深層 3
よく分からないけれど、
今の言葉から察するに、
藤井さんは何やら納得したようだ。
だから、
もう良いよね、おいとましても。
もともと出来るだけ速やかに退散しようと思っていたんだし、これ以上喋ると、言わなくてもいいことを喋ってしまって、後悔しそうな気がする……
クシュン、
くしゃみが出た。床暖房が入っているとはいえ、長時間、床に正座はツラい。足の痺れも限界だし、もう無理。
床についた両手に力を入れて立ち上がろうとするも、ふらついてしまい、床にへたりこむ。
藤井さんはその一部始終を見ているだけで、手を貸してくれない。
私がそのままの姿勢で見上げ、
「藤井さんが正座なんてさせるから…… 」と、恨みがましく訴えても、
「正座しろなんて言った覚えはないよ。君が勝手にしたことだよ。」と、素っ気ない。
仕方なく、掌で左右のふくらはぎを懸命に擦って、痺れが治まるように、ひたすら念じる。
何分かしてようやく痺れが取れてきて足を動かして確かめる。うん、大丈夫、動ける。
安堵して、思わず笑みがこぼれる。
「面倒くさいね、君は。」
「えっ?」
「面倒くさいって言ったの。」
「そう… です…か… ?」
「気づいてないの? 君、かなりめんどくさい。」
「は…い…。」しぶしぶ返事をして、藤井さんの次の言葉にぎょっとした。
「告白もどきの時、橘は君のことを何て言ったんだっけ? 教えて?」
やだ、なんでそこを突っ込むの?
藤井さんは、何を考えているの?
真意が読めない私は答えることを拒否した。
「言いたくないです。」
だって、私と橘のことだもん。
藤井さんに言う必要はないと思う。
と言うと格好が良いけれど、
かなり失礼な告白だったから、言えない、
というのが、本当のところ。
でも、藤井さんに、
「面倒くさいは言われただろう?」
と、ピンポイントを攻められ、目が泳ぐ。
「当たり、みたいだね。
それから何て言われたの?」




