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言葉で伝わらなくても。  作者: モロキ
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一昨日の夜

守衛さんに挨拶をして、表口から外に出る。

このまま、寄り道せずに帰ろう。


マンションに戻り、化粧を落としてから、ルームウェアに着替える。

キッチンに行き、冷蔵庫を開け、食材を確かめる。

レタスと玉ねぎがある。

棚にはツナの缶詰があったはず、パスタが作れる。

麺を茹で湯ぎりする。予め熱しておいたフライパンで薄くスライスした玉ねぎを炒め、麺とツナを入れて合わせる。トマトソースで味付けした後、塩と胡椒で調える。plusレタスサラダ。

今夜はお酒は飲まない。

ウーロン茶にする

うん、美味しい。


洗い物まで済ませてから、リビングのソファーに座り、コーヒーを飲む。


今日はメールも電話も来なかった。

まぁ、どうでもいいことだけど。

インターホンのチャイムも鳴らない。


一昨日の夜には鳴った。

誰だろうと、

テレビ画面を確かめると、堂本さんだった 。

私との接点は皆無なのに、何故???となりながらも、マンション入口を解錠した。

部屋に上がってもらうわけにはいかないので、私がエントランスまで下りていくと、申し訳なさそうな顔をした堂本さんと、

あいつがいた。

「悪い、こいつがどうしても話したいと言ってきかなくてさ、」

堂本さんが両手を合わせて、謝る。


やだ、やだやだ。

心拍数がはねあがる。

動揺していることを知られまいと両手を握りしめ、口をぎゅっと結ぶ。それから、言葉を吐き出す。

大丈夫、震えてない。

「堂本さん 、私、二度と話しかけないでほしいと藤井さんにいいました。」


「うん、それは聞いてる。」


「わかってくださってるなら、いいです。

話したいとのことですが、

私は全く話したくありせん。

では、失礼します。おやすみなさい。」

と一気に言って、

心の中で冷静に言えた自分を褒めながら、

向きをかえ、戻ろうとした時だ。


突然、後ろからあいつがぎゅっと抱き締めてきた。

あぁ、懐かしい………彼の香りだ………

ブルガリの爽やかな香りを吸い込む………

一瞬とらわれてしまい、次の一瞬で我にかえる。


あぁ、嫌だ!

気持ちが口から出る。

「嫌!! 放して!!」

なんとかあいつの腕を振りほどこうと、もがく。

覆い被さってくるあいつから、

腕を押し退けようとして必死になっていると、

堂本さんがあいつの腕を掴んで放してくれた。

距離をおきたくて、後退る。

堂本さんがあいつを揺さぶりながら、

「お前、何してんだよ。

佐倉さん、嫌がってんの、分かれよ。」

と声を荒げた。


睨み合った二人の間に緊張感が走る。


先に目を反らしたのは、あいつだった。


「分かってるさ。」

あいつはそう呟くと堂本さんの手を払った。

そして、こちらは見ずに、出ていった。


後を追おうとした堂本さんは、

私を振り返り、頭を下げた。


「ごめん、許してやって。

別れたって知ってたから止めたんだけど、

酔っぱらってしまっててさ、

何言っても、聞かない。

俺が呼び出された時にはもうあんな感じで、

どれだけ飲んでたか、分からないし。

…………

あいつが、心配だし、行くけど、

本当に、申し訳ない。」


堂本さんは繰り返し謝りながら、そう言って、あいつの後を追いかけて行った。


それが一昨日の夜の話。







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