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魔王?ー2

 

 突然ではあるが一つ説明させて貰おう。

 なんだなんだと思うかもしれないが、まあ聞いてくれ。


 スライムには眼球がない。正確には自分で見るのには目に当たる所があって、それを体のどの部分にも自由に移動する事が出来るのだ。

 

 人間に例えて言うなら後頭部に視点を移動させて後ろを見る事や、足の指先に移動させて地面スレスレの視点で見ることが出来る感じだ。

 ここまではOKかな?


 そして更に重要なのはそれを外部から確認する事が出来ないということだ。これは水溜まりに自分の姿を映して確認済みである。

 その時に「なんだこの気持ちの悪い生物は」と思ったのだが、今、この瞬間はオレはスライムであることに今までで一番感謝している。


 人のままでこの異世界の森に放り出されたら魔物に襲われ死んでいたかもしれない。あるいは毒キノコを食って毒死か、あてもなくさ迷い果てに餓死していたかもしれない。しかし、そんな可能性のためにスライムで良かったーと思うほどオレは安くはないぞ!!


 話が逸れたが重要なのはそこではない。


 つまり何が重要で、スライムの何に感謝しているかと言うとーー人間のように必ず顔に目がある訳でもなく、眼球の動きで視線を読まれる事がないメリットになのだが、それが分かるだろうか?

 え?分からない?別にポーカーに強くなるとかそんな事は言ってないよ。つまりだーー



 * *


 オレは最初こそ久々に怒鳴られて唖然としてしまったが、ひたすらギャアギャアと喚きたてる自称魔王の小人(こびと)美女の姿に、次第に冷静さを取り戻していった。


 物心ついた時から普段は温厚なのにキレると雷鳴のごとく怒り狂う双子の姉貴がそばに居たから馴れているが、反論すると火に油を注ぐ事になるのは間違いない。

 こういう時には黙って話を聞きながら適当に相づちを打てば悪いようには転がらないのだ。たぶん。


 それにオレには視線を読まれないスライムにしか出来ないやることがある。


 <お怒りはごもっとも、スイマセンデシタ>棒読み。

 こいつはめちゃくちゃスタイルいいな。足細い、長い。


「すいませんで済まないわよ!!それにあなたがただのスライムならとっくに消滅させてるところよ!!感謝しなさい!!」


 <アリガトウゴザイマス>棒読み


 まあまあ、借り暮らしさん落ち着きたまえよ。

 ちょっと釣り上がって目付きは悪いが、切れ長の眉に整った目鼻立ち。美女だ。間違いなく美女だ!!


「フーフー。分かればいいのよ。ところであなたは何で異世界人なのにスライムなんてやってるの?」


 落ち着いたのか、頭についた蜘蛛の巣を払い、露草に溜まった水滴で顔や体を洗い出した。メルヘンだなぁ。


 <いろいろアリマシテ>棒読み


 邪神に呼ばれて罰ゲームなんてアホな理由は言える訳がない。

 胸はまあまああるな。下着越しだが、ツンと上向きの形の良さが分かる。分かるぞー!!ハアハア。


「言えないって訳か。まああなたは見破ったみたいだけれど、初対面で幻影(イリュージョン)で脅かすような得体のしれない相手に対して当然の反応ね。あれは度胸を試しただけだだから気にしないで。謝罪しろと言うならするし、信用してもらうためにはこちらから状況を明かすのが筋だから聞いてくれる?」


 <謝罪はイリマセン。聞キマストモ>棒読み


 イリュージョンってなんだっけ?脅かされたか?まさかあの炎の巨人は夢じゃなかったのか……まあ勝手に良いように勘違いしているからそっとしておこう。

 キメの細かい色白の肌、吸い付きそう。いや、吸い付きたい。ハアハア。


「そう。じゃあ謝罪はしないわ。

 実はさっき私は魔王だって言ったけど今は違うのよ。10年前に勇者バーブに卑劣な手段で倒されてしまって、正確には前魔王なの。それにバーブは他の魔族を丸め込んで自分が魔王になってるのよ。

 これが許せる?」


 <許せマセンネ>棒読み


 やっぱり自称か。というか勇者バーブ?前魔王?本当に魔王だったのかーーそして勇者→魔王。なんか凄そうだけど半分も頭に入って来ない。


 スゲエ艶のあるストレートの黒髪ーー額の所と、足下で真っ直ぐ切り揃えてて、純和風美女って感じだな。

 なんか美少女フィギュアマニアの気持ちが今なら分かるわ~。爪とかまつ毛とか細部の拘りが半端ない。当たり前だけど。これからはフィギュアさんと呼ぼう。

 いいねいいねえ~!!ちょっとアングル変えるか。


 それまでフィギュアさんと同じ目線まで体を盛り上げて、そこに視点があったのを、足下まで水溜まりの体を広げた先端に視点を移動する。


「でしょう。それに魔王城の地下で百年の眠りについていた私を霊亀に封印したのもバーブに違いないわ。あのままだと霊体ごと魂も残さず吸収される所だったのよ」


 <ソレハ酷いデスネ>棒読み。


 霊亀って何?とか、何で魔王城の地下で寝てたのに10年たったのが分かるんだ?とか疑問はあるがそれどころじゃない。


 うおお!!このアングル最高!!腕を動かす度に揺れるおっぱいに、太もももクッキリハッキリ見える!!

 でも欲を言うと、もう少し露出が大きいピッタリした下着ならなあ、なんかニットのショーツっぽいし、ブラももっとカワイイ感じで、色も黒じゃなくてーー


「それでこれからが本題なのだけど、あなたの強さを見込んで私を魔王城まで連れていって欲しいの。力の大半は失ってしまっているけど、あなたに目的があれば手伝えるだろうし、この世界の事も教える事も出来るわ。どうかしら?」



 さて、十分堪能したし何処からつっこむかーー仲間が出来るのはありがたい。この世界の知識を教えて貰えるのは助かる。

 それにこの小さいが美女と旅が出来るのは夢みたいだ。

 前魔王が本当だろうが嘘だろうが、最初から戦力に数えなければ問題ない。

 このサイズなら乗せて運ぶ事も可能だろうし、ドサクサであんな事やこんな事もーーグフフーー



 しかし少し考えて、心の中で溜め息をついて、とりあえず今の正直な懸念を伝える事にした。


 <下着は白にならないか?>

 大事な事である。


「は、はぁ?あなたふざけてるのーー」


 <大真面目だ>

 見たところ荷物も無いのですぐには無理だろうが、着替える意思を確認したいのだ。服を着ろとは言わない。


「無理よ。そもそもこれは下着じゃなくて裸に髪を巻いてるだけだもの。魔力で髪を自由に操るのが私の能力ーー」


 <採用!!!! 仲間になれ。いや、なります。ならせてください>

 ス、スゲエ。黒いニット下着じゃなくて髪なのか。斬新過ぎる。斬新エロだ!


「そ、そう?じゃあこれから宜しくーー」


 フィギュアさんはオレの食い付き方に若干引き気味に見えたが、それでも笑顔のまま髪を生き物のように手の形に変えて握手を求めてきた。そこまで自由に動かせるのかーーしかしオレはそこである事を思い付いた。

 

 <ちょっと待った!! さっき言ってた幻影(イリュージョン)って魔法の一種か?>


「?。そうよ。分かってなかったの?」


 <それで下着のーーいや、巻いてる髪の色を変えれないか?待て待て、髪を自由に動かせるならデザインもこんな感じのー>

 オレは頭の中で、白いレースの露出の大きなブラとパンツを思いかべて念話に乗せて送った。


「え、え、え?念話で映像を送るなんて、あなたデタラメなんだけど、どんな精神力をしてるのーーまあいいわ、これに着替えたら仲間になるのね」


 フィギュアさんはそう言うと、小さく「幻影(イリュージョン)」と、唱えた。


 足下から小さな黒い火柱がフィギュアさんを包み込みそれが消え去った後には、オレのイメージ通りの下着を身につけたフィギュアさんが右手を腰に、左手をピースにしてこめかみに添えて「キラッ☆」とか言ってる。


 <採用採用!!!!今から仲間だ。オレはフェイ。あんた名前は?>

 そう言って体を細く伸ばして握手を求める。


「オペラよ。これから宜しくね」


 フィギュアさん改め、オペラもそう言って髪を伸ばしてお互いに握手をーーって、掴んだ瞬間にオレの体は宙に浮かされ「ドッボーン!!ぶべら!!」と川に投げ込まれた。


 <アップアップ!!何しやがる。プハープハーー>

 完全に油断した。オレの体は下流に向かって流れてーー行かない!!? オペラの髪で縛り上げられた上に、岸と繋がれてその場で激流に呑まれ続けている。この髪どんだけ伸びるんだ?それに全然切れそうにない。


 <何って同じ目にあわせてやるって言ったわよね?私はやると言った事は必ずやるわ>


 ちょっ、マジですか!!?なんて性格だーー<助けてくれ~~すいませんでした~~>


 しかし何度呼び掛けてもオペラからは何の返事もなかった。



 * *


 30分後

 気が晴れたのか引き上げられた。


 <ちょっ、お前、やり過ぎだろう。ゼエゼエ>


 流れる事も出来ずに揉まれ続けて死にかけた。

 あと数分引き上げられるのが遅かったら命も弾丸も無くしていたかもしれない。


「少し寝たら疲れも取れたわ。さあ水遊びはここまでにして行きましょう」

 軽く背伸びをして立ち上がる。


 寝てた?オレが死にかけてる間、寝てたのか?


「さあ何をしてるの?」


 何やら急かすように促されてもオレの疲労はまだ回復しない。

 <何がだ?>


「何がだじゃないわよ。もういいわ、自分で乗るから」


 ハァ?と、呆気にとられるオレを尻目に、髪を伸ばして浮き上がり、オレの上に優雅に着地して寝転んだ。


「え?何これ?凄いわ。ひんやり冷たいし、柔らかい。こんなベッド初めて!!」


 ウォーターベッドじゃねーぞと、怒ろうかととも思ったが、人の上でポヨンポヨン跳ねてはしゃいでるオペラを見て怒る気が失せた。

 それにこっちも褒められて悪い気がしないし、ポヨンポヨン揺れ動くオッパイを見て和んだので良しとしよう。

 一応沈まないように表面を少し固くしているから大丈夫か。


 <とりあえずはオレの隠れ家に戻るけど、ゆっくり帰るのと全速で帰るのとどっちがいい?>

 と、聞いてみた。


「そんなの全力に決まってるじゃない。スライムに振り落とされるほど間抜けじゃないわ」


 スライムの表情を読み取れる人がいたら、それを聞いたオレがニヤリと笑ったのが分かっただろう。


 <そうか。それなら安心だ。一応言っておくけど舌を噛まないように気を付けろよ。逝くぜーー>


 オレは降下前のジェットコースターのようにゆっくりと木の上に這い上がり、いきなりゴムの反動で0から一気に加速した。


「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 飛んで、潜って、這って、飛んで、逆さま、伸びて、縮んで、這って、潜って、飛んで、飛んで、伸びて、縮んで、逆さまーー


「ぎゃああああ!!ちょっ、ちょっと、待って、ま、ぎゃああああぁぁぁ!!!!!!ス、ス、ス、ストップーー」


 <えー?何言ってるか聞こえないんだけど?それに言った事は必ずやるんだろ?全力でって言ったよなあ~~>

 少しスピードを落としてそう言ってオペラを見ると、既に青息吐息で髪を使って必死で掴まっている。


「ぐ、そ、それはそうなんだけど、もう少し景色を見るゆとりが欲しーーぎゃああああぁぁ!!!!」


 * *


 2時間後


 グッタリどころか死にそうになっていたので休憩することにした。


 <おい。大丈夫ーーではないな>ニヤニヤ


「ーーお水が欲しいーーなんか景色がグラグラするー早い、恐い、木がグワッて目の前にーーそれに何でスライムがそんなに素早いの?あり得ないーー」


 船酔いならぬスライム酔いか。それに来る時より速いスピードで狭いところを進みまくったからか。ちょっとやり過ぎたな。


 しかたがない。大きめの葉っぱを数枚ちぎって木から下りて葉っぱをお椀のようにして川で水を汲む。


 うーん、次からはゆっくり進むかーーしかしあまりゆっくり過ぎると夜になっちゃうしなあ……どうしたものか。


 おっ!そうだ。


 オレはある事を閃いて、オペラに水を飲ませてやりながら可能だろうかと、頭の中でシュミュレートしてみる。


 それならオレも楽だし、ここまでくれば流れもゆっくりだ。いける。


 30分程休憩して顔色が良くなったオペラに提案する。


 <安心しろ。次からは川を行く。それなら安全だし、大丈夫だろう?>


 オレの意図を計りかねてるのかキョトンとしているオペラを連れて川岸まで行く。


 そこで水溜まりだった体をいったん長方形にして、片方の先を細く尖らせ斜めにして、内部はお椀形にして二重底で空気を取り込み、一番底に弾丸を置いて重りにして安定を図る。全長50センチ、全高20センチのある乗り物が出来た。


 そう。船だ。

 何せ船全体がオレの体だし少々ぶつかっても傷一つつかない。舵だって自由自在だ。

 いざとなればオペラの髪で操船してもらえばいい。


 <さあ乗れ>


「もう乗ってるわ」


 言われる前に既に乗っていたオペラは前方を見渡して楽しそうに笑っている。

 さっきまで青い顔をしていたのに、ホンとに良い性格してやがる。



 そしてオレ達は下流に向かって進みだした。





魔王?ー2をお届けします。


魔王ではなくて前魔王でした。


小さいです。


十六分の1美少女フィギュアくらいの大きさです。


フィギュアは詳しくないのでそんな大きさがあるのかも分からないのですが。


本文でも書きましたが10センチくらいです。


美女です。


裸に髪を巻いて下着変わりにしています。


完全に作者の妄想の産物です。


すいません。


ところでとうとうフェイが会話しました。


プロローグで邪神と会話して以来、10万字近く書いてやっとです。


こんなに独り言だけで進行した主人公も珍しいのではないかと思います。


まあいいか。


とにかく仲間も出来てストーリーも進みだしました。


と言ってもまだ最初の森から出てませんけどね。


まあいいか。良くないか。


すいません。


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