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言葉で伝わらなくても。  作者: モロキ
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同期会の続き

夜も更け、庭園がライトアップされる。

金と銀の光を贅沢に使ったイルミネーションに目を奪われる。


「キレイッ!」


「だな。」


「ステキッ!」


「だな。」


橘はテーブルに頬杖をついて、目は今にも閉じられそうだ。


「橘、庭を見ずに、適当に相槌打ってるよ。」

と注意すると、


「佐倉を見てる。」と言われる。


今日の橘は変、いつもの意地の悪さが無い!

そう思って庭から橘に視線を向けると、目が合う。

相変わらずのトロンとした目、了解です。

酔っぱらってしまってるんですね。


「今夜の佐倉、すげぇ、きれい。」

臆面もなく言わないで!!

聞いてる方が恥ずかしいぃ!!


「俺の目、どうしちゃったのかな?

疲労のせいかな? 佐倉が可愛いく見える。

佐倉、可愛すぎ。」


何気に失礼な言葉を放り込んでくる。

酔っぱらっているとはいえ、やっぱり、橘だ。

この人、正気に戻ったら、あんなことを私に言ってしまったと呻き声を上げるんだろうな、

取り消したいって頭を抱えるんだろうな、

と思うだけで愉快だ。

是非、酔いから醒めても覚えていていただきたい。


それにしても、

酔っ払いの戯言と分かっていても、ドキッとする。

心臓に悪い。

橘は同期一番のルックスだし、ネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを一つ二つ外している姿は色っぽい。開いているシャツからのぞく鎖骨は艶やかだ。

狙ってるコも多いだろう。

いつも面倒を見てくれるお礼に、橘を守ってあげよう、そう思った私は、庭園に誘った。

女の子から逃げられるし、酔いざましにもなる。


庭園におりると、昼間の茹だるような暑さとはうってかわって、涼しい夜風が気持ちいい。

あちらこちらにいるカップルの姿が目に入る。

って、私たちもカップルだ。

そう気づいて、隣の橘を横目で見る。

橘は、全く関心がなさそうだ。

そうだよね、私とカップルじゃぁね、と納得する


しばらくその場に佇んで、庭を眺めた。

どうしようかな、ベンチに座ろうかなどと思っていると、

橘が、「少し 歩く?」と私の手をとった。

ギョえ!?

私はビックリして、奇声を発した。

橘が手を繋いだ!!


橘は、面白そうに

「ギョえって、なんなんだ?

もしかして、このせい?」と繋いだ手を軽く振り、


「手を繋いだ男は何人?」と聞いてきた。

失礼な奴だとは思ったけれど、

橘の問いかけには素直に答えるようしつけられている私は、

「10人。」と答えた。

すると、

橘は、「嘘くせぇ、」とひとしきり笑い、

「本当は、何人なの?」ともう一度聞く。


「橘で、3人。」本当のことを告げる。

うぅ………屈辱的、薄暗くてよかった。


すると、

橘は、「さっきの10人は、見栄をはっちゃったんだ?」とまた笑う。


「悪い? 男経験少なさそうって馬鹿にしてたじゃない。その通りだよ。」

多ければいいなんて思ってないのに、小声になる。


すると、橘は、

「勘違いするなって。

馬鹿にしてるんじゃないから。

少ないっての、俺は嬉しいんだよ。


こんなに可愛いのにな。今までの男見る目ないよな。本当に可愛い。」

と繋いだ手を解き、指を絡め、恋人つなぎにする。

?????

酔っぱらい過ぎだよ、橘は。と思いながら、

庭園内を歩き回った。

ミュールでは無理だと言ったのに、

こんもりと盛られた築山にも

強引に登らされた。

やっぱり、橘酔ってるね。

素面の橘は、こんなこと強要しないもの。


うんざりしながらも、

橘が酔ってることに安堵して、

その夜は、同期会がお開きになるまで、

私は橘につき合った。











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