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言葉で伝わらなくても。  作者: モロキ
79/105

言葉 2

「里菜先輩、すごい噂ですよ!」

更衣室に飛び込んできた栞ちゃん、

幸いにして、私と八重以外にはいなかった。

それにしても、朝だというのに、

栞ちゃんのテンションはMAX、

誰にも止められない。

「何の噂?」

八重が、恐る恐る訊ねる。


「藤井さんと里菜先輩のお二人です!」


えっ? 私?

一体どんなことを今度は言われてるの?

「ストーカー・ストーリーとは別物なの?」

気になって、私も尋ねる。


栞ちゃんは満面の笑みを浮かべて、


「ご安心ください。

今度は純愛物です。

昨日、階段の踊り場で、

先輩は総務の吉田さんにコクられましたよね。

断る里菜先輩にしつこく迫る吉田さん、

絶体絶命のピーンチっていう時に、

藤井さんが助けてくださったんですよね。

そして、藤井さんからの告白。

もちろん、里菜先輩はOKして、大大円。

藤井さんとの階段チューを見たという目撃談もありますよ。

ワー、キャー 、赤面ものです!

絵になるカップルでうらやましい限りです。

あの、藤井さんですよ!

素敵社員ナンバーワンじゃないですか?

もしかして、本命彼女って里菜先輩じゃありませんか?

そうだったら、イブのプロポーズどうしましょう?

私としては、受けてほしいですけど、

でもでも、

そうなったら、

里菜先輩が大人の階段を登っちゃうようで、寂しいです。

キャー、何言ってるんでしょうね。私ったら、

すみません。妄想を膨らませました。

とにかく、

お二人は公認カップルとしての地位を確立しつつありますよ。

おめでとうございます。」


スゴい……事実に則した情報を入手している。

栞ちゃん、君はただ者ではないね、

と、

八重が

「本当はどうなの?」と突っ込む。

「ほぼ、事実。」

本当のことなので、肯定せざるをえない。


「でも、誰もいないと思ったけど、」

と疑問を口にする。


すると、栞ちゃんが、

「藤井さんには、数日前から尾行がついてるらしいですよ。X-dayに向けて。」

と教えてくれた。


「藤井さんも大変だね。」

八重が気の毒そうに言う。


「ホントにね。」

私も同意した。





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