表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
言葉で伝わらなくても。  作者: モロキ
45/105

報告

同期会の翌日、社食で八重と栞ちゃんに報告会を開いた。といっても、報告すべき事はたいしてない。

ホテルのイルミネーションがキレイだったことを話すと、都合で参加できなかった八重は、

「評判だから行きたかったのに、」と残念がる。

ホテルの庭は、カップルでいっぱいだったと言うと

「雰囲気いいものね。あそこの庭は広いから隠れる場所は多いから人目は凌げるし、上には部屋もあるし、」と羨ましげだ。彼氏いないくせに、なんてことは言わない。


カップルについて妄想を巡らしていた栞ちゃんが

「里菜先輩は、お庭を散策されましたか?」と聞いてきた。

「あぁ、……まぁ、……うん。」

歯切れが悪い返答になった。

しまった、変に思われる、

平静に、平静に、と頭の中で唱える。

案の定、栞ちゃんは食いついてきて、

「誰とご一緒されたんですか?」と追及してくる。

仕方ないなぁ…… 栞ちゃんには藤井さんとのことを話してないから誤解するかも…… 誤解されないように説明しなくちゃ………

「酔った橘と。………橘、酔っぱらって大変だったんだよ。だってね、・・・

と、酔っぱらいの相手をさんざんして、とうとう終いに、ホテルの部屋のベッドに寝かせたところまで一気にしゃべった。

山路がいてくれて、ホント助かったよ。私一人じゃ部屋まで連れていくの無理だったもの。山路、一緒に泊まってやるって言ってた、イイ奴だよね。」

どんなに大変だったかをアピールして話を結んだ。

なのに、

そのアピールポイントを、栞ちゃんはスルーして、

「里菜先輩、橘さんと特別に仲良しですもんね。

橘先輩ファンの私としては、妬けちゃいますけど、

里菜先輩だったら許せます。

お二人の仲を認めちゃいますよ。」と、

恐れていた方に食いついて、

トンチンカンなことを言う。

八重までもが、笑いをこらえながら、

「いいんじゃない?

橘、"あり"なんじゃないの?」

とかぶせてくる。

「あり得ない!」とその時、


社食に入ろうとする橘と目が合った。

今日は一人だ。

橘は、目線をそよがせて、挙動不審。

ギクシャクとした動きが笑いを誘う。

「なに? あれ? 面白い。 」と、

八重は笑い転げている。


定食を手にした橘が、こっちに来る

「えっと、ここ、座ってもいい……かな?」

この下からの物言い、新鮮で良い!

気持ちよくなった私は、

「構いませんよ。」と言い、

「昨日は大変でしたね。」と気遣った。

どう?迷惑をかけられたのに、相手を心配してあげるこの心配り、大人だね。


橘は、数秒間私を眺め、

「うるせぇ、わざとらしいよ。」と言う。


その口調がどことなく弱々しい。

「もしかして、二日酔い……?」


「当たり、………頭いてぇし、最悪、

………………

お前、そばにいたんだったら、止めろよ。」

髪をクシャクシャ掻きながら、恨みがましい目で見てくる。

「そんなこと言っても、行った時には、もう随分飲んでたし ……… 」

そんなことを言い合っていると、

その様子を見ていた栞ちゃんが、

「お二人は仲良しさんなんですね。

二日酔いの橘先輩、気だるそうで、いつもの2割増しです。

そんな橘先輩を心配する里菜先輩も、いつもより可愛らしく見えますよ。

里菜先輩、合コン行ってもやる気無さそうだったのは、橘先輩狙いだったからなんですね。

大丈夫です。私のことはお気遣いは結構です。

ただのファンだから、傷は浅いです。

分かってますもん。オジャマ虫だってこと。

お二人を応援します。

そっと見守っていきますので、安心して愛を育んでください。」と、捲し立てた。


橘は「ありがとね、応援、ヨロシク!」と、

軽い調子で答えつつ、

(何者なの、この子?)と目で問う。

(目が怖いですよ、橘さん。)


「後輩、矢崎栞ちゃん。」と教えてあげた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ