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ダークエルフの尾行

 * * *


 どこかの森 下流 早朝



 フハハ!!

 いやあ、勝った勝った快勝でした。

 脳も無いのに脳内麻薬がドッパドッパ!

 好敵手との命懸けの戦いを終えたことにより、う~ん、なんというか、戦士?

 そう、戦士です。戦士になりました。

 一回りも二回りも大きくなってしまいました。

 回復もしましたし。精神的にも絶好調です。

 ありがとう。ありがとう。

 応援ありがとうございます。

 夢を叶えるため、今後も頑張りまっす!!



 …………さて、下りるか。


 回復して一息ついたが少し安全圏に戻っただけで、依然オレがレベル1スライムであることに変わりはない。


 強くならないと


 それには自分で研究するより手っ取り早く先輩に教えてもらおうと思う。

 そう、さっきの赤いスライムか紫色のスライムを観察してスライム技術を盗むのだ。

 オレはまだまだ生まれて数日の新米スライム戦士でしかない。スライムの事はスライムに聞けだ。


 我ながらなかなかのアイデアだと思い、木から降りようとしたら、何やら向こうからザッザッという足音が聞こえてきたので逆に登って身を隠す。


 川の下流から三人の人影が近づいて来るのが見えた。


 慌てずに葉っぱの影に隠れて緑の体を同化させる。

 自慢ではないが、この数日で逃げるのと隠れるのは上達したのだ。


 三人はオレが隠れている木の真下まで来て、あのカブトムシを拾い上げた。真ん中のヤツが上を見上げてオレと目があったが、たまたまだろう。


 すぐに向き直り話を始めた。


 周囲を油断なく伺いながら、慌てた風に話しているところを見ると、何かを探しに来たって感じか?

 まあ何を言っているのかはサッパリ分からんけど。


 オレの日本語しかないライブラリーでは、異世界言語って事しか分からない。

 英語でもフランス語でもなく、何となく中東系の、ターバンを巻いた砂漠の民族が使いそうな響きである。

 そんな所は行った事はないし、同然喋れないけどね。

 イメージだ、イメージ。アッサラーム。


 三人の内、二人は男で一人は女だ。

 男二人は20代半ば、女は女子高生くらいってところか。

 

 各自、物騒な事に、細身の剣を装備している。切る事も出来るが、突くの特化したレイピアってヤツだな。漫画で見たことがある。 あんなのに突かれたら…危ないよね。


 全員褐色の肌をしていて銀髪だが、微妙に全員色が違う。真ん中の長い艶のある銀髪のガッチリしたヤツがリーダーか?

 隣の男がへこへこして、何となく腰が低いような気がする。

 女の方は…フムフム、フムフム、フムフム…

 …

 …

 どストライクだぜえ!!


 細身の体に少し控えめなおっぱい。控えめなおっぱいに細身の体がスゴく映える。

 服装も、装飾の少ない緑系の色の質素な服を着ているが、ヒザ上までのスカートで褐色の生足が見えている。オイオイ。

 気の強そうなつり目に褐色の肌に控えめなおっぱいに、尖った耳…いいな!スゴいな!スゴいな!!


 ん?待てよ。尖った耳?

 あれだ。なんだっけ?よくファンタジーに出てくる。

 寿命が長い…有名な…エロ、エム、エフ、エル、エロ、エロ、エロ…

 …

 う~ん、と、考えていたら会話の中に「エルフ」という単語が聞き取れた。


 そうだ!!それそれ、エルフだ。それも褐色だからダークエルフだな。ハアハア。

 マジか?ハアハア。

 オレは自分の目で見た事しか信じないが、これはさすがに目を疑った。

 ダークエルフのJKか?すげえ。いやJK かどうかは知らんけど。ハアハア。

 すげえすげえ。すげえよ異世界。もしかして、ネコ耳や、犬耳や、リアルメイドや、エロい服着た精気を吸い取る何とかってのもいるのか?ハアハア。 


 オレが木の上でハアハア言ってるうちに三人はそれぞれの三手に別れて移動し始めた。

 リーダーはそのまま木の下で腕組みをしている。、もう一人の男は川から離れて森の奥ヘ、JK は川上ヘ。


 オレは興奮してる時の方が頭の回転が早くなる。

 素早く計算する。


 川下にはおそらくエルフの集落がある。リーダーは二人が行くのを見届けた後に、そこに帰って情報を待つとみた。

 そしてもう一人の男とJK が何かを探しに行くのだろう。

 二人とも細剣の柄に手をかけて、若干身を低くして足音を立てないように慎重に、そして気を配りながら早足で駆けているので、たぶん人だろうか? 


 リーダーの後をつけて、エルフの集落を確認するのもアリだが、どうせ川沿いだろう。生活するのに水は必要不可欠だからな。

 オレは迷わずJK の後を追う。この三択なら誰だってそうする。よね?


 しかしリーダーは動かない。早く行けよ、コノヤロウ。

 木から降りると見つかるので、こうなったら枝を伝って追うしかない。急がないと見失う。


 汗をかいたから水浴びしていこう。とか、

汚れちゃったから水浴びしていこう。とか、

何か急に全裸になりたい気分。とか。

 ムフフな展開があるかも知れない。いやあるはずだ。

 その隙に服を全て溶かす。さてその後どうなる?ムフフ。


 体を細く伸ばして隣の木の枝を掴み、直ぐに縮めて、素早く隣の木の枝を掴む要領で、獲物を狙う蛇のように木から降りずに上から後をつける。


 崖での修行がこんな時に役にたつとは。

 人間必要に迫られると、何でもやれるのだよ。

 自分でもビックリだ。


 しかもドンドン熟練していくのが自分でも分かる。

 最初は縮めるたびにサワサワ揺れていた枝も、ものの数分で体の重さを分散させて小枝も揺らさないようになった。


 更には、伸ばして掴んでいる部分を軸に、ゴムのように素早く縮めて、その縮む反動を利用して、また細く伸ばして遠くの枝を掴むという技まで身に付けた。


 早い早い。もしかしなくても地面を這うより断然早い。 これなら見失う事は無さそうだ。


 と言うか、縮んだゴムの反動を利用するのも慣れてきて、ドンドン速度が上がっている。


 このゴムの動きを使って、一つ思い付いた事があるのだが、さすがにそんなリスキーな事を、ぶっつけ本番でやる状況ではない。 まあそのうち練習しよう。


 JK はオレの斜め前方を川上に向かってドンドン進んでいるが、やはりキョロキョロしながら周囲の警戒は怠らない。


 おお!前方に二匹のスライムがいる。

 両方緑だ。オレよりかなり大きい。


 このままならすぐに遭遇する。


 どう戦うのか。あるいは逃げるのか。スライムが人間相手にどう戦うのか参考になるかもしれない。

 オレはそう思い、少し移動を早めて観戦するのに一番良さそうな所で待つ。

 念のため二匹のスライムから15メートルは離れている


 JKはも気付いているはずだが、全く速度を落とさずに何かを言ったかと思ったら、右手を軽く前に突き出す 。

 その瞬間、手のひらからスライムに向けて吹雪が吹き出し、二匹はカチンコチンに凍ってしまった。

 そしてすれ違い様にレイピアで一突き、二突き。

 スライム二匹に亀裂が入ったのが見えた時には粉々に砕けちって、そのまま溶けるように消えてしまった。


 …

 ……

 ………

 え?

 ええ?

 えええ!!?


 今ので終わり?…呆気なさ過ぎる。スライム弱ええ。


 て言うか今の魔法DETH か?


 あの~、なんというか普通におっかない。

 凍らせて一突きですよ?そんなアホな…

 ムフフな展開どころじゃない。見つかった瞬間あの世に送られてしまう。


 そこでビビってしまって身を硬くしたのが失敗だった。

 オレは掴んでいた枝をツルっと離してしまい、まっ逆さまに落ちてしまった。

 

 ドサっ。


 下に大量の落ち葉があったのでダメージは無いが、結構デカイ音がしてしまった。気付かれたか?


 JK がゆっくり近づいて来る。ヤバイ!!

 あと10メートル。


 どうする?木の上に逃げるところを魔法で狙い打ちされたら目も当てられん。川に飛び込むには距離がある。

 こうなったら落ち葉の下を掘って逃げるしかない。


 あと8メートル。全然間に合いそうにない。


 ヤバイ、死ぬ、ヤバイヤバイ!!と焦ったオレは、アレで逃げるしかないと両手で木の幹を掴み力を込める。


 あと5メートル。やるしかない。と、いこうとした瞬間、JK のすぐ横の落ち葉がカバッと膨れ上がり、JK に覆い被さった。


 オレは何事が起きたのか分からず唖然としたが、舞い飛ぶ落ち葉が全て地面に落ちた時に全てが理解出来た。


 そこにはJK の両腕を後ろから足で抱え込んで細剣を使えなくして、首に太い腕を回してチョークスリーパーを決めている顔に傷があるオッサンが居た。


 窪みに隠れて落ち葉を乗せて、息を潜めて隠れていたのだ。

 短い黒髪で、あのグレーの作業着を着ている。右手の甲に数字らしきものが見えた。

 間違いない勇者の一人だ。

 

 二人は倒れ込んでいて、JK は苦しそうにしながら暴れているが、両手をガッチリ押さえ込まれているので何も出来ない。オッサンの方が二回りはデカイので体重差も相当あるはずだ。

 昔流行った格闘技の番組で見た事があるが、この体勢になったら、ほとんどレフリーが止めていたのを覚えている。


「小娘が暴れても無駄だ。この裸締めが決まったら呪文も唱えられないだろうが。」


 オッサンがそう言う。日本語だ。

 何か見た事がある気はしたが、たぶんあの晒されていたオッサンだ。

 なんだなんだ?唱えないと魔法は使えないのか?


 そう考え終わるか終わらないかの少しの間の、いくらもしないうちにJK が動かなくなった。

 殺したのか?

 オレは獲物を奪われた気持ちが半分と、オッサンにビビる気持ちが半分である。

 だって、魔法で簡単にスライム二匹を葬ったJK を、アッサリ倒すオッサンにビビらない訳がない。


「殺すのは楽しんだ後だ」 


 オッサンはそう言うと、JK から奪ったレイピアを自分の真横に置いてから スカートを脱がせてそれを引きちぎり、その布で後ろ手に拘束しているようだ。

 更に何かを脱がせて猿ぐつわをしている。

 下着か?下着で猿ぐつわをしたのか?


 オレからは仰向けのJK の頭頂部と、オッサンの正面しか見えない。

 オッサンは自分のズボンを下ろして大口を開けて、ハアハア言っている。


 どうする?


 いや、どうするもこうするも無い。


 オレにJK を助けるなんて気持ちはさらさら無い。

 これも弱肉強食の範囲内のありふれた光景なのだろう。こんな大人の階段を登る事も同然ある。


 しかし、獲物を奪われた気持ちと、この体勢ならオレが強者でオッサンが弱者だろうがと考えて、込めていた力を、予定であった上方向では無く、前方に見えるオッサンの開いた口を目掛けて解放する。


 ビュンッ!! スパン!! ごくん…


 オレは両手で幹を掴み、静止したまま、さながら全身を

圧縮したゴムのように限界まで収縮させて、巨大なデコピンを打つように一気に解放したのだ。


 オッサンまでは5メートしかない。少々ずれても顔には当たるだろうとの思惑はあったが、ぶっつけ本番にしては、狙い通り口に入り、そのまま体内に侵入した。


 そこからは簡単だ。胃までは降りずに気道を塞ぎ、なおかつ内圧を高めて全力で溶かす。

 溶解レベル2になったからかは分からないが、すぐに赤い液体が渦を巻くのが見えた。


 オッサンは息が出来ずに暴れているのだろう。

 ぐうぐう言ってるのが近くで聞こえ、上下左右がひっきりなしに入れ替わるのが分かる。

 しかしオレは容赦をしない。


 動かなくなった。今回も念のため60秒をゆっくり数える。


 しかし20を数えた時に、頭に直接声が聞こえた。

 あの時の名前を聞いてきた事務的な女の声だ。


〈勇者を一人倒しました。スキル異世界言語を覚えました。〉


 そう言えばそんな設定だったな。

 言葉が分かるようになったのはありがたい。

 オレは話せないので会話は無理だろうが、聞き取れるだけでも一歩前進だな。


 オレは口の中から這い出し、オッサンを見る。


 フッ、呆気ないもんだ。


 魔物には勝てる気がしないが、人間相手なら簡単に弱点をつける。なんたってオレは人間の知能をもったスライムだからな。


 とりあえず確認するか。メニューオープン。


 フェイ レベル5 種族=スライム

 体積 1464ml

 装備なし

 魔法なし

 スキル 異世界言語

 特技  溶解レベル3

     自切レベル1


 おわっ!!強くなっとる。


 体積もかなり増えてるし、確かにスキル異世界言語も覚えている。溶解もレベル3にパワーアップた。


 オッサンかなりの強敵だったのか?


 まあいい。今、喜ぶべきは溶解がレベルアップしたことだ。 フハハ、着実に溶解博士へのビクトリーロードを歩んでいるな。オレは。結構結構。



 スー、ハー。とりあえずやるか。


 一回心の中で深呼吸をして、そう考えながらオレはJK の胸の辺りの服を溶かし出した。

 

 




 





ダークエルフ出ました。


このダークエルフのリーダーと、魔王サイドで出てきたアルバイトのアユ、そしてJK は兄妹妹という関係です。


しっかし、ダークエルフですかあ…


こんなに心をくすぐる単語ってありますかね?


街中で誰かが大声で「ダークエルフ」って叫んだら、確実に振り向く自信があります、


まあ、「初音ミク」でも振り向くと思いますし、


「戦場ヶ原 ひたぎ」でも振り向くかもしれません。


と言うか、誰かが街中で大声で叫んだら、だいたい振り向きます。

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