待ち時間 3
いじったり、いじられたりして、
3時間経ち、お開きとなった。
この後、八重と和泉君は2件めに行くと言う。
店の前で別れ、橘と駅方向にブラブラと歩く。
話題が会社の窓から見えるイチョウの木になり、
私はステキさを力説する。
「ホントにね、異次元の世界への入口かも!?てくらい、黄金色に輝きながら空中を舞ってたんだよ。
ここしばらくは楽しめるから、橘も見て。」
「あぁ、分かった。」
「暇な奴、って思ったでしょ?」
「当然だろ?
…… 勤務中に時間が、よくあるよな。
余裕じゃん。」
小馬鹿にした口調がしゃくに障る。
いいよ、せっかく教えたげたのに、
もう言わない!っとムッとする。
橘は、
「あれっ、怒っちゃった?
機嫌直せよ。 面倒くせぇから。」
と、言葉が途切れる。
ハァァと、橘は溜め息を吐く。
「そうなんだよな、面倒くせぇ… はずだったのになぁ……」
ハァァ……と、橘がもう一度溜め息を吐く。
チラッと横目で私を見る。
歩く速度がゆっくりとなる。
「な、な、何なのよ?」
攻撃に備えて、防御の構えをとる。
「俺さ、佐倉のことが可愛くて堪らない。」
「え?」
「好きだ。」
「え?」
「馬鹿なことばかり考えてるし、
すぐ感情的になるし、拗ねるし、意地張るし、
お前、魅力は皆無だから、」
また、チラッと見る。
「だから、
気の迷いだと思いたいんだけどね、
残念ながら、好きなんだ。」
「え?」
「そういうことで、
いや、返事はいいよ。
藤井さんしか見えてないのは分かってる。
言う気もなかった。
それなのに、
なんだろな?
なんで、告ってんのかな?
……… お前、どう思う?」
「えっと、分かりません。………すみません。」
「だよな、悪い。変なこと聞いて。
ああ、もう駅だ。
じゃ、気をつけて。」
「え?」
よく分からないまま、橘と別れる。
グダグダって、
論点を明確にしたがる橘らしくもない。
えっっと、
コ、ク、ハ、ク、だったよ…… ね?
だけど、
返事不要って自己完結してたし、
私への感情が理解不能って自己嫌悪してたし、
落ち込む。
そんな不本意な感情を抱かせてごめんなさいと、
橘に謝りたい。
トボトボと歩いて自宅まで帰った。




