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言葉で伝わらなくても。  作者: モロキ
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経緯

新入社員研修を終え、配属された先の営業部、

指導員の岩瀬さんは、多忙な人だった。

厳しい人でもあったので、いつも怒られていた。

私はビクビクしてばかりだったが、指導が1カ月を過ぎる頃には、岩瀬さんが望んでいることを理解していた。

営業部での私の位置は補佐、主に事務を任される。だが、「言われたことは正確にこなし、ケアレスミスを絶対にしない」は当然のことで、それだけでは不足していた。

岩瀬さんから求められているのは、自分で判断する力を持つことだった。

彼の要求以上のものを、用意しなければならない。

1年目の私は、それまでの会社の取引内容を頭に入れておきたくて、資料室に通った。

パソコンの関連のあるフォルダにも目を通した。


土曜日に出勤をしたのは、月曜までに揃えて欲しいと言われた書類にパソコンの中のデータが使えそうだと気づいたからだった。それを利用すれば、もっとインパクトのあるグラフィックができそうだったのだ。シンプル イズ ビューティフルが信条であるが、色や3Dを用いた図面を作成するのも許容範囲だ。


昼過ぎに出勤して、パソコンを立ち上げる。

その後は、画面に集中する。


何時間が過ぎただろう ………


コトンと机の上に置かれた、カフェオレ。

見上げると、藤井さんだった。

「がんばってるから、ご褒美。」

と微笑んだ顔は綺麗。


どうしてここに、

IT部の藤井さんがいるの?


「岩瀬に頼まれたことがあって、さっき来たの、

でも、君、パソコンに集中して気づかないから、」


「女の子が好きそうなのを買ったつもりだけど、

どう? 外した?」


いえ、お、お、大当たりです。

すごい!!

藤井さんて超能力者だったんだ。

私しゃべってないのに、答えてる!!


彼はブハッっと吹き出した。

「超能力って、何なの。

残念、違う。

君、喋ってるから。

気づいてないの?」

と、笑いこける。


声に出てた!?

カァッ、頬に血がのぼって真っ赤になったことが自分でも分かった。


しばらくたって、ようやく笑いが収まった藤井さんが私の顔を見つめて言う。


「えっと、何ちゃんだっけ?

一度、岩瀬に紹介されたよね?」


噂どおり、軽いなぁと思いながら


「佐倉です。」と答える。


「サクラちゃん、ね。

面白いコだね。

ねぇ、俺と付き合ってみない?」

と軽く誘われる。


えええェッ、付き合う?

無理! 無理! 無理!

無理すぎだよ。

でも、あの藤井さんだよ!!

どうしよう!?

OKする?

でもでも……どうなの?

頭がグルグル高速回転する。


その時、聞こえた藤井さんの声。


「俺、今彼女と別れたばっかで、お得よ?

来週になったら、別のコとつき合ってるかもよ、

(それは嫌!!)

「お、お、お付き合いします。」

焦って、食いつき気味になってしまった。


藤井さんは爆笑する。


「最高! 楽しめそう!」


本当に楽しそうな顔で、彼は笑いながら、

私の頬を撫で、


「よろしくね、サクラちゃん。」と言った。



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