お仕置き? の続き
速やかに退散しよう。
そう決めると改めて自分の服装が気になり、シーツを捲り、中を覗く。
よかった!大丈夫。
昨夜のままなのを確認し、一安心する。
どうも上着を脱いでそのままベッドに潜り込んだっぽい。
だから、
上着とバックさえ手に入れば帰ることが出来る……
とにかく、
面倒をかけたことをもう一度心から謝罪し、お世話になったことへの感謝の意を表した上で、礼を尽くして去ろう。
さぁ、ぐずぐずせずに行動に移そう。
音を立てないように、ベッドから床に足を下ろす。
そろりそろり、ドアに近づく。
ところが、
取っ手を握り開けようとしたそのタイミングで、いきなりドアが開く。
「わぁ!!」
ビックリした!!
開けた藤井さんも驚いた様子。
グラスを手にして、眼を見開いて、固まっている。
一瞬の間の後、
「何をしてるの?」
と尋ねた、その表情は憮然としている。
不機嫌さを隠さない藤井さんに、慌てて理由を説明する。
「お水をわざわざ持って来ていただくのは申し訳ないので、そちらに行こうと…… 」
ドアに凭れた藤井さんの冷ややかな目に気づいた私は、最後まで言えず口ごもる。
「君が悪いと感じるのはそこなの?」
しばらく経って、藤井さんが口を開く。
藤井さんの口調に当惑するも、とにかく謝まらなくてはと思って、
「いえ、迎えにきていただいたことも、一晩ここにおいてくださったことも、全部、ご迷惑をかけてしまい申し訳ないことをしたと反省しておりますし、感謝して……
「そんなことはどうでもいい!」
怒りを含んだ声で遮られ、身を縮める。
「そこ、座って。」
と命じられ、俯いて床に正座する。
何か言わなくちゃ……
「あの、……… 藤井さん、
前後不覚になるまで酔っぱらっちゃったことも悪かったと…… 」
尻すぼみになった言葉、
これも違うのだと分かるが、これ以上思いつかない。
黙ったままの藤井さん。
室内に響くエアコンの風音。
そのままで時間が経つ。
怒りの理由を一生懸命考えて、
でも、飲み過ぎたことと藤井さんに迷惑をかけてしまったこと以外に思いつけず、
どう反省すればいいのか分からない私。
言ってくれなきゃ分かんないよ。
足も痺れてきたし、もういいやと立ち上がろうとした時、
ようやく藤井さんが放った言葉は、
「橘を代用するな。」
だった。




