名案
「えっ………里菜、お見合いするの?」
昼休み、会社近くの喫茶店でパスタランチを食べながら見合い話を打ち明けた私に、驚きながら聞き返してきた八重。同期入社の彼女とは研修中に親しくなった。以来、同じ部署に配属されたこともあって、相談したりされたりの仲だ。今の私の恋愛事情に一番詳しい。
「うん。ちょうど良いお話があったから。」
「良い話って、、、藤井さんはどうするの?あれだけモーションかけられてるのに、、、」
「だからだよ。無駄だってことを思い知らせないと!ちょっと迫れば元に戻ると思ってること自体、馬鹿にしてる!」
昨日の出来事を思い出してしまい、怒りが込み上げてきた。思わず両手で拳をつくる。一発殴っとけばよかった。
「ちょっとどころじゃない迫られ方じゃん。それに私たちまだ24だよ。合コンも誘われてるし、結婚なんて早すぎるでしょ?」
「早すぎではないよ。だって私、子だくさんを目指してるもん。五人は子ども欲しいけど、高齢出産は避けたいしさ。」
「馬鹿なこと言って………」八重は呆れたようにハァとため息をついた。
「いい?………里菜、あんたが今しなくちゃいけないことは、藤井さんとよく話し合うことだと思うよ。藤井さんから逃げてばっかりせずに。あんた史上一番いい男だって言ってたじゃん。イケメンだし、背は高いし、出世株だしって。」
「それ、間違ってた。誰にでも調子いいし、口は軽いし、女にだらしないサイテー男だった。今はサンへーなんだって。なんでもほどほどの男の方が穏やかな人生を過ごせるんだって。」と私は得意げに知ったばかりの知識を披露した。
「何それ?そんなこと、誰が言ってたのよ?」
「三平。見合い話を持ってきてくれたおばさん。相手の人、特筆すべき所はない平均男だけど、その分安心できるらしいよ。」と答えると、八重はもう一度ハァ………と深くため息をついた。