夏休暇
お盆休みは土日を挟んで1週間。
実家には帰らない 。
私は、まだお母さんと敦子さんの企てを忘れていなかった。
今帰ったら、あの見合い話を持ち出され、絶対にお小言ばっかで楽しく過ごせる筈がない。
私からも断ったのに、
なぜか、私に問題があって断られたかのように二人の間で変換されている。
私には、なんの問題もなかったじゃない!?
問題があったのは、あの柿木さんだっけ、の方じゃない!?
と、かえすがえすも、負けた感がするのが悔しい。
しばらくは実家に近寄らない選択は、正しい選択であったと思う。
とはいえ、暇だった。
八重は帰省中だし、栞ちゃんは旅行中。
大学から離れた土地での就職だったので、
学生時代の友人もほとんどいなかった。
考えるのは、
慎さんのことばかりだった。
新しい人との交際は順調だという噂だった。
彼女のために、慎さんは他の女性をすべて切ったと聞いた。
私の時とは違う、真剣な付き合いなんだと思い知らされた。
慎さんとの交際中、他の女性と一緒にいる慎さんを見かけるのは、珍しいことではなかった。
いちいち気にしていたら、重たい女になる。
面倒くさい女には、なりたくない。
慎さんが望むなら、割り切った関係で構わない。
そう思おうとした。でも、
大学出たての22歳の私には、そんな関係は難しすぎた。
心が悲鳴をあげる。辛い、辛い、心が訴える。
だから、心の痛みに蓋をした。
私は気にしてない風を装うことが上手になり、張り合うように合コンに出かけた。
他の女を見ないでほしい、
合コンに行く私を怒ってほしい、
心の中は、負の感情が渦巻いていたのに、
言葉にできなかった。
私自身が
本当の気持ちを知られたくなくて、
彼が離れていくことが怖くて、
言葉にできないものを、
察知してほしいなんて、
無い物ねだりだ、
わかっていた。




