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言葉で伝わらなくても。  作者: モロキ
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待ち時間の終わりの続き

あれから1週間。

廊下を歩くと、聞こえてくる声、声。


「あの子ね。」

「彼女、IT部に乗り込んで藤井さんに言いがかりを…」

「それって、修羅場?」

「藤井さんは黙殺したらしいよ。」

「つき合ってたの?」

「彼女の思い込みらしいわよ。」

「元々妄想癖が……。」

…………

陰口と視線が痛い。

自業自得とはいえ、

コソコソと噂されるのは精神衛生上よくない。


凄いストーリーが出来上がってる。

私が主人公で加害者。

藤井さんは災難にあった被害者。

カレカノだと思い込んだ主人公の女がひたすらイケメンの被害者をスートーカーする話らしい。


幸いにも営業部のみんなは普段の私を知ってるからか、笑ってるけど、

他部署のお姉さま方はそうもいかないらしく、

ちょくちょく呼び出しがある。

今日も廊下を歩いていると

「佐倉さん、ちょっといい?」

と呼び止められ、小会議室へと連れていかれた。

中には、5人のお姉さまが待ち構えていた。

総勢6人で、私の行為がどれだけ藤井さんに迷惑をかけてしまったかをこんこんと諭される。

その後、入社2年目の私が藤井さんを独り占めしようとするのは、高望みであり思い違いだと諭される。

「佐倉さん、あなたに釣り合う方がきっといらっしゃるわ。その方で満足なさい。」と最後に言われた。

これ以上藤井さんに迷惑をかける訳にはいかない。

分かりましたと答えるしかなかった。


ようやく解放されて、ホッとする。

時間を確かめると、会議室に入ってからすでに30分以上経っている。


急いで営業に戻る。

今度は、岩瀬さんに、

どこをほっつき歩いてるんだと怒られた。


その日、

夜ご飯を八重と和泉君の3人で食べた。

飲む方は程々にすることにし、メニューを開く。

あれこれと検討し、枝豆、ポテトサラダ、カマスの開き、つくねの鍋、焼きおにぎりなどを頼んだ。

料理が来ると食べながら近況を語り合う。

私が昼間の出来事を話すと、

「踏んだり蹴ったりですね。」

和泉君が感想を言う。

八重は、自分がもっとガッツリ引き留めていたらと後悔しきりだ。

私は情けなくて口が重くなる。

それでも、

「佐倉さんの対処の方向性は間違っていないと思いますよ。」と和泉君に言われると嬉しい。

「そうでしょ?

お姉さまをこれ以上刺激したら、

事態は悪化の一途をたどるよね。

それなら多少プライドが傷ついても、

大人しくして事態の沈静化を図るべきだよね。」

と語る私。

「橘がいなくてよかったね。

いたら思いっきりバカにされてたね。」

と八重。

「和泉君、絶対に橘に言わないでよ。」

と釘をさす。

和泉君は「僕が言わなくても、IT部から自然に耳にするんじゃないですか?」

と至極当然な指摘する。

「それはそうだけどぉ……… 」口ごもる。

八重が、

「それで、藤井さんとはどうなっているの?」


「分からないよ。連絡ないし。

関係ないって言われちゃったし、

こっちからは何もできないし。」


藤井さん呆れてるはず。

切なくて、涙が出そうになる。

慌てて、目の前のポテトサラダを頬張った。






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