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言葉で伝わらなくても。  作者: モロキ
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聖夜 2

駅前の百貨店前、柱に寄りかかった藤井さんを見つける。黒のタイトなパンツにVネックのパープルの濃淡Tシャツを二枚重ねて着た上にグレーのジャケットを羽織った姿は周囲の視線を集めている。

彼は慣れているのだろう、視線を気に留めることなく、手にしたスマホを指先でタックしている。

あっ、目を上げた。こっちを見た。スマホをポケットに入れた。ニコッと笑って、手を振る。

心臓がドキンと大きく飛び跳ねる。

イチイチ動作が様になっててカッコいい!なんてこと、本人には絶対に言えない。

彼の笑顔に、私もとびきりの笑顔になってるはず。彼のもとに駆け寄る。

「ごめんなさい、遅れて。」

「全然遅くないよ。

俺もさっき着いたところだし。」

腕時計を見ると、まだ約束の5分前。

最初のデートから遅刻なんてしたくなかったから、ひと安心する。


「行こっか?」

藤井さんが、右手を私の左手に伸ばし、指を絡めて恋人つなぎする。

また、心臓が大きく音をたてる。

手を引かれて歩く。

「走って、喉が渇いたんじゃない?

そんなに急がなくてよかったのに、

もしかして、寝過ごした?」

言い当てられて、真っ赤になる。

「昨日の夜、なかなか眠れなくて……… 」

と言い訳すると、

「それは、今日が楽しみだったせい?」

と聞かれた。

コクリと頷く。

「ヤバッ、かなりうれしい。」

彼が顔を赤らめるから、

また私の心臓はドキンと跳ねる。

私の視線に気づいた彼が、

「見ないで?」と、顔に手をやり、横を向く。

「カワイイですよ。」と、言ったら、

「……… 後でいじめるよ?」

と反撃された。


お洒落なカフェでティータイム。

朝を食べていない私に、藤井さんはサンドイッチを頼んでくれた。

「君、細すぎるから、

しっかり食べてね。」

と言われ、

「最近太ったって、言われます。」

と答える。

「もっと太ってもいいよ?

もう少し肉がついた方が俺の好みかな。」

えっ?そうなの?でも、

「でも、藤井さんの歴代の女性はみんな痩せてたでしょ?」と、言い返す。

「その情報はなに?」

藤井さんが呆れる。

「スレンダーな美女が好みだと、リサーチされてますよ。」

藤井さんは苦笑い。

「誰がリサーチしてるんだか、


それは好みであって、彼女ではないでしょ。

俺、彼女には抱き心地を求めるから。

癒されたいし、甘えたい。

骨ばっているのは、嫌だよ。

君、

頬っぺたは、柔らかくていいんだけどね。

身体の造りが華奢だから、

抱き締めると折れそうで怖い。」

と、頬を人差し指でツンツンされる。

鈍感な私でも、甘い空気が漂っていることに気づく。

でも、藤井さんが気に入ってくれるからって、

頑張って太りますなんて、言えないよ。

どう考えてみても太りたくない私は訴える。

「藤井さんのご希望を叶えたいのは山々なんですけど、

私は太りたくないです。

なので、頬っぺたツンツンで満足していただきたいと思うのですが……… 」

と藤井さんの顔を見ると 、笑いを堪えていて、

今にも吹き出しそう。


「ひどっ!騙したんですね。

真面目に答えたのに………」

思わずむくれてしまう。


「ごめん、ごめん。

可愛くてさ.ついからかいたくなってさ、

いくら彼氏の好みだって言ったって、

そりゃ、太りたくないよな、


悪かったよ。

機嫌を直して?」

と、お皿のサンドイッチを一切れつまんで私の口元に持ってくる。

「食べて?」


また、心臓がドキン、ドキンと音を立てる。

いきなり、

レベルが高すぎ!!

どうするのが正解?

これは、食べないといけないよね?

目をつむって、口を開ける。

唇に触れたパンを一口かじる。

目を開ける。藤井さんと目が合う。

「よくできました。」と藤井さん。

「恥ずかしいです。」と私が訴えても、

藤井さんは知らん顔。

残りを自分の口に放り込み、うん、旨いとご満悦。

確かにサンドイッチは美味しいけれど、

恥ずかしすぎます。

これは何プレイですか?と聞きたいけれど、

ヤブヘビになっても困るし、だから、

残りのサンドイッチを急いで頬張ったら、

「ごめんね、困らせたね。

もうしないよ。

ゆっくり食べて?」

と、悪いなんて微塵も思っていない顔で、

謝られた。


食べ終えて、プレゼントを差し出す。

「開けていい?」

と言って、藤井さんはリボンを解いて、包装紙を開く。

悩んだ挙げ句、私が選んだのはマフラーだった。

落ち着いた赤色を基調としたグレーと紺のストライプが素敵で、マネキンが巻いているのを店員さんに外してもらった品だった。

「かけて?」

藤井さんが頭を下げる。

えっ?えっ?

「私がですか?」

「君以外に誰もいないよね。」

当たり前だろうと言われても、

そんな、そんな、ハードル高すぎ!だよ。

ドキドキと緊張とで、手が震える。

もたもたしながら、

ようやく藤井さんの首にマフラーをかける。

「ありがとう。暖かいよ。」

お礼を言われるのも、照れくさい。

「すごく似合ってます。」

赤が差し色になって、シャープなラインが際だった感じ。

うん、これを選んでよかった。と、内心ガッツポーズをしてたら、

「その得意げな顔、面白い!」

と藤井さんに笑われた。












はじめまして、モロキです。

文章力がないにもかかわらず、夏休みの暇に任せて書き始めた小説です。初めて書くので、辻褄の合わない部分も多く、稚拙なのは十分承知しておりますが、読んでくださっている方、ありがとうございます。

大学の後期が始まり、毎日の更新が難しくなりました。だらだらと続いておりますが、今しばらくお付き合いくださいませ。

それでは引き続きよろしくお願いいたします。

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