告白の続き
「酷い顔、
鼻水、垂れてるよ。」
藤井さんが、顔をしかめて指摘する。
えっ、そうなの?
気にしなかったよ。
慌てて、隣の椅子に置いていたバックの中のティッシュを探す。なかなか見つからない。
「ほら、これを使って。」
藤井さんがハンカチを差し出す。
「い、いえ、いいです。
汚いし、申し訳ないです。」
と、両手をフルフルふって断るが、
「いいから、使って。」
と押しつけられる。
恥ずかしいなぁと思いつつも、
涙や鼻水?を拭って、
「ちゃんと洗ってお返しします。」
と言うと、任せるよと返事が返る。
しばらくぼおっとして、藤井さんがPCを開き、メールを打つさまを眺める。
「さすがIT部 、タイピングが速いですね。」
感想が口をつく。
「ありがとう。」の言葉の後、
「今夜の約束キャンセル入れた。
謝らないで。聞きたくないし、」
と、謝罪の言葉を口にしようとした私を遮った。
PCを専用ケースにしまってから、
「落ち着いた?」と聞かれる。
「はい。」と答える。
ハンカチに漂う藤井さんの匂いを嗅いでるうちに、落ち着きが戻った。変態じみているかな…… でも、
落ち着くんだもの、いいよね。
藤井さんが口を開く。
「あのさ、
俺、今、付き合っている人がいる。
だから、君の気持ちに応えられない。」
はっきりと言われた。
藤井さんの口から直に聞かされると、
やはり打撃を受ける。
でも、分かってたことだ。ちゃんと受け止めよう。
一言も聞き逃すまいと、続くであろう言葉を待つ。
けれども、
そこまで言って、
藤井さんは、溜め息を吐いて、
テーブルに肘をつき、両手で顔を覆う。
そして、言葉を続ける。
「俺も今年27になるし、
君とのことで懲りて、
彼女と真剣に付き合うつもりで、
身辺整理したんだけどねぇ、」
手の隙間から私をのぞき見て、
言葉を続ける。
「正直、今の告白、グラッときたんだよね。
揺れた。
だからって、今すぐどうこうってわけでもないし、
ただ揺れたってだけだけど、
里菜ちゃん、凄い爆弾発言だね。
参ったよ。両手を上げて、降参って気分。」
しばらくの間、
顔を覆った両手の隙間から私の顔を見ていた藤井さんが、ニヤリとして、
「それで、里菜ちゃん、
もう一度君と付き合うと、何か特典はあるの?」
と聞いてくる。
「私と付き合うと、」
言葉を切って、一瞬考えるも、
答えは決まってる。
言い直す。
「私と付き合うと、
藤井さん、
すごく幸せになります。
いつも、私のすることを面白がるでしょ?
い、いえ、
私は受けを狙っているつもりは全くありませんが、
藤井さんには笑えること、
たくさんあるでしょう?
なので、一緒にいると、楽しいと思います!」
言い切った。
案の定、藤井さんは大爆笑。
「何なの?その自信に満ちた顔。
さっきまで泣いてたのに、
なんでもう、自信満々なわけ?」
笑いが止まらない。
本気で言ったのに、そんなに笑うとこあった?
ちょっとムッとして、
「笑いすぎだよ。」
と、じとっとにらむ。
「ゴメン、ゴメン。
怒らないで、」
そう言いながら、
右手を伸ばして、
私の髪の毛を一ふさ指に巻きつける。
「待ってて、
俺も真剣に考えるから。」
嬉しい言葉をもらった。




