不審
クリスマスデートの時、家まで送ってもらった車の中で、忘年会や得意先回り、大学時代の友人との飲みで年内は体が空きそうにないと、藤井さんはこぼしていた。
「じゃあ、会えるのは年明けですね?」
がっかりして、声が沈む。
藤井さんは、申し訳なさそうに、
「ごめんね。」と謝って、
「君に会う方が楽しんだけどね、
付き合いだから仕方ない。」
に続けて、
「良い子にして、待っているんだよ?」
と私の頭を撫でてくれる。
それが少しくすぐったくて心地よい。
「君の予定は?」と尋ねられ、
課内の忘年会や女子会ぐらいですかねと答えた私。
それがツボにハマったらしく、
「ですかねって何なの?年寄りくさっ!!」
げらげらと笑い出した藤井さん。
それまでの甘いムードがぶち壊し。
そのまま笑いながら別れた。
橘と話した日の夜、
藤井さん、今頃IT部の忘年会でお姉さまに囲まれているんだろうなぁと思いながら、
おやすみなさいメールを送信した。
翌朝になって、レスが来なかったことに気づいたけれど、忙しかったんだろうと不審に思わずにいた。
おはようございますメールを送信して、起き上がろうとしたけれど
筋肉痛!
昨日机にぶつけた頭は痛くないけれど、体の節々が痛い!
大掃除のせいかなぁ?でも、そんなに頑張ったつもりはないのに???
いつもはシャワーで済ますところを、お湯を張ってゆっくりとつかって、体をほぐす。
窓から朝陽が射し込み、水がキラキラ光る。
久しぶりに体チェックをしたりして……… 。
自分ではそれほどの変化はないと思ってるけど、
栞ちゃんに艶やかになったと言われた。
それは藤井さんとのSEXが作用してるはず。
だって実際スゴいと断言できる。
寝かしてくれない。
彼氏は藤井さんで二人め。
前の彼氏とはあまりしてなかった。SEXが気持ちイイものだという認識はない。途中まではすごく気持ちよくて、イクこともできた。
ダメなのは挿入後。
感じているふりをしていた。
声を出して、腰をふって、でもそれは演技…… 、
気づかれなかったと思う…… 。
彼とは大学に入ってすぐに付き合いはじめて3年間続いた。別れた理由は特になし。2コ上だったので向こうが就職した後自然消滅しただけ。強いて理由をあげるなら、物理的に会えなかったこと。新入社員の彼は大変そうで、会っても仕事のことばっかで(彼と同じ経験をした今なら理解できるけど)、その時は放って置かれていると思っていた。待てなかった。
結果、こちらからメールしないと向こうからは来ずで、いつの間にか連絡が途絶えた。
それが3年前のこと。
それからはコクられても、上手くかわしてきた。
と自分では思ってる。
けれど、藤井さんは違う。
演技する余裕なんてない。というか、必要もない
……… 何を考えているんだろ、
朝から身体を火照らして、
どうしようもない!
ザブザブといつもより乱暴に体を洗った。




