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言葉で伝わらなくても。  作者: モロキ
17/105

定時前

終わった!

急な案件を含め予定していた仕事をすべて終わらせ、ホッと息をついた。

時刻は、定時5分前、この後の予定はない。


机上を片付ながら、

どうしようかな…今日もあんまり早くマンションに帰ると不味いかもと思っていると、

「佐倉さん。」と呼びかけられた。

もう一人の新入社員酒井くんだ。

何の用だろ?

首を傾げると、

「報告書の確認をお願いします。」と言われた。

「あれ、田谷さんは?」

酒井くんの指導は確か田谷さんだ。

「出先から直帰です。今日中に提出しろと課長から言われて、なので、申し訳ありませんがお願いします。」とお願いされた。

「そうですか、じゃあ 、見せてください。」

と報告書を受け取った。

酒井くんは、もう一人の新入社員だ。そして、かなりデキル男なので、報告書も全くミスなんかない。

にも関わらず、「報告・連絡・相談」を厳守する彼の姿勢は好ましいと先輩社員からも評判が良い。

「これでいいですよ。」と報告書を返すと、横で立ったまま待っていた酒井くんはホッとした顔で、

「ありがとうございます。」と頭を下げた。

「いえ、いつでもどうぞ。」と答えると、

「そんなこと言われたら、甘えちゃいそうです。」

と爽やかな笑顔とともに、返された。


か、可愛い……。甘えちゃうなんて言っちゃって。


彼が去った後、


これが昨日橘が言っていた、お局転がしなの!?

いやいや、私、お局じゃないし、でもキュンときたねと一人ツッコミを入れていると、

突然、

「ぼ~としてるな。」と頭を撫でられた。

セ…セクハラ!?

キッと睨んだら、岩瀬さんだった。


「お帰りなさい、プレゼンどうでしたか?」と聞くと

「好感触。他次第だけど、まず大丈夫だろうよ。」

と笑顔。

「よかったですね。」と素直に思う。

「ありがとな。」と言われ、私の頬が緩む。

「ニタニタしてるぞ。奢る約束を思い出したみたいな。」と突っ込まれた。

違うと言いかけた私に

「そういえば、ITの藤井にも世話になったな。久々に組んだけど、やっぱ、あいつ、いいよ。」

何がいいんですか?卑怯な奴ですよと、突っ込みたいところだけど我慢………

えっ、今なんて

「あいつと付き合ってるんだろって、言ったの。礼を言っといて。」と繰り返された。

岩瀬さん、何言ってんの。

「付き合ってなんかない。」

「えッ!?」

「付き合ってなんかいませんよ。………振られました。」

繰り返した。

「そうなのか?………そりゃぁ、悪かったな。」

「謝らなくていいです。」

「あぁ、悪かっ」

「だから、、謝らなくていいです。」

あぁ………涙が出そう

「わかった、わかった。そうむきになるな。」と宥められて、

「はい。」と頷いた。


課長に報告に行く岩瀬さんと別れて、私は思った。

何でだろう、昨日から振られたことをみんなに言って回っている気がする………。

絶対に隠しておきたいのに………。

言いふらさない人たちだからいいけれど………。

頭の中に、いくつもクエスチョンを抱えて、

オフィスを出た。









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