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言葉で伝わらなくても。  作者: モロキ
91/105

聖夜 9

え、えっ!?   本気って ?


そんなこと知らなかったというか、


思いもしなかった。


本当なの!?


藤井さんの顔を見上げる。


藤井さんは頷いて、

「気づいてなかったの?

言ったつもりだったんだけど、」

と。

驚いて、藤井さんの顔を見上げる。

「言ったって、いつ………ですか?」

聞いた覚えはないよ。


「関係が変わってもいいか、聞いたよね?」

と、藤井さんが確認する。

初めての時の言葉を思い出す。

確かに藤井さんは、

このままSEXしちゃうと関係が変わるけど、それでもいいか私に尋ねた。

「言われたのは覚えています……

あれって、そういう意味だったんですか?」

呆然とする。

だって、あのシチュエーションだよ?

思わないよね?


藤井さんも、信じられないという表情をしている。


「君は何だと思ったの?」

逆に聞かれて、


「体の関係を持つんだから、セフレになろうってことかなって思ってました。」


「なわけないでしょ?

俺、君と付き合ってたじゃない。」


「それでも、

大人の割り切った関係になることを確認されたのだとしか考えられなくて、」


信じられないという表情を顔に貼りつけたまま、

藤井さんは、

「君、俺をどんなやつだと思ってたの?

君を大切にしてただろ?

すぐに手を出したりせずに、」

と言った。


私はその時思っていたことを明らかにする。

「それは放置プレイかなって、

最初に、放っとかれたから。

その時に藤井さんが言ったことですよ。」

ばつが悪そうに、顔を歪める藤井さん。

私は続ける。

「だから、藤井さんって気まぐれな人だと思って、

なにもかもゲームなんだから、

いくら甘やかされても、

本当に好きになっちゃったら、

絶対終わると思っていて…… なのに、

会うたびに好きが積もって、苦しくて……… 」

あの頃の感情が甦って、言葉が続かない。

髪を撫でていた藤井さんの手が背中に回り、

ぎゅっと引き寄せる。

二人の距離が一気に縮んで、

顔が藤井さんの胸に当たる。藤井さんの香に包まれる。

「そんなこと考えていたんだ……… 」

藤井さんは、緩く息を吐く。

「俺は、俺との付き合いを君が怖がってるように見えたから、

徐々に慣れてもらおうと思っていたんだけどね。」


「そう……… だったんですか?」


「ああ、

君、男と付き合うこと慣れてなさげだったから、

いきなり抱いたりしたら、君のキャパを超えるんだろうなと思ってたけど ………

違った?」


「違わないです。

お付き合したのは、大学の時、一人だけです。」

と本当のことを答える。


「その彼も、顔で選んだの?」

藤井さんが突っ込む。

スゴい!図星だ。

「なんで分かるんですか?」


「いや、別に、何となくだよ。」

コツン、頭に藤井さんが顎を乗せた音。

「俺も、君のことが掴めなかった。

付き合っているのに、

しょっちゅう合コンだの飲みだので出歩くから、

俺をキープしておいて、

もっといい男を探しているのかと疑っていた。」

そこで言葉を一端切った藤井さんは、

軽いキスを頭の上に落として、

「俺以上の男なんて、そうはいないよ?」

と。

どんな顔をして言ってるの?

見たいけれど、

藤井さんに取り込まれて、顔を上げられない。

藤井さんの顔を見ることができない。


もっといい男を探してたのは本当だけど、

でも、違う。

言わなきゃ。私も、本当のことを。

「藤井さんに夢中になりたくなかったんです。

藤井さんじゃない人と付き合えば、

藤井さんへの気持ちが軽くなって、

上手に付き合えるかと、

そう思ってたんです。

大人の付き合いって、私には難しくて、

重たいのは藤井さんは絶対嫌だろうから、

でも、物わかりいいふりをするのも限界で……… 」

あの頃の思いを口にする。


「俺は、君の顔から笑顔が消えたことが堪えた。」

藤井さんのあの頃の気持ちが伝わってきた。







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