後日談 3
数日経って、
敦子さんから、柿木さんだっけ、から傘を預かったと連絡が入った。
「何時が空いているの?持って行くわ。」
私もあんな相手を紹介してきた敦子さんに文句を言いたかったところだったので、ちょうどよかった。
敦子さんのお気に入りの店員がいる店で待ち合わせる。
表通りに面した洒落たカフェで、昼間はランチを出し、夜はお酒と軽い食事を提供する。
白いシャツに黒エプロンを着けた、その店員さんは、歯切れよく注文を聞き、キビキビ動く、爽やかクンだ。
ここで敦子さんから就職を祝ってもらい、その後も折に触れて利用しているので、彼とは顔見知りだ。
その彼 木崎さんが、注文したカルーアミルクを置きながら言った、
「里菜さん、お見合いはどうでしたか?」
「見合いしたこと、話しましたっけ?」
言った覚えはなかったけど、もしかしたらウカレ気分で言ったのかも……
そんな軽く始まった会話は、
思いもしなかった方向へ。
「敦子さんが先週来られた時、言われてましたよ。
お相手ステキな方なんですってね。」
木崎さんが爆弾を落とした。
目が点になる。
えッ、ステキな方?
話が読めない、、、だけど、、、
もしかして、
「木崎さん、その話、詳しく教えてください。」
手がブルブル震える。
動揺するな、落ち着け!私。
成功するには、熱い心と冷静な判断力だ!
セミナーでの教えを生かせる時がきた!
木崎さんは、ブルブルしている私に気づかず、
「詳しくは知りませんが、妹さんから頼まれたので、最高の男を紹介したと自慢されてましたよ。」
と事も無げに言うと、私の反応をうかがう。
サ、サ、、サイコウノ、オトコ!?
言葉がスムーズに入って来ない。
サンヘーは嘘だったの!?
平均的な男と平穏な日々という謳い文句に釣られてお見合いに行ったのに、
お母さんから頼まれてたって、
そりゃあ、早くおちつけ、孫の顔が見たいと、
口煩く言われてはいたけど、
まさか、共同戦線を張っていたとは思いもよらなかった。
あの姉妹のコンビプレーに引っ掛かるとは、、、
未熟者め!
敦子さんに文句を言う気満々で来たのに、
その気が失せてしまった。
木崎さんには、
「私には勿体ない方だったのでお断りしたの。あの方だったらもっとお似合いな方がいらっしゃると思ったので。」
と答え、続けて、
「こちらからお断りすることになって心苦しく感じてます。敦子さんにも迷惑をかけたし………」
と終いまで言わずにうつ向く。
木崎クンは、
「すぐ次の方を紹介していただけますよ。
姪がその気になったと、敦子さん、喜んでいらっしゃいましたから。」
と更なる爆弾を投下して、去っていった。
あの男があそこまで高飛車だったのも、納得だ。
嫌々だったんだね。断れなかったんだね。
結婚する気満々の適齢期の女から逃げたかったんだね。
相性最悪を印象づけたかったんだ。
私にも、敦子さんにも。
心情は理解できるし、同情もする。
けれども、やり方がやっぱ、許せない。
そう考えながら、敦子さんを待った。
遅れてやって来た 敦子さんに苦情を訴えたのは、
言うまでもない。




