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言葉で伝わらなくても。  作者: モロキ
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岩瀬

岩瀬さんは3コ上の先輩で、あいつと同期だ。

営業部へ配属後の指導員だった。結婚退職した前任者の代わりに、営業補佐の仕事を教えてくれた。営業もこなしながらの後輩の指導は、かなり面倒だったに違いない。飲み込みは速い方なのでそうは迷惑をかけてはいないと自負しているが、手間だったのは間違いない。

それでも、彼は丁寧に教えてくれた。…………のか?

思い出すのは、冷たかったお言葉ばかり。

「同じことは繰り返したくないから、1度で覚えてくれ。」

「お前の存在は、何かの罰ゲームなのか?」

「せめて猫の手ぐらいにはなれよ。」

「使えないやつだと判断したら、遠慮なく見切るぞ。」

…….………

「その頭に詰まっているのは、綿菓子か。外見が良ければちやほやされる時代は終わったんだ。」

「とにかく出会う人に挨拶しろ。いくらかわいくても、挨拶ができない奴は社会人とは認めない。」

…….…… アメとムチ?

だけど、緊張のあまり失敗して落ち込む私に、

「今、失敗してよかったんだ。失敗は新人の特権だな。会社に大損害を与えるような失敗は駄目だ。だが、この失敗は次に生かせるよ。大目に見てもらえるうちに、たくさん失敗しとけ。」と言ってくれた。こんなふうに言われて、入社以来感じていた身体のこわばりがようやくほぐれたのだった。

指導期間が終わると、よく資料の作成を頼まれた。使える奴だと認めてもらえたようで嬉しかった。それは1年経った今でも続いている。

そして、今はムチは影をひそめ、アメがもっぱら与えられている。何故だろう?確かに失敗することはなくなったけど、なんだか寂しい。

あの冷淡さを懐かしがる日が来るなんて、思ってもみなかった。マゾっ気があるのか?私………。

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