大鬼弾
またもや更新が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
仕事が忙しくて連日書いてる途中で寝落ちしてしまいました。
目標だった2万PV 達成です。多くの方々に読んで貰えて有り難うございます(^-^)/
次は10万PV を目標に頑張りますのでこれからも宜しくお願いします。
大人になってから獲物を狩る武器を作る機会なんて普通はない。現代日本にフツーに住んでいたらまずあり得ない。
そりゃ猪や熊を狩ったり、鳥射ちをする猟師や猟友会のオッサン達なら猟銃の一つも持ってはいるだろう。もしくはモデルガンを改造して実弾を発射出来るようにするマニアックなヤツもいるかもしれない。
しかし素材から武器を作るとなると刀鍛冶か包丁職人くらいしか居ないのではないだろうか?
まあそれでも実際に制作したそれを使って狩りに行くとなるとちょっと簡単には見つからないのではなかろうか。
しかし剣と魔法と魔物の存在する異世界ならごく当たり前にそんな人たちも存在するだろう。
魔物の骨から槍を。鋼より堅い鱗から鎧を。魔力を帯びた金属から剣を打ち出すとかもあるかもしれない。
日々命の危険に晒される環境であるなら、肉体的に弱き人間が身を守るために武器を手に取るのは当たり前だからだ。
とは言っても、武器を作り出すと言うことが人の手にだけ許された特権とは言えない。
何故ならここに、多くの人が最弱の魔物と認識するスライムが、自分で倒して手に入れた魔物の素材から武器を作り出そうとしているのだから。
* * *
アダシュの森下流
大鬼から角を切り出してから三日がたった。
あの後オレは森の結界沿いに探索するのをいったん止めて隠れ家に戻ってきた。
隠れ家といっても川沿いにある大きめの枯れかけた大木に空けられたキツツキの巣穴を勝手に使ってるだけなのだが、入り口は一つだけに見せ掛けて、幹に出来た細い空洞を通って根本への脱出経路も確保してあるツリーハウス隠れ家である。
幹には3つ程の巣穴が空けられており、上から、寝る時用の「寝室」、弾丸や森で集めた各種の石や魔物の爪や牙を集めた「保管庫」、木の実やキノコ、魔物の肉を集めた「食料庫」という感じで作られており、正しく隠れ家なのである。
オレは保管庫に閉じ籠り三日かけて大鬼の角をひたすら加工している。
子供の頃から熱中すると時間を忘れて没頭するタイプではあったが、完成直前に飽きてしまう悪い癖は今は顔を出さない。腕のないロボットや翼のない飛行機等のプラモデルを作らせたらオレ右に出るヤツはいなかった。
自慢じゃないが飽きっぽいだけだ。フウ~
それはさておき、やはり大鬼の角の硬度はかなりのものであり、思った以上に難しかった。
先ず最初に底面の中心に三センチ程の穴を空けて内部の空洞まで通そうとしたのだが、二個開けるのに一日かかってしまった。
本当は三本とも開けたかったのだが時間がかかり過ぎたので三本目はまた時間がある時にやろうと大きな二本に穴を開けた所で次の工程に移る。
次に底面に開けた穴から体の一部を侵入させて内部の空洞を拡げる作業に入ったのだが、これまた酷く苦労した。
角は先端にいくほど硬度が増しているようで、二センチ四方の空洞を先端に向かって四センチ程まで拡げるのに更に一日以上は使ってしまっただろう。
全身を使っての溶解ならばここまでは苦労しなかったとは思うのだが、内部を加工する目視出来ない状態で、文字通り手探りだったのも時間がかかった要因の一つだ。
穴は開いた。
そして拡げた。
別にイヤらしい意味は無いので気にしないように。
この段階で一度回転させてみた。
体内に浮かべて横方向に何度も弾いて徐々に速度を上げていく。回転体はバランスが崩れているとエネルギーをロスしてしまうのは弾丸制作の時に嫌と言うほど味わった。
真っ直ぐ飛ばずに着弾時に横弾になってしまっては貫通力が大幅に下がってしまうのだ。
シュルシュルという音が、甲高い音域に変わる頃、先端が小刻みに揺れてきた。思った通り内部の空洞が少し中心から片寄っているようで、高速回転させると軸がぶれて安定しない。
納得がいくまで修正と回転実験を繰り返す。
作務柄を着た刀鍛冶が一心不乱にひたすら薄暗い工房で刀を磨ぎ続けているならば絵にもなろうものだが、こっちは緑の液体生物がとんがりコーンを舐めてるようにしか見えないのだからどうにも締まらない。
見せ物じゃねーぞコノヤロウ!!
しかしなんだか子供の頃に兄貴と一緒に家にあった廃材で木刀やヌンチャックを作った事を思い出して少ししんみりした。
最後に兄貴と話をしたのは姉貴の葬式の時だから3年はたったか?まさか弟が異世界でスライムになっているとは思うまい。まあこの異世界から戻る事が出来たら会いにいってやらんこともないこともない。
う~ん、一休みするか。
第二工程が修了して回転が安定した所で久々に外に出る。
首があったらゴキゴキ鳴らして全身で伸びをするところだが、肩こりになる肩も無いのでどうこうしない。
どうやら気付かない内に雨が降ったようで、葉っぱや地面が濡れている。どんだけ集中してたんだか。
木々に覆われた天を見上げてみると、うっすらと緑で生い茂った隙間からキラキラ輝く陽光が見えるようなので現在の天気は晴れ。時間は昼頃か?
作業中は保管庫のキノコを適当に食っていたので腹は減っていないが、大鬼の角の試射を兼ねて獲物を狩りたい所ではある。
音や匂い、それに気配を伺って魔物を探したが、どうやら周囲には居ないようだ。
周囲を獲物を探しに行く時間と早く試射をしたい気分を秤にかけた結界、近くの木で試射をすることに決めた。
何かに夢中になると、それ以外の事をするのが面倒になる。そんな感覚分かるよね?
オレは隠れ家の大木から降りて、少し離れた木の幹に狙いをつける。紫毒弾と違って重量があるので、真っ直ぐ飛ばす事とスピードを重視して回転は少な目にする。
発射してみて自分の目を疑った。
そうは言っても試射なので軽めに撃ったにも関わらず、大鬼の弾丸は蒼白い光を放ち、地面の落ち葉を巻き込みながら直進して、「ガガガン」と、凄まじい轟音をたててあっさり幹を貫通してしまった。
慌てて近寄り貫通した穴を覗きこむと、堅い木の幹がささくれる事もなく、ドリルで空けられたような綺麗な穴が開いて、ちくわみたいに向こうの景色が見えてしまった。焦げた臭いと摩擦からか立ち上る煙に冷や汗が出る。
興奮を抑え切れずに探しに行くと、大鬼の弾丸は三本目の幹をほぼ貫通した所で止まっていた。
ヤバイ…これはヤバすぎるぜえ!!
えらいこっちゃ、こいつは凄まじい威力だ。まだ全然本気で撃ってないし、更なる工夫もある未完成なのに…
オレの頭上にはあることが思い付いたと言うか、あの地上最強のパパスの名前を思い出して、古い漫画の表現のように電球がピコンとついた。
よし!これは大鬼弾と名付けよう。
もうこれは武器と言うより兵器ですなあ~。
予想以上の威力と、ナイスなネーミングに気を良くしたオレは、10回程試射をしてから隠れ家に戻った。
そして最後の工程を終わらせるのと、それを試射するのに半日をかけて、大鬼弾は完成したのである。
この新兵器をひっさげて明日は早朝からヤツを狩りに行く。
そしてオレは三日間の疲れを癒すべく、泥のような深い眠りについた。
スライム式弾丸制作のお話です。
大鬼の角という素材を得て、とんでもない威力の飛び道具を手に入れました。
普通なら素材をギルドや武器屋に持ち込んで制作してもらうのでしょうが、なんせスライムですからそんな依頼は出来ません。
というか森から出てませんね。
というか主人公なのに異世界に来てから全く誰とも会話してませんね。
というか発声器官が無いので喋れないみたいです。
喋れないから魔法の詠唱も出来ないのか?
大丈夫か主人公?
というわけで普通に戦うと最弱モンスターですからイロイロ工夫をしないといけませんね。
で、出来たのがスライム射撃術です。
液体生物ですが、物を掴めますし、液体なのに痛覚がある物理攻撃有効なので、自切を使わないと、自分の体を切り離す事は出来ません。
全身が脳であり、神経であり、筋肉である液体生物です。
切れないという事は作中でも語られてますが、つまり伸びます。ゴムのように伸びます。
悪魔の実は食べてませんが、スライムなので伸びる事もあるでしょうよ。くらいでお願いします。
次回くらいからそろそろ物語が大きく転がりだします。
これからも宜しくお願いいたします。




