表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
言葉で伝わらなくても。  作者: モロキ
80/105

言葉 3

栞ちゃんが言った「公認カップル確定」を夢見た私は甘かった。

栞ちゃんのウソつき!!

藤井さんからの告白プラス階段チューで、私はお姉さま方の怒りや妬み嫉みを一手に引き受けてしまった。


午前中はオフィスにいたので、そのことに全く気づかなかった。

お昼にいつもの3人で食事を取っている時、

周囲の目が痛くて、視線をビシバシ感じた。

顔を上げることができず、うつ向いて箸を口に運ぶ。

ヒソヒソとした陰口が聞こえない分、マシなのかと思う。

栞ちゃんが「早く食べて出ましょう。」と囁く。

食欲の萎えた自分を叱咤して完食したのは、ただの意地のせい。

休養室に寄らないで営業部に戻り、午後は閉じ籠っていようと決めた。

のに………


課長にお使いを命じられた。

無理ですと、目でアピールしてもPCを凝視している課長は気がつかない。 どころか、早く行けと言わんばかりに手で追い払われた。

私は今、

廊下をキョロキョロ見回し、コソコソ歩いている。

お姉さま方と出会したくない。

戦ってもよかったが、元々、平和主義の私。

これ以上の反感を買いたくなかった。

壁から顔を覗かせ、前後左右を確認。

よし、誰もいない!

走り出した私の腕を絡み取り、引っ張る強い力。

倒れこんだ私を抱き止める硬い腕。


「里菜」私を呼ぶ甘い声。

藤井さんだ。

いきなり 、口を塞がれた。

ディープキス?

目を白黒させて、離れようともがく。

身体を反らして、距離をとろうとする。


押しつけられていた唇が少し離れる。

至近距離で、

「目を閉じて。」

吐息混じりに囁かれ、また塞がれる。

彼の舌が私の中に入り込む。

押し返そうと最初は抵抗していた私の舌は、すぐに音を上げ、彼の熱に屈服し、教えを乞っていた。

歯茎や上顎、下顎、舌の裏と、口内中をつつかれ、舐め上げられ、吸われ、思いのまま蹂躙された。

唇を甘噛みされて、覆われる。

「ん…… 」……… 声が漏れる。

飲み込みきれなかった唾液が、口から零れて喉を伝う。


彼がようやく解放した時、私はフラフラだった。

腰が砕けて、立っていられない。

壁に寄りかかって、呼吸を整える。

何も考えることができない。


「堂々としていて。


俺は頼りにならない?


俺は君を守りたい。」


藤井さんが言葉を吐く。


「知ってたの?」

気づいてくれてたの?


「当然。」

の一言。


「一人で抱え込もうとするな。


俺に話して。


二人の問題だろ。」


藤井さんの口調に強い意思を感じ、

私の中に力が生まれる。


「ありがとう。」

うれしくて、泣きそうになる。


藤井さんは照れくさそうにソッポを向き、

「お礼なら、八重ちゃんに。

彼女が教えてくれた。」

と、

突然現れた種明かしをして、

IT部に戻っていく藤井さん。

その後ろ姿を見送りながら、

思う。


仕事中なのに来てくれたんだよね。

エロかったけど、

心配してくれたんだよね。


戦い 結構!負けるな 私!


姿勢を正す。

背筋を伸ばし、顔を真っ直ぐ前を見る。

大丈夫、一人じゃない。

思いきって、一歩踏み出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ