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言葉で伝わらなくても。  作者: モロキ
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接触

いつものように、昼休み終了15分前に会社へ戻る。受付嬢に会釈をして、エレベーターに向かう私の目に入ったのは、藤井慎だった。


「あれ? 藤井さんじゃん。相変わらずイイ男だね。今から外回りかな? 珍しいよね。堂本さんと一緒だね。」と八重も気づく。

「…………」と無言の私。真っ直ぐ前を見つつ、横目で追う。

あいつは堂本さんの方を向いていて気づいていない。なんてラッキー!このまま気づかずに通りすぎてほしいと念じていたのに、こっちに気づいたらしく、声をかけてきた。


「八重ちゃん、久しぶり。里菜は昨日ぶり? 昨日は…」

「おい、藤井、佐倉さんからもう声をかけるなと言われたんじゃなかったのか?」と堂本さんが遮る。

はい、堂本さん。あなたは正しいです。私もそう言ったと記憶しております。だけど世の中、忘れっぽい方もいらっしゃいますから、そのような方は存在しないものとして無視してしまいましょう。

と言うわけで、顔を背けて、知らんふりをしていた。

「里菜、リーナ、リナ。」呼ばれたけど、返事をせ

ずにいたら、頭の上で、彼がかすかに笑った気がした。

それから、柔らかな声が降ってきた。

「昨日は悪かったよ。ずっと禁欲していたから我慢できなくて、つい…」

ええ!? 何を言い出すんだ? この男は!

「お前、何言ってんだよ?」と堂本さんもあせりまくる。

隣にいる八重も唖然としたまま、ポカンとしている。

「ない!ない!あり得ないから!違うから!」

慌てて否定して、

あっ、目が合っちゃった。思わず引き込まれてしまう。薄茶な瞳は楽しそうに煌めいている。確信犯だ。

「藤井さん!笑えない冗談は止めてください。迷惑です。」と言いつのると、

「ウソは言ってないよ。」と平然と言い放つ。

「違うでしょ?ぎゅってしただけじゃない。それだけですよね?」

「そんな生々しいこと言ってないけど、」

「ええ?」

思わず隣の八重を見ると、可哀想な子を見るような目で私を見ていた。

く、悔しい……… 形勢が不利だ………立て直さないと………。

「私、お見合いするんです。」

言っちゃった。

「近日中に!」

「だから遊ぶのは止めたんです。」

口が止まらない。

「失礼します。」

あいつの前から逃げ出した。

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