その晩の夢 3
リナ、リナ、リーナちゃん、
私を呼ぶ声が聞こえる。
頬をつつかれてる………
まだ眠たい私の耳の近く、囁かれる。
「土曜出勤なんだ、起きて………」
瞼に口づけられ、ようやく目が開く。
「ごめん、もう時間、」
彼の声。ワイシャツ姿の彼が目に入る。
ネクタイは昨夜と同じで外したままだ。
昨夜……
ぼォッとした頭が、だんだんクリアになる。
昨夜……彼と…
昨日の夜を思いだして、思わず両手で顔を覆う。
「今の顔が見たくて、起こしちゃった。
恥ずかしがってる里菜、可愛い、」
顔を覆った手に、軽くキスを落とされる。
そのまま、手を取られて、起き上がる。
彼の手には、グラスに並々と注がれた水。
貰って、ゴクゴクと飲む。
すごく喉が乾いていた。
どうして分かったの?疑問を口にする前に、
「最後の方、声が掠れていたから、」
と言われた。
ああ、もうッ、なんてことを言うの!?
恥ずかしくてたまらない!!
そんな目で見ないで、反則だよ。
「シャワーを浴びておいで、
悪いけど、急いでね。
ルームサービスで、朝食を注文しておくから、」
と急き立てられて、渡されたバスローブで体を隠しながら、シャワー室へ向かう。
背後で
「今さら隠さなくても」と笑われた。
それはそうかも、なんだけど、恥ずかしくて仕方がない。
シャワー室の鏡にうつった身体のあちこちに赤いアザができているのを見て、昨晩の彼を思い出し、真っ赤になる。
何もかもが恥ずかしい!
開き直って、勢いよくローブを脱ぐ。
思いきりよくドアを開け、低めに温度設定したシャワーで、身体の火照りを沈めた。
シャワーを浴びて、部屋に戻ると、本当に時間がなかった。簡単に化粧をして、朝食をとった後、すぐにホテルから出た。慎さんは、もう一度、
「急かしてごめん。」と謝った後、
「次はゆっくりできるように計画するから」と、
次を口にした。
その晩の夢だった。




