お見合い? 1
体内センサーは警戒せよと鳴りっぱなし。
目の前の男の胡散臭さは半端ない。
「こちら柿木洋介さんはR大学卒業後、三ノ輪グループにお勤めされて6年目、現在経理課の主任をされており、………… 穏やかな性格をされているので、周囲の人望も厚く………… 面倒見が良いので後輩にも慕われていらしゃって、………… ご趣味はドライブだということで先日の連休にも足を伸ばして…………、独身を謳歌され…………28歳になられてそろそろ生涯の伴侶をと考えられた時に、私どものことを思い出してくださって………」
敦子さんの紹介は続いている。
そんな経歴なんかより、
目の前の男から目を離すことができない。
オラオラオーラをビシバシと感じる。
Kホテルの喫茶ルームの個室で行われたお見合いが
とんでもないことになっている。
目の前の男、柿木さんだっけ、
眼鏡の奥の目が怖すぎる。
(こっちを見とけ。)
(わ………わかり……ます……た。)
怖さのあまり、「ますた」になったじゃないッ!
しかも、この会話、アイコンタクトだしッ!
敦子さんは気づかないの?
理由は明らか、、、
この男、私以上に猫を被ってる。
ようやくお互いの紹介が済んで、
時計をチラッと見ると、1時間が経過。
この後を無難に遣り過ごす自信がない。
気づかれないように、ため息をつく。
柿木さんだっけ、がにこやかに、
「車で来たので、里菜さんさえよろしかったら、
ドライブに行きたいと思います。」
と敦子さんに許可を求めていた。
敦子さんは「それはいいわね。」なんて頷いてる。
(行きたくありまでん!)
(アンタがビビらすから「までん」になったじゃない)
私の涙目の訴えは、
(アンタに拒否権はない、頷け!)と、
目の前の男の凄まじい眼力にねじ伏せられた。




