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言葉で伝わらなくても。  作者: モロキ
104/105

深層4

「橘は精神安定剤代わりなんだね?


いずれにせよ、そんな君に惚れて残念がっているということは、……… 橘は了承済み……… か。」


そう呟いた藤井さん……


「君の言い分は分かった。

全く理解はできないけれどね。」


その口調の冷たさに思わず藤井さんを見る。

私に向けられた蔑んだ視線に胸が抉られる。


軽蔑されたと思った。

嫌われたと思った。


そんなの嫌だ。

突然沸き起こった強い感情に全身が絡め取られ、


あぁ……


泣きたくなんてないのに。


泣くまいと我慢していたはずが、

堪えきれずに落ちた涙が頬を濡らす。

泣き顔を見られたくなくて、俯く。


弁解なんてしたくない。


あぁ…… でも……


「もう……

藤井さんに …… 傷つけられたくないんです。」


言葉が口からこぼれ落ちた。



「傷つけられたくない …… ?」

随分と間をおいて、藤井さんが聞き返す。

藤井さんの声が、それまで帯びていた冷たさを失って、自信なげになった。


だから、言いたくなかった。

あの時の言葉を蒸し返すのは絶対にダメなことは分かってたのに、

彼の感じている罪悪感を逆手に取ることになってしまうから 、嫌だった 。


けれど、出てしまった言葉はもう消せない。

せめて、ちゃんと言おう……

声が震えて言葉にならないのを叱咤して続ける。


「前の時、藤井さんは私の傷ついた顔が見たかったって……… 。

そう言われた時の私の気持ち、分かりますか?


心が痛くて……

でも、藤井さんは謝ってくれたし、私も引きずりたくない。だから、あの言葉は忘れないといけないと思っているんです。


ただ、あの時、この人は私を傷つける人なんだなって思いました。それがずっと消えなくて……


私にだって意地があります。

やり方が間違っているのは重々承知しています。

だけど、

被害は最小限に食い止めたいと思ったんです。」


つっかえつっかえだけど、ちゃんと言えた。

俯いていたけど、藤井さんがじっと私を見ていることは分かった。


しばらくして、

「君は俺に、俺が欲しい。自分のものになってくれと言ったんだよ。」

覚えているかと藤井さんに問われた。



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