安心していいよ。
さっきも言ったけどアホでも分かるレベル有りチート無し。それと言語、所持金、装備も無し。完全に1からのスタートだからドッキドキだね。
まあお馴染みと言ってもキサマらが小指で片付けてきた魔物はもちろん、名も無き村人だって甘く見ない方がいいよ。彼らは必死でこの世界を生きてるからね。日々生死の狭間で生き抜く彼らは手強いよ。
チート無しのぬるま湯もやし勇者なんて片手で捻られちゃうから気をつけてね。勇者軍団さま。クスクスクス。
さてと、このまま送り出してもいいんだけど、それじゃあ1ヶ月もたたずに全滅するだろうから面白くもなんともないのでサービスを付けるよ。
キサマらは333人づつに別れてチーム戦をやってもらう。召還組と転生組だよ。
そしてモチベーションを上げるために目標と動機をあげるよ。
目標は、どちらが先に魔王を倒すか。
動機は、先に魔王を倒したチームの生き残り全員を元の異世界にチート能力付きで帰す。
死亡者と負けたチームは生死を問わず全員魂の牢獄である。凍獄界に落とす。
それを約束するよ。
そうそう、勝ったチームで地球に帰りたいヤツは帰してあげる。どっちでも好きな方を選んでいいよ。
ちなみに凍獄界に落ちると輪廻から外れて永久に氷の世界をさまようらしいよ。怖いよね。
まあでも勝てばいいんだよ勝てば。
良かったね。またあの世界に戻れるんだからやる気も起きるでしょ?
それともう一つ、この世界で君たちは自由だよ。
強盗も人殺しもやりたい放題、殺りたい放題だよ。
それこそレベル1からだから弱肉強食を体現してもらおうかなと思ってね。でも返り討ちになると思うけど。クスクスクス。
そしてサービスはこれだけじゃないよ。
自分の甘さに嫌になっちゃうけどキサマらと違って優しいからね。僕は。
その内容を発表するよ?いいかい?一回しか言わないからよく聞いててね。
いくよ?
キサマら勇者がチーム内もしくは敵チームの勇者を殺す事が出来たら1人につき1個スキルが身に付くよ。
あまり先にネタバレしたくはないんだけど、1人殺すと異世界言語のスキルが、2人殺すと鑑定のスキルがつくよ。他の勇者の位置探索スキルなんてのもあるから頑張って殺してよ。
例えば2つスキルを持ってるヤツを倒したら、今持ってるスキルから2段階上のスキルまでが手に入るからね。
崖から落ちたり餓死したりの自死の場合はその場に魔結晶か残るから、それを手に入れた人がスキルを手に入れる事が出来る安心設計だよ。
ちなみに勇者以外の人や魔物に殺されたらその殺した人や魔物にスキルがいっちゃうから。
ドラゴンや魔王が勇者の位置探索スキルなんて手に入れたら大変だよ?キサマらみんな狩られちゃうかもね?
クスクスクス。
だからだよ?
今、素顔を晒されてるアホ共は既にかなりのハンデを背負ってる事になるね。状況も分からずに騒いだ鳥頭な自分を恨んでよ。ね?
召還組は右手の甲にワースト順に番号が。
転生組は左手の甲にワースト順に番号が出るから、それで勇者かどうか見分けてよ。
まあ後の事は頭の中にステータス画面が出るから自分で考えて察してよね。
さてと、内容についての質問や反論は受け付けないから、それ以外に何かあったら聞いていいよ。言葉と意味は吟味してからの方がいいとは思うよ。」
どうしようかな。そろそろ言っちゃおうかな。
あのお調子者のドヤ顔チビッチを黙らせちゃおうかな。
でもそうするとこの絶景ともお別れだしなあ。
勿体ないなあ。もう少し粘ろうかなあ。
なんて考えてたら、別の所から声が上がった。
「邪神さま。よろしいですか?」
「いいよ。手短にね。」
「ありがとうございます。私からは少し不満がありまして…いえ、邪神さまが決められたルールにでは無くてですね。チームによる格差があるのではないかと思いまして。と言うのも私は召還組なのですが、見た目が、あの、そのまま日本人なのです。
それに引き換え転生組は異世界に親が居ますから見た目の上でかなり有利なのではないかと思いまして。
言語習得もコツのようなものが分かってるでしょうし、これでは公平な勝負とは言えないのではと…」
「ああ、説明はしなかったけどそれくらいは目の前で罰を受けてる爪の垢どもを見て察して欲しいんだけど。
全員日本人でしょ?これが全員召還組だと思う?
当然転生組は日本人の姿に戻してるよ。転生する前の肉体を転生した後の今の年にしてここに来てもらってるからね。
言語習得のコツは本人の努力だから何も手を加えない。キサマにもその機会はあったハズだよ。
他には何もないかな?ないならお楽しみの2度目の異世界生活を始めちゃうよ?」
ちっ、さすがに時間切れだ。
この絶景も見納めだが仕方がない。
パーティーはこれからが本番のようだが招待状を持たない部外者は退散するとしようかな。ハッハ。
本来謝罪すべきはあの頭のおかしい小娘の方だが、とりあえず機嫌を損ねるのは愚策だろう。下手に出て、穏便に帰らせてもらうとするか。どうせもう会うこともないから関係ないしな。
「ジャシンさま。1ついいデスか?」棒読みだ。
「ああ、やっとキサマか。流石に最悪の勇者は胆が据わってるなと感心していた所だ。なに?キサマは特別だから少々長くなってもいいよ。」
うお?
罰を受けてる奴らが消えて。いきなりアリスが目の前に来た。いや、オレの方がステージに移動したのか。
後ろを振り向くと広い体育館が一望出来る。急に移動させるんじゃないよ。ビックリするだろうが、まったく。
近くで見るとコイツかなりの美少女だな。
10才くらいか?まつげ長い。目がデカイ。
まあ5年たったらまたおいで。もう会わんけど。
それに、オレを特別扱いするのはアッパレだが、その前の何が最悪の勇者だ。そっちのミスをオレから水に流してやろうってのに、まだそのミスにさえ気付いてないとは。恥知らずもここに極まれりだな。
邪神改め恥神アリスに格下げだ。
まあいい。すぐにそのドヤ顔を青くしてやる。
これでも食らえ!!
「あの~オレは異世界初めてなんですけど。」
「知ってるよ。」
「誰にでも間違いはあります。」
「間違えてないよ。」
「だからそんなに自分を責めちゃダメ。絶対。」
「責められるのはキサマだよ。」
「手違いや人違いで連れて来られた事は気にしません。」
「手違いでも人違いでもないよ。まさしくキサマだよ。」
「だから帰らせてくださ……んの?」
「帰れないよ。」
ちょ、ちょっと。あれ、おかしいな?話が噛み合ってないと言うか、間違いなくオレだと分かって連れてきてるように聞こえたが…
このクソッタレもしかして自分のミスを認めずに開き直るつもりなんじゃないのか??中身はオバハンかキサマ。目ん玉突くぞコラ。
いやいやまてまて、こういう時はキレたらダメってTV で言ってたぞ。落ち着いて1コづつ向こうの間違いを訂正していくのがセオリーだ。
オレなら出来る。オレはやれば出来る子だよ。よし。
「チートなんてやってないんですけど。」
「それはやってないだろうね」
「勇者もやってないんですけど。」
「それもやってないだろうね。」
「何にもやってないんですけど。」
「今はまだ何もやってないね。」
「でしょう?だったら何で…んを?今はまだ?」
「そうだよ。第二級未来神の確定予測で1ヶ月後にキサマは異世界に召還されて、チート勇者になると確定してるんだよ。」
「ちょ、ちょっと待ってください。それじゃあチート勇者とやらになるのが決まってるってだけでこんな奴らの仲間に入れられたと?」
「そういう事になるけど、キサマの場合は少し事情が違うんだ。チート勇者はチート勇者でも空前絶後の最凶最悪のチート勇者になるのが確定してるんだよ。
ダメチート勇者の希望の星なんてもんじゃないよ。コイツらが可愛いく見えるほどのチート勇者界に激震が走るレベルだよ。」
な、な、な、うな~~!! そんなバカな話があるか?
オレはチート勇者なんてやってない。強姦も殺人も虐殺も、ましてやハーレムなんて夢みたいな事は全く体験していないのに、予備軍ってだけでバツゲームに参加させられるってのか?
最悪だよ。
と言うか最凶最悪は目の前のこのクサレ〇〇〇だよ。
オレが何をしたって言うんだ。そんなに悪いことをしたのかよ…いや、まだ何もしてないのか。
「それに勘違いしてるようだけど、キサマはコイツらの仲間じゃないよ。そもそも召還も転生もしてないからチームには入れないよ?
キサマはチーム1人。667人目のスペシャルゲストその1だよ。特別におでこにデッカく1を入れてあげよう。
ヤッタね。クスクスクス。」
~~~~~~~~グフッぶるぷるぷるぷるわふん!!
何?その特別枠の特別待遇。
オレがただ1人の特別な人間だってのは知っていたが。
いらないいらない。そんなのいらない。
「それに、あいつらに罰を与えた時にキサマの姿も全員に見えるようにしておいたからね。箱の大きさはそのままだったから気付かなかった?クスクスクス。
キサマが下半身丸出しで目を血走らせて箱を舐め回しながらハアハアやってるのも良く見てもらえたと思うよ?」
ああ、それは別に構わないです。
なるほど、それで視線を合わせようとしなかったのか。
てことは、あのちっパイを泣かせたのはオレか。
納得しました。落ち着いた。
「何も知らないままじゃ可哀想だから一応説明するよ。
キサマの罪は次元侵攻だよ。
チート能力を完全に逸脱する程の力を得たキサマは異世界のみならず、惑星を蹂躙し続けて更に力を増やし、宇宙を呑み込む程の大軍団を組織して僕のいる高次元にまで攻めこんで来るんだ。
そんな事をする人間がどんな魂を備えているかと思ってたら、やはり想像を上回る異常者だね。
突然こんな所に召還されて、いきなりこんな突拍子もない話を聞かされても、もう平静を取り戻してるね。
異常どころか戦慄するよ。
…
このまま魂ごと絶対凍結させて厳重に封印するのが妥当だとは思う。しかしそれでは第一級次元神の僕が、塵芥に等しいたかが人間に負けたことになってしまうからね。
異世界生活には参加してもらう。
でもキサマはその程度のハンデでは生ぬるいね。
人じゃダメだ。レベル1スライムから始めて、這いずり回って貰おうかな。
それで10人の勇者を殺せたら。好きな時に人の姿に戻れるようにしようか。それ以外の条件は同じだよ。
どうかな?」
どうかな?じゃねーよ!話し長げーよ!何を言ってるかさっぱりだよ!凍結か氷結か知らんけど、その独り言の長さはオマエが異常者だよ!!
つーか、スライムで10人殺すのは無理だろ!!
まあいいや、良くないけど。
どうせオレに選択の自由なんてないだろうし、アイツはオレにビビってると考えよう。
あのニヤニヤ笑ってる顔は絶対オレが命乞いをするのを待ってる顔だ。正直命乞いがしたい。足の指の間をベロベロ舐めてでもスライムは勘弁してほしい。
しかしだ!!
最悪なのは命乞いしたうえに、「ダメだよ。キサマはスライム確定だよ。クスクスクス。」ってなることだ。
いや、たぶん、間違いなくそうなる。あれはそういう顔だ。
この際スライムは許容しよう。しかし見返りとして明るい未来が待っているといつものネガティブポジティブシンキングだ。
…
…
オレはこうやって嫌なことや、やりたくない事から逃げてきた。今までがそうだったんだ、これからもそうする。
OKだ。精神統一完了だよ。
要は考え方だ。ツインテールとちっパイと巨乳を好きにして良いって事だろ?スライム望むところだ。
希望に満ち溢れたところで、とりあえず邪魔はされないように釘だけは刺しておこう。
「条件はそれでいいですけど、確認したいことがあるんですが?」
「全然動じないね。スライムに転生させると聞かされたら普通は泣き叫んで命乞いするんだけど。
普通にスゴいよ。と言うか怖いよ。」
「お褒めにあずかりどうも。まあフツーのニートですけど。
それより確認いいですか?」
「なんだい?」
「邪神さまは見守るだけですよね?まさか自分に都合が悪くなったら手を出したりはしませんよね?」
「挑発してるのかな?」
「ただの確認ですよ。で、どうなんです?」
「しないよ。そんな事をしたら楽しみがなくなるよ」
「しかしそれはただの口約束では?」
「次元神の約束を、ただの口約束と同じにしないでよ。
僕たちは全能ではあるけど、嘘をつく事だけは許可されていないんだよ。」
「もし嘘をついたらどうなるんです?」
「そんなもの虚無神に消されるだけだよ。
神界の常識だから後ろのチート虫勇者達でも知ってるよ」
見た目の通りのガキなら、この安い挑発に乗って来るかと思ったけど。一応は管理職ってやつか。
社会に出たことないから知らんけど。
「そうですか。それとさっき確定予測がどうとかありましたけど、未来の事が分かっても手出しはしないと?」
「うん。その心配はいらないよ。未来の確定予測は業と因果の流れを見極めるのに膨大な力を使うからね。いくら未来神でもあと千年は使えないよ。」
「オレのクリア条件と報酬は?」
「同じだよ。チート能力は付けないけどね。」
「結構結構。ではオレからはもうありません。」
扱い易くてチョロいかと思ったら、ただの管理職にしては余裕があって大物っぽい感じだ。
背伸びして根拠もなく粋がってるだけの子供と言う評価は改めた方がいいか。
くそ。生意気なヤツだ。結構結構ってのを異世界で流行らせてやるからな。おぼえてろよ。
「もう何もないね?では始めようか。
条件は説明した通り、魔王を倒したチームの勝ち。
死亡者と負けたチームは全員凍獄界行き。
1人で生き抜くのもよし。仲間を増やすもよし。
でも心を許しちゃダメだよ。そいつらはいつでもキサマらの命を狙っているよ。クスクスクス。
召還先は異世界アールグロン。さっきの最凶最悪が呼ばれるハズだったところだ。
人も魔物もそこらの異世界とは桁違いの強さの世界だよ。最初は全員バラバラの場所に送るからね。殺されないように探して殺してよ。
それにスペシャルゲストその2もどこかにいるから探してみてよ。何かは秘密のお楽しみだよ。
では弱肉強食の本当の異世界生活を堪能してきてよ。
きっとキサマらなら生き残れると信じてるよ。
だって勇者さまなんだから。クスクスクス。」
話が長げーよ!面白くねーよ!覚えてろよ!!
と、心の中でツッこんだところで足元が光だしてオレは意識を失った。
長いプロローグにお付き合いいただきありがとうございました。
前書きにも書きましたが、次回からメインストーリーの異世界生活になります。
いきなり最終目標の魔王の話をします。
魔界で生きてる魔族達も、人と同じように生きて生活してるのでしょうね。
そんな事を思いながら書きました。
プロローグで止めてしまわず、読んでもらえると嬉しいです。