表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
言葉で伝わらなくても。  作者: モロキ
57/105

思案

近づく藤井さんの顔 、あと数センチで、

の瞬間、

心臓がドキンと、大きく飛び跳ねた。

怖い!

慌てて逃げ出した私の後を、

藤井さんの笑い声が追ってきた。


からかわれた!


でも、そんなことに構っていられない。


廊下を駆けり、更衣室に飛び込む。

運良く、誰にも会わずに済んだ。

ひとまず、安心。

パイプ椅子に座り、両手で胸を押さえる。

まだ、心臓のドキドキが止まらない!

走ったせいか、接近のせいか、区別がつかない。

深呼吸、、深呼吸だ。

深く息を吸って、吐いて、

吸って、吐いて………ようやく、落ち着いてくる。


ヤバい、

持ってかれそうになった。


危険だ!


「よく危険回避した。えらいぞ、私。」

またまた、自分で自分を誉めて、

これからどうしようかなぁ………と思案する。

…………

…… と、私は名案を思いついた。

(私が思いつく名案が録でもないものばかりなのは、後々明らかになるけれど ……… )


新入社員研修でのお気に入りの言葉

『熱い心と冷静な判断力』を活用しよう。


熱い心はある。

藤井さんを負かしたい。


本当は、藤井さんの言葉を聞いて、

「夢中にさせるまではできなくても、

心を揺さぶりたい、

揺さぶる存在になりたい」と、

私の中に突如湧き上がった感情。


冷静な判断力には、あまり自信がない。

感情で動いてしまうことが多い。

冷静に考えると、

手に入れた情報を分析して、それから、

対策だよね。


藤井さんが私に近づく意図は……

面白いから。

楽しみたいから。


私に求めていることは…… 聞いたばかり、


俺を振り回して。

俺を夢中にさせて。


…… 心臓が、またしてもドキンと大きな音をたてる。

思い返しても恥ずかしい。

あんなことを臆面もなく言えちゃう神経、

信じられない。

藤井さんは恥ずかしくないの?

彼の言葉や行動は、容易に、

私のキャパを超える。

たち打ちできる筈がない。


対策は ……

近づかれただけで、逃げ出したくなるのに。

声を掛けられただけで、うろたえてしまうのに。

…… どうしたらいい?


思いついたことは……


至近距離にならないようにして、

(接近戦に持ち込まれたら、アウトだ)

楽しませない。私で遊ばせない。

(私が悔しくて我慢できない)

まとめると、

距離をおき、何を言われてもされても平然とする。

(名案なの?と自分に突っ込み、)

できるのか、と自問自答する。


う ~ ん、これは、大人な女の振る舞いだ。

なれるのかな?、と弱気になって、

ダメダメと首を振る。

なれるのかな、じゃなくて、なるんだ。

大切なのは、ポジティブ・シンキングだと、

新人研修の講師の先生も言ってた。


何はともあれ、

うん、

方向性が見えてきた。

光明が射してきた。


望みどおり、振り回してあげる。

フフフフ……笑いがこみ上げる。


それにしても、スゴい!

藤井さんが持つ武器は、強力だ。

今の私のMPとHPでは倒されてしまう。

他所で戦って、経験値を上げなくては!


と、着信音。

八重から

「いつまで、休憩してるの?

岩瀬さん、探してるよ。」

のメール。

今度は更衣室を飛び出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ