お仕置き?
よく寝たぁ……
スッキリと寝覚めた、朝 ?
じゃない。まだ室内は薄暗い。
何時かなぁ? 時間を確かめようと、ベッドサイドの時計に手を伸ばす。
あれ?無い。
伸ばした手を動かしてみる。
違う所に置いた?
いやいや、
そんなことしてないと思う、…… けど、
思い違い?
仕方ないな、
起き上がろうとした、その時、
腕を引っ張られ、身体がベッドに沈みこむ。
甘い香りが鼻を穿つ。
瞬間、固まった。
何で? 藤井さんだ!
固まった身体を背後から包み込まれて拘束される。
? ? ? ? ?
「もぞもぞしないで?
もう少し寝て。」
抱き締められて 、囁かれる。
? ? ? ? ?
硬直が解けないまま、数分が経過する。
しばらくして、ようやく頭を巡らす余裕が生まれる。まずは、この状況に至った経緯を辿る。
みんなの厄介者扱いに憤慨して……
記憶の最後は、ゆらゆら揺らぐ心地よさと甘い香。
わぁぁぁ、……… どうしよう!?
藤井さんは、酔っ払った私を押しつけられたんだ!
どうやってお詫びしたらいいのだろう?
お詫びのしようもない迷惑をかけちゃって……
はた迷惑もいい加減にしろだよね。
………
それにしても、ここはどこ? ホテルなの?
室内を見回すと、見覚えのあるチェストが目に入る。
藤井さんの寝室だ!
お家に連れてきてくれたんだ!
申し訳なくて、会わす顔がない。
どうしよう!?
どうしたらいい???
このまま寝たふりをする?
それとも、こっそりと脱け出す?(これは後が恐ろしいから却下)
それとも、何もなかった風を装う?
……… あれこれ考えてもナイスなアイデアなんて浮かんで来ない。気落ちした私の頭に籠った声が降る。
「気分はどう? 気持ち悪くない?」
突然聞こえた声にビクッとする。
けれど、これは天の声!
そうだ!二日酔いで気分が悪いふりをしよう!
この後の方向性が定まって気持ちが軽くなったこともあり、ホッとして顔を振り上げると、後ろから覗き込んでいた藤井さんとまともに目が合う。
駄目だ!嘘はつけない!
「大丈夫です……
(とにかく謝らなくちゃ!)
えっと、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。」
頭を下げようとしたけれど、この体勢では無理だと諦めて、せめて首だけでもとペコリとする。
藤井さんは何も答えず黙ったまま。
沈黙に耐えられなくなった頃に、「水を飲む?」と尋ねられて、喉がからからに乾いていることに気づく。
はいと頷くとちょっと待っててと藤井さんは拘束を解いてベッドから出ていった。
ハァ…… …… 藤井さんの顔がよく見えないぶん、緊張したなぁ。
上半身をベッドから起こす。
そうだ、水!
しまった! 失敗した。 藤井さんにわざわざ取りに行って貰うことなかったんだ。自分で取りに行きますって言えばよかったと今さら後悔する。また迷惑かけちゃって ……
申し訳なさすぎて泣きそうになる。
はぁ…… 溜め息が零れる。
はぁ…… 出るのは溜め息ばかり。藤井さんは呆れたに違いない。年末に酔っ払うほど酒を飲む女にこれ以上かかわりたくないだろうし、水を頂いたらせめて速やかに退散しようと決めた。




