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プロローグ1

最悪の主人公ですが、異世界で揉まれて更正するかもしれません。いや、しないかもしれません。


性格のモデルは僕がハタチ前後の若造だった頃です。


過去の自分に忠告してやりたいとも思いますし、でもそんな事をしても過去からは逃げれませんし、それがあるから今があるとも思いますし、まあつける薬はありません。


頑張って書きますので宜しくお願いします。


「何だここは?」



 オレはポツリとそう呟き回りを見渡して見る。


 辺りは薄暗く、天井のオレンジ色に発光するライトだけが辺りをぼんやり照らしている。今どき白熱電球かよ。見上げながらそう思ったが、この空間はあれに似ているな。

 もう高校を卒業して2年はたっているから何となくしか思い出せないが、大きめの体育館くらいだろうか?

 非常口の表示や、入り口らしき扉も見当たらないので体育館の前なのか後ろなのかも分からないが、隅に立っているので少し首を動かすだけで全体が見渡せる。


 広い空間にはオレ以外の誰も居なさそうだし、床にも何も置かれていない。


 ん?体育館にしてはフローリングじゃないな。

 足から伝わる感触が体育館特有の板の感じがしないし、ヒンヤリとした硬い冷たい感じは石のようだ。

 その場で足踏みしてもペタペタという音しかしない。


 気づくのが遅れたが靴を履かずに裸足だ。足から腰、腰から胸、胸から両腕と視線を動かして見ると、着ている服もさっきまで着ていたトレーナーではなくなっている。

 色はグレーで、胸の所にポケットが2つ付いていて厚手のナイロン素材だ。これは前にTVで見た事がある刑務所の作業着に似ているような。

 いつの間にか着替えさせられていて、更に知らない場所に連れて来られている。


 確かにさっきまでベッドに横になって普通にTVを見ていたはずだ。

 総理が行方不明になって2カ月が経ちますか、失踪者の数が急増しています。とかのニュースを見た後に、そろそろ録画した深夜アニメを見ようとして手を伸ばしたら急に床が光だして…


 ワケが分からなさ過ぎて軽くパニックになりそうだった

が、こういう理解出来ない状況に遭遇したら、まずは目の

前の現実を受け入れろ。そして現状を把握して越えられる壁を冷静に選別し、出来る事だけをこなす事に集中して、生き残ることを第一に考えろ。

 と、とある漫画に書いてあったのを思い出して少し落ち着いた。


 まずは現状把握だな。とりあえずこの建物が何なのか調べるか。

 そう思い一歩踏み出そうとしていきなり壁にぶち当たった。


「見えないけど壁があるんですけど」


 踏み出そうとした所で文字通りの壁に鼻をしたたかにぶつけてしまった。

 隅々まで触って確認してみたが四方の前後左右に1M、上の天井方向に2Mくらいの見えない壁があるのだ。

 厚いガラスか、アクリルで出来ているのだろう。

 押してもダメなので軽く殴ってみたがビクともしない。体当たりしてみても全く動く感じがしない。拳と肩が痛くなっただけだ。


 体育館を調べるどころじゃない。完全にこの狭い空間に閉じ込められている。

 さっきから呼吸は出来ているので空気穴は空いてるハズだが、今度こそパニックを起こしかけているオレにそんな判断力は欠片も残っていなかった。


 不思議なもので壁があると分かると急に息苦しく感じてきた。もう我慢が出来ないとばかりに助けを求める。

 まだ壁があると分かってから30秒くらいしか経ってないけどね。ゆとり世代は堪え性がないのだ。


「誰かいませんか!!助けてください!!」

「閉じ込められているんです!!」

「おーい!!誰かー!!」

「漏れそうなんですけど~!」

「ちょっ、マジ、ヤバい。トイレ貸してください」

「大きい方なんですけど~!!」

「助けろって!!」

「マジふざけんなよ!!出せって!!」

「出さないとぶっ殺す!!」


 高度な駆け引きも使ったが反応はない。

 そしてどんどんガラが悪くなっているが、こっちは必死なので仕方がない。

 別にヤンキーとかでは無いですよ。

 フツーの実家暮らしのニートです。


「チクショウ!!出せバカヤロウ!!」

「オレをこんな目にあわせやがって!!」

「ふざけんじゃねえぞ!!」


 オレは体当たりを繰り返しながら悪態をつくが助けは来ないし壁も微動だにしない。

 あれだけ呼んでも館内はシーンと静まりかえったままで、汗だくになってふうふう言ってる自分の声しか聞こえない。


 コリャダメだ。と、諦めかけたその時にパッと周囲が明るくなった。

 暗闇に慣れた目にはその光は眩しすぎたが、徐々に目が慣れてきた。


 白い壁、白い床。館内の一番奥にステージがあるがそれも白い。真っ白だ。


 明るくなって見渡せるようになったのは良いが、閉じ込められている状況に変わりはない。

 触ってみるとやはり壁は存在していて、ガラスやアクリルにしては自分の姿が全く写ってないのも変だ。


 仕方がないので、壁や床を観察しようと見渡してみて気づいたのだが、石とかタイルにしては継ぎ目が全く無い。

 病院などでよく見る長尺シートなどの床材にしても継ぎ目くらいはあるだろう。それが全く無いのだ。

 それにこの光も、ライトらしきものは見当たらず、天井全体が光ってるような…


「あれ?人か?女の子…か?」


 見上げるのを止めて前に視線を戻すと館内奥のステージ上に、さっきまで居なかった人影が見える。

 遠目にハッキリとは分からないが不思議の国のアリスらしきコスプレをした女の子がいるのだ。


 最初から居たか?何だあの格好は?親の顔が見てみたい。

 いやホントは見たくない。

 どうせヤンキー崩れのママか、頭のおかしいパパスだろう。


 そんな事は今はまあいい、あの子に話を聞けば少しは状況が分かるだろう。もしかしたら助けを呼んで来てくれるかもしれない。

 そう思い、声を掛けようしたら向こうから話しかけてきた。



「ようこそチート勇者諸君。

 僕はこの次元を統べる第一級次元神だよ。

 アホなキサマらでも分かるように簡単に言い換えると邪神だよ。

 キサマらは僕に召還されてここに来た。何故召還されたかは自分の胸に聞いてごらん?クスクスクス」



 ハア?チート勇者?次元神?邪神?召還?意味が分からん。子供のくせに漫画の読み過ぎだ。アホな事を言ってる暇があるなら勉強しろ。


 それにそんな説明で何が分かるんだ?子供の戯れ言にマジで怒っても仕方がないのだが、あの甲高い声にはイラッとくる。

 それにそもそもアホはオレじゃない。あの小娘がアホなのだ。たぶん頭が弱いのだろう。


 ああいう調子に乗った子供は親のしつけがなってないと相場が決まっているのだが、頭のおかしいパパスを責めても時間の無駄だ。


 オレみたいな立派な大人になるためには回りの努力も必要だろう。

 一つオレが世間の厳しさを教えてやらねば。

 そう思い怒鳴ろうとしたが、先に斜め前の何も無い空間から声が上がった。


「何してくれとんじゃこのガキが!!焼き付くされたくなかったらここから出さんかい!!」


 その言葉を皮切りに他の場所からも怒鳴り声が次々に聞こえてくる。

 しかしなんだこの声は?ヘリウムだかメタンを吸ったみたいと言うか、プライバシー保護のため音声は変えておりますと言うか、聞いてるこっちがむず痒くなってきた。


「おう!ワシを勇者だと知ってて閉じ込めるとはいい度胸だ。ブッた切ってやるからこっちに来い!」

「あんた私の攻撃魔法の射程内よ?一回死んどく?」

「もう遅いからな、お前死亡確定。光よ、我に集いて…ってアレ?」

「魔法が使えない…勇者固有スキルもだ」

「ΖΚΔΞΣΦΨ……マジか…何でだ?」

「私もよ!オメガデインならあんな小娘は塵も残らないのに」

「クソ!!何でだ?ア・ズール・マナ・ケスタ…やっぱりダメだ」

「ガキが!何しやがった?!装備も返しやがれ!!」


 所々から悪態や怒鳴り声が聞こえる。


 そして何だこいつら重度の中二病か?自分の事を勇者とか言ってるし。それに呪文のようなものをそれぞれ唱えている。

 こいつらも漫画の読みすぎだ。いい大人がみっともないんだよ。魔法、魔法ってうるさい。それに装備を返せって何だよ。装備って。


 こんな大人がいっぱいいるから社会に出たく無くなるんだよなあ。


 恥を知り己を知れば一見にしかずだぞ。


 オレを見習っておとなしくしろ。状況も分からずに大声を上げて場を混乱させるなど愚鈍にも程がある。

 てかどこから声がするんだ?スピーカーは見当たらない

し、ヘリウム声が耳障り過ぎる。


 その瞬間、何も無かった目の前の空間にパッと30人くらいの人間が現れた。


 おっさんや、オレと同じくらいの年の奴、40過ぎのオバサン。25才前後の胸のでっかいお姉さん。いいんじゃないですか。


 それに高校生や中学生くらい若い男女。


 おっ、あの子は可愛いなあ。女子高生かなぁ。ツインテールがよく似合ってる。お兄ちゃんとか呼んで欲しい。


 おっ、あの子も可愛い。中学生くらいかな。発展途上の胸が何とも奥ゆかしいですぞ。

 別にロリコンじゃ無いですよ。フツーです。フツー。

 彼女がハタチになったらオレは25才。ほらね?


 全員同じグレーの作業着を着ていて、何故かオレを取り囲むように揃ってこっちを向いている。声は聞こえるが、さっきまでのヘリウム声じゃなくて地声になってる。


 いったいどうなってるんだ?


 オレと同じように閉じ込められているようだが、暴れる姿を見る限りケースの横幅が狭くなっているのだ。

 さっきまではもう少し動けていたのに今は直立不動の体勢で焦っているのが分かる。


 オレのは1Mはあるのに、今のこいつらはどう見ても50㎝くらいしかない。


 太ったおっさんは、なんかギュウギュウ詰められたハムみたいに全く身動きがとれずにフウフウ言うので精一杯だ。暑苦しいので死ねばいいのに。

 小さく助けてと言ってるような気がするがオレの心には響かない。


 それに、最初は見られてるような気がしたが今は視線を合わせようとしないので向こうからは見えないのか?それなら見放題じゃないか。

 細かい事はどうでもいいのでとにかく観察だ。

 現実の受け入れ完了!!


 お姉さんの巨乳はケースに押し潰される形になってオレの目の前に押し付けられている。スゲエ。


 こっちのちっパイもナイスだな。このまま保存して持ち帰れればいいのにな。いいのにな。


 フムフム、ツインテールの娘も形が良さそうだ。声も可愛いなあ。ハアハア言っちゃってコノヤロウ。狭すぎて苦痛に歪む顔が何とも素晴らしい。

 君には3つ星をあげよう。ナイスだ。ナイスだよ君ィィィィ!!


 横のハゲたおっさんは消してくれ。

 後ろの顔に傷があるおっさんも消してくれ。

 太ったおっさんフウフウ言うなブッ殺すぞ。せめてブウブウにしろ。お似合いだ。

 オバサンは出会うのが20年遅かったな。若い頃は美人だっただろうが、オバサンはオバサンだ。

 何人かいる、若い無駄にイケメン男どもも死んでくれ。

 若い女には価値があるが若い男には価値が無いのだよ。

 一つ勉強になったな。


 懸命に3人を観察するのに集中していたのに、邪神アリスが声を上げる。

 邪魔をするなよチビッ子!!オレは忙しいんだ。


 しかしまあ、今のところアイツの持つ情報を聞き逃すのは得策ではない。そう結論付けて目は正面の女達から離さずに耳だけ傾ける。


「キサマらに発言を許可した覚えはないよ。ペナルティと

して勝手に喋ったボケと攻撃の意思表示をしたクズどもは

声と姿を全員に晒すの刑だよ。

 ちなみにその透明の箱は僕の神力で出来た永久牢獄だからね。次に勝手な事をしたらもっと小さくするから覚えておいて。」


「なんやねんそれ…」


 どこかで誰かが小さくそう言ったのが聞こえた。


 この場にそぐわない関西弁だったな。アリスとヘリウム関西弁の組み合わせのシュールさに思わず笑ってしまいそうになったが、それより早く目の前におっさんが一人追加されてビビった。

 もうおっさんは胃にもたれるから勘弁してくれ。


「ホントキサマらはゴミだね。この程度の事も理解出来ずにまた一人増えた。次に勝手に話す奴が出たら連帯責任で全裸の刑を追加した上に箱の大きさを半分にするからね。カスにはお似合いかもね。クスクスクス。

 空間歪曲させて全員の目の前に並べてるからしっかり見てもらえるよ。さあ好きなだけ話していいよ」


 それを聞いてオレは自ら声を上げようとしたが、ギリギリ踏みとどまった。


 こいつらの仲間入りはまあいい。全裸を見てもらうのも望むところだ。狭いのも我慢出来る。


 しかしオレがこの女達を見れる保証が無いのだ。

 と言うかたぶん見れない。

 ハゲおっさんは真横に潰れた巨乳があるのにそっちを見ようとしないのだ。

 そんな事は男としてあり得ない。

 まあ、このハゲおっさんがホモである可能性があるが、そんな可能性は気持ち悪いのでドブに捨ててしまえ。


 危ない。危ない。危機一髪だ。

 自分の常人離れした観察力にここまで感謝したのは初めてだ。ありがとうオレ。


 チャンスは必ず来ると信じてる。DREAMS COME TRUE

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